マニュアルミッションについちゃ、ヒジョウにシンプルだと思う。4速か5速か6速か、ということだけだな。よってこの点についちゃ最後に説明する。問題はATだ。特にティプトロマチックから始まったボタン&スイッチタイプのATときたら、もはや百花繚乱状態。ポルシェやBMWに採用されている従来型のお化粧直しタイプから、三菱やホンダ式のホンモノまで、イロンナモノが乱れまくってるということだな。さて。国沢光宏はナニを基準にホンモノとニセモノを分けているか?
その前にホンモノたぁどんなものか?こらもう簡単。マニュアルミッションより早いシフトが可能なタイプを示す。マニュアルより遅いんじゃ、スポーティと言えないでしょ? F−1などを見ても明確なように、マニュアルより早く確実にシフト出来るからスイッチ式ATを採用するのであって、遅いなら単なるカッコ。ファッションでしかない。全然効果なさそうなエアロキットを装着するようなモンだ。無意味を承知で楽しむなら異論ないが、そいつをホンキで凄いと思ったらアカン。
ティプトロのドコが問題か? 変速機そのものが従来のATと同じだからである。ATの仕組みついて説明するとエラい騒ぎになるので簡単に行く。ATにもギアがあるのは知っている通り。マニュアルのミッションの場合、1速から2速にシフトする際シンクロ(調速機)という機能を使う。シンクロはギアの回転速度合わせる役目を果たす。だからシンクロがヘタるとギア鳴りがしたり、スムースにシフト出来なくなる。
ATのミッションにはシンクロがない。そんならどうやって回転を合わすのか? 自転車のフリーホイールと同じシステムを使う。1)低いギアの駆動力を抜くと、2)ギアは空回りを始める。3)その状態で高いギアにシフトし、4)回転を上げていくと駆動力が掛かり始めるといった具合。自転車のギアチェンジみたいでしょ?ここでのタイムロス=ATの変速時間の長さになってしまう。いくら変速時間を短縮しようとしても、マニュアルみたくダイレクトにゃならんのだ。
ZFのティプトロ(ポルシェだけでなくBMWやアウディ、VW全てがZF製のユニットを使う)、は旧式のATを使い制御だけスイッチ式にしたもの。したがって普通のATと比べた時の性能的アドバンテージは無いと言い切れる。効果のないリアウィングみたいなもので、気分だけ良くなるというアイテム。このタイプのATを採用してくるメーカーは自慢のようだけど、ワタシはそのたびに疑問に思う。欧州車はもっと正面から攻めて欲しい!
しかも制御が良くない。ティプトロに乗ったヒトなら知ってると思うが、通常のATゲートで2速を選んでオーバーレブさせると、きちんと回転リミッターに当たる。勝手にシフトアップしないのだ。なのにスイッチシフトを選んだ時は、なぜかレッドゾーン手前で3速にシフトアップしてしまう。ワインディングロードを攻めていると「ここはレッドゾーンに掛かっても、次のコーナーを考えたら同じギア」みたいな時が多い。そこで勝手にシフトアップしちゃう。どこがスポーティなんだ?
そんならホンモノのスイッチ式シフトはあるのか? 答えは「ある」だ。もちろんフェラーリみたいな”ほとんどレーシングカー”のATはコッチに置いとく。ありゃF−1と同じコンセプトなんだから。素晴らしいATの代表選手は、意外にも日本製。それもステーションワゴンのATだったりする。どんなタイプのATか? 強烈にシフトアップが早いのだ。ほぼ「瞬時」と表現しても大ゲサでないぞ。調べてみたところ、2速と3速は油圧クラッチで強制的にギアを切り替えるタイプにしているそうな。
それぞれにギアに油圧式のクラッチを装備し、ギアチェンジを一瞬で終了させてしまう。当然マニュアルミッションより早くシフト出来る。残念ながらこのシステム、全てのギアでなく、2速と3速のみに採用されているそうな。実際、2速→3速。3速→2速へのシフトは、マニュアルといい勝負だと思う。ホンダと三菱のATは、全てのギアが油圧クラッチシフト(専門的にはクラッチtoクラッチと呼ぶ)。今のところ変速ショックを抑えるため速さを追求していないが、その気になればマニュアルと同等の速さで変速出来るそうだ。
電制スロットルも強力な武器。アクセルペダルと関係なくスロットルをコントロールするシステムで、これまたF−1で広く使われている。ギアを落とすときの空ぶかし(ヒール&トゥの時に行うアクセルワーク)と同じ役割を果たすワケ。ATに乗っている人なら知ってると思うけど、1速には50qを切らないと落ちない。それ以上の速度だとエンジンブレーキが効きすぎて危ないからだ。でも電制スロットルを付け、アクセルを自動的に開けてやればエンジンブレーキをコントロール出来てしまう。
トヨタのアリストは早くもこの制御を行っており、ゲートで1速を選ぶと60q+αの速度から1速に落ちてくれる。60qで1速まで落ちると、ATが最もニガ手とするヘアピンコーナーの立ち上がりもバッチリだ。残念ながらアリストのAT本体は旧式だけど、電制スロットルとクラッチtoクラッチのATを組み合わせれば、間違いなくマニュアルより速く走れるATになるだろう。きっと日本車が最初に出すんだろなぁ。
ちなみに50q以下でないと1速に落ちない、というAT最大の弱点をカバーしているのが金属ベルトを使うCVT(スクーターみたいな変速機)。マニュアルと遜色ない走りを見せる。今まで困ったことに大出力に対応する技術は無かったけれど、日産が280馬力に対応するエクストロイドCVTを出した。このAT、6速のシーケンシャル変速モードも用意されており、けっこう楽しめる。GT−Rなどと組み合わせたら面白いかも。
といった具合で、ATが速さでマニュアルに勝つには今一歩。マニュアルと勝負になったら、コーナーを曲がる速さで稼ぐこと。そうそう。マニュアルの段数だけど、4速は論外。5速と6速は迷うところだけど、あまり細かくてもかえって変速時間が増えるだけ。0〜400mなども、変速回数は少ないほど有利。6速だとミッション本体まで重く大きくなるし、フィーリングも悪くなるようだ。ワタシとしては5速で十分だと思う。