2年前の原稿なので、その後新しい4WDシステムも出ています。
こらもうウンチクなどいらない! 実際、走って速い4WDがいいんだからね。といったことを考えつつスポーツモデルの4WDをチェックしてみると、見事にトルクスプリット&アクティブ制御の4WDばかりなのだった。こう書くと「なんや、その横文字は! 解りやすく説明するのがヒョウロンカの仕事やろう!」と怒られそうだから、懇切丁寧に、手を取り足を取りナメがごとく紹介してみましょうか。
ということで『トルクスプリット』から。日本語だと”異なる前後の駆動力配分を持つ”となる。具体的に言えば、基本的な駆動力を前輪35%。後輪65%といった感じで掛けておくこと。どういったメリットがあるのか? こらもうパワーオンした瞬間の挙動に、決定的な影響を与えるからに他ならない。前後50%対50%でアクセルオンすると、前後輪均等に駆動力が掛かる。するとどうだ。前輪に曲がるチカラが残っていないでしょ?
タイヤの働きを100としよう。駆動のため100を使い切ると曲がるチカラなど残らない。したがって前後均等の駆動力配分を持つ4WDは、真っ直ぐ走るにゃ向くけど、曲がろうとしたらアンダー大王になってしまうワケ。トルクスプリットにして前輪の駆動力配分を低くしておけば、曲がるチカラを残せるという寸法。
極端な例がGT−Rやポルシェ993のターボ。この2車、通常走行じゃほとんど100%の駆動力を後輪だけに与えている。コーナーでもアクセルを踏まない限り、後輪駆動のままだ。だからこそ前輪のコーナリングフォースを100%使い切ることが出来るのだな。FFベースのクルマの場合、前輪の駆動力をゼロにするのは難しいが、それでもインプレッサやレガシィは前輪に35%しか駆動力を与えていない。
『アクティブ制御』はトルクスプリットの前後駆動力配分を、要求に応じて変えてやろうというもの。コーナーでフルパワーを掛けて後輪のグリップ限界を超えた時は、前輪に駆動トルクを送り込んやるとバランスが取れる。横を向いた時、前輪をキッチリと駆動してやれば、モトの姿勢に戻ろうとするでしょ?ただドリフトの角度によって最適な駆動力配分は違う。真横を向いた時なんだと、前輪の駆動力が大きいほどよい。
この制御、GT−RやレガシィのATがコンピューターで。ポルシェはビスカスLSDの働きを使って行う。公道を走るクルマで最も速いWRCカーは、アクティブ制御をさらに進化させ、前後の駆動力配分だけでなく、左右の駆動力までコントロールしている。つまり4輪とも駆動力が異なるのね。このシステムが究極のスポーツカー用4WDなのだ。
セダンとステーションワゴンは共通の車種が多い。いや、正確に表現するなら、ワゴンのベースは全てセダンでしょう。そこでワゴンのベースになるミドルクラス以下のセダンについちゃ、ワゴンのところで分析することにする。ここではワゴンにならないような、マジェスタとかアウディA8のような大型のセダンを取り上げたい。このクラスもスタッドタイヤの使用制限により、4WD化が進むこと間違いないからね。
大型セダンの場合、要求される重要な項目は二つある。一つは大パワーに耐えること。このクラスのセダンになると、最低でも3リッター/200馬力級のエンジンを積む。ラインナップの中にゃ、300馬力に近いエンジンを積むモデルもあろう。となれば、インチキな4WDシステムだとアカン。「普段は2WDで、滑った時だけ4WDに切り替える」というんだと、コントロール性に問題を抱えちゃうワな。
二つ目が静粛性。4WDは重量増を招くし、システムによっちゃ騒音源のデフを3つも使う。FFベースであれば、余分なドライブシャフトも付けなければならぬ。静かになる要因って皆無なのだ。条件悪いなぁ。この二つの問題をキッチリと解決しない限り、大型セダンとしての要求を満たせないということであった。果たして大型セダンの4WDはどうなってるか?
現時点で世界最大の4WDセダンと言えば、アウディA8。全長5034o×全幅1880oというセルシオより二回り大きなボディに『S8』というグレードは4、2リッター340馬力のエンジンを積む。一応、250qでリミッターが作動するけど、実力は280qに達するそうな。0〜100q加速も5、5秒と、BMWのM3とタメ! こらもうセダン4WDの魔王である。
驚くのが車重。わずか1720sしかない。御存知の通りA8はアルミボディ。200sくらい軽く出来た。しかも4WD化による重量増は、センターデフを使う本格的なフルタイム式なのに80s増に収まっている。今や大型セダンといえども燃費。お金持ちだからこそ環境に気を使わなきゃイケナイ時代だと思う。アウディはそこんトコをよ〜く解っており、アルミボディを採用。さらに軽量の4WDを採用したのだった。
解ったかな? 大型セダンの4WDは、方式だけじゃなく車体を含めたパッケージが大切なのである。4WDを作ると考えた時点で、軽量化まで行う。こうじゃないとイケナイ。ちなみにマジェスタ4WDは、A8より二回り小さいボディながら車重1770sと重く、4WD化の重量増も110sに達している。ただ世界的に大型セダンの4WDは、需要が少ないとか。これから伸びる分野ですな。
ワゴンとミドルクラス以下のセダンに要求される4WDは、同じだと思ってよろしい。同じ車種なんだから当たり前だな。最初に考えなくちゃならないのがエンジンパワー。200馬力を超えるエンジンだと、さすがにオン・デマンドタイプ(必要に応じて、という意味。通常は2WDで、滑った時だけ4WDになるシステムを示す)じゃダメ。オン・デマンドのまま馬力を上げると、2WDから4WDに変わる領域のコントロール性が悪くなってしまうためだ。
よってターボを付けたエンジンを搭載してるワゴンなら、スポーツモデルのようなトルクスプリットのアクティブ制御がベストということになる。レガシィGT−Bなどはキチンとこのタイプを使ってるでしょ? レグナムVR−4やステージア260RSもそう。そんなら普通のワゴンにゃ、どんな4WDがいいだろうか。こらもう簡単。安くて軽いオン・デマンド4WDに決まってる。
180馬力くらいまでであれば、2WDも普通に走っている限り駆動力が足りなくなることなど無い。ようするに舗装路での4WDニーズは考えなくていいということ。雪が降った時にキチンと4WDになってくれればいいワケね。といったワケだからして、センターデフを使った本式の4WDなんかいらん。滑った時だけキチンとカバーしてくれるタイプでいいのだ。
現在、オンデマンドタイプは三つのシステムがある。ホンダは油圧ポンプを使う。空転するとポンプが稼働。後輪に駆動力を使えるようになっており、重量増はわずか60sで済む。最も新しいアコードワゴンのスペックを見たら、10・15モード燃費もFFと同じ。良い4WDだね。トヨタと日産の一部で使っているのがビスカスタイプ。残念なことに日産は140sもの重量増なので×。
軽いのがオン・デマンドの特徴。これだけ重いと意味がない。対してトヨタのビスカスはカルディナで**s増。10・15モード燃費も0、*q/リッターのダウンに抑えている。三つ目のオン・デマンドはトヨタのトリブレードタイプで、ビスカスの応用版。100s重いし、性能的にもイマイチ(だから他車種に採用しないんだろう)。いずれにしろ60s増で済んでいるホンダのデュアルポンプ式が世界一優れたワゴン用4WDだと思う。
おっと例外を忘れてた。レガシィやインプレッサの4WDは本格的なフルタイム式でありながら、重量増60s! 重くならないのなら、雪道でもカンペキなフルタイム式が走行安定性が優れているに決まっている。こんなに軽くアクティブ制御のトルクスプリット4WDを作られると、ヨソのメーカーはお手上げ。圧倒的な”良い4駆”のナンバー1だな。
ミニバンはステーションワゴンと同じだと思ってよかろう。只さえ重いのだから、少しでも軽い方が好ましい。じゃ、何でオデッセイとステップワゴン以外のミニバンはセンターデフを使った重いフルタイム式を使っているかとなれば、答えはシンプル。「ちょうどいいサイズのオン・デマンド4WDシステムを持っていない」からである。ホントは好ましくないけど、他に選択の余地がないのだ。
といったことからすれば、ホンダの2車が(S−MXも入れれば3車)が理想的なミニバン用の4WDということになろう。4WD化による動力性能と燃費の損失を限りなく低く抑えており、環境にもやさしい。ジブンで4WDのミニバンを買うのであれば、もうコレッぽっちも迷うことなくホンダから選ぶ。ただホンダのスタンバイ4WD、60キロ以上になると後輪への駆動力をカットしFFになる。
オフロードも走るSUVになると、またまた条件が変わってくる。このジャンルだと”絶対的な駆動力”が必要。当然ながらオン・デマンドなど考えの外だ。CR−Vも雪道は頑張るも、極悪路に入った途端、普通のクルマになっちゃう。よってキホンはセンターデフを使ったフルタイム4WDになる。さらに後輪のデフにLSDを付け、最悪の状況で3輪の駆動力を確保出来ていればベスト。
ここで問題となってくるのが、フルタイム式かパートタイム式か、ということ。考え方としては、フルタイム式が全てクルマ任せで良いAT。パートタイム式は、ドライバーが判断しなければならないマニュアルミッションだと思えばよかろう。ちなみに世界最高の悪路走破性能を持つと言われるランドローバー社のモデルって、センターデフを使うフルタイム式。自衛隊が使う高機動車(メガクルーザーの兄弟車)もフルタイム式だ。
じゃなんで日産はサファリでパートタイム式を使ったのかとなれば、開発予算の関係だと思う。新たにフルタイム式の駆動系を開発するとなれば、大いなる投資が必要。そこに掛ける予算がないため、フルタイム式を諦めたんだな。パートタイム式でも極悪路性能は悪くないけど、やっぱり厳密に性能評価したら、ハンドルを切りつつクリアするようなセクションで無理のある挙動になってしまう。
SUVでキモになるのはリアのLSD。コレが有るのと無いのでは、悪条件下の走破能力で思った以上の違いとなる。気合いの入ったSUVを考えているなら、ぜひともリアLSD付きのモデルを選ぶこと。パジェロ・ミニにもキチンとリアLSDのオプションがあるのだ。フォレスターのように、ターボの全グレードにリアLSDを装備するような気合いが入ったモデルもあります。