若いおぢさん達がホントに若かった頃は、駆動方式に対して激しくこだわったモンである。もちろん当時の主流はFR。FFのイメージって「クセがあって乗りにくい」だった。すでに元祖FFスポーティのミニ・クーパーは存在したけど、こいつの速かった時代となると”正真正銘のおぢさん”が若かった頃(参考までに書いておくと若いおぢさんはサーキットの狼世代。正真正銘のおぢさんは45歳以上を示す)。ワタシらだと星野選手の駆るチェリーや、シビックあたりからが速いFFのイメージとなる。
 しかし今や駆動方式にこだわるヒトなど少数派になってもうた。というより、FFの完成度が上がり、意識しないで乗れるようになったのだろう。考えて欲しい。キャデラックなんてFFだけど、おそらくユーザーの大半はどのタイヤが駆動力を伝えてるなんて、てんで気にしていないと思う。FFかFRかを意識するのは、雪道でチェーンを装着する時くらいかもね。また、輸入車を買うユーザーにゃドリフト小僧が少ないから、これまた駆動方式などどうでもいいのかもしれない。



 じゃ「全然関係ないの?」となれば、そんなことはない。いや、正確に言えば「カメのように走るなら気にしなくてもいいけど、元気に走るのであれば非常に大きなモンダイ」なのだ。クルマは限界を超えないで走っている限り、ハンドルを切れば曲がりアクセルを踏むと加速し、ブレーキを掛ければ減速する。でも限界に近づくとハンドルを切っても思った方を向かず、ブレーキを掛けたって止まらなくなっちゃう。このあたりのスピード域になってくると、駆動方式による差が大きくなってくるのだった。そこで今回はFFについてタップリ分析したい!
 FF最大の弱点は「すべての負担が前輪に集中する」ということだ。駆動力だけでなく、ハンドル、ブレーキまで前輪に頼る。「ブレーキは後輪にも掛かるじゃないの!」と思うかもしれないけど、FFの前後荷重配分は停止状態で65%対35%くらい。ブレーキングを掛けるとさらに前輪に荷重が移動するため、実質的なブレーキ依存度は80%対20%くらいになってしまう。したがってFFをスポーティに走らせようとすれば、いかにフロントタイヤの能力を活かしきれるかがテーマになってくる。以下、ウデのランクによるFFの乗りこなし方法を伝授しよう。

<国内A級ライセンスコース>
 とりあえず”オモテワザの限界”まで攻めてみて欲しい。具体的にはどうするか?安全が確認出来るコースを探し(最近全国的に増えたミニサーキットなんかがおすすめだ)、コーナーの通過速度を少しづつ上げていく。最初に発生する現象は「キー」というタイヤのスキール音。これが限界に達する前の事前通知となる。しかし高性能車の場合、すでに相当のスピード。プジョーなんかは公道でスキール音を出すことさえ難しいほどだ。このレベルに達していないヒトは、ハンドルを切れば曲がっている状態。ハンドリングなど語らないように。
 スキール音が出てもさらにスピードを上げていくと、徐々にハンドルを切っても曲がらなくなっていく。いわゆるアンダーステアというヤツだな。アンダーステアはどんなクルマでも(インチキに足回りをチューニングしたようなクルマは除く)、必ず出る現象。これでドライバーに限界を知らせるようになっているワケ。軽いアンダーになった時点でアクセルをパーシャル(踏まず戻さず一定速を保つ)にすれば、その速度がオモテワザの限界だ。

<国際C級ライセンスコース>
 次に進む。タイヤのグリップ性能を100としよう。全部加速のために使うと(ホイールスピンしている状態)、当たり前ながら曲がることは出来ない。反対に全部コーナリングのために使って限界走行をしている時は、アクセルを踏むと加速する分だけグリップ力を奪われるのでコーナリング速度が落ちてしまう。上で説明したオモテワザの限界走行中だと、アクセルを開けただけでアンダーになる。しかぁし、だ。荷重移動することにより、前輪のグリップ力を100以上に持っていけるのだった。いわゆる”ウラワザ”ざんす。
 どうやるか? ポイントになるのはブレーキだ。ブレーキを掛けると前輪に荷重が移動する。犬でも急停止しようとすると前足で踏ん張るでしょ? あれと同じ。前輪に荷重が掛かるとタイヤは地面に押しつけられるため、より高いグリップ力を生み出してくれるのだ。対して荷重の抜けた後輪はグリップ力が低くなってしまう。これをコーナリング中に行うと? 前輪はより強いグリップ力を得られるため内側に入り込み、後輪は横方向のグリップ力を失い横に流れるという寸法。実際に行うと、イッキにクルマの姿勢が変わる。この挙動を『タックイン』と呼ぶ。

 どうやって練習したらいいか教えよう。オモテワザの限界でコーナリングしている最中、アクセルを急に戻して欲しい。すると”可愛いタックイン”が発生するだろう。アクセルを戻す程度なら後輪は横に流れないから、誰にでも試せる。するとアンダーが魔法のよう消えてしまいタマげるに違いない。感覚をつかめたら、今度はアクセルオフと同時にブレーキも掛けてみよう。あまり強く踏むとカンペキにテールスライドするから、ホンの少しでいいぞ。
「よし! 見切った」と思ったなら、コーナーの進入でタックインを使ってみよう。少し速めの速度でコーナーに進入し、ブレーキを踏んで前輪に荷重を掛けながらハンドルを切る。するとノーズはインを向きリアは横に流れるので、気持ちカウンターステアを当ててやればよい。クルマが向きを変えたら、後は加速のためアクセルを踏んでいく。ここで踏みすぎるとアンダーになるので注意。あくまで前輪には100のグリップ力しかないことを忘れずに。

<国際B級ライセンスコース>
 最終段階となるのはサーキットでなくラリーで使うようなテクニック。いくつか紹介しよう。一つ目は、ミニ・クーパーでモンテカルロラリーを暴れまくったパディホップカークやサロネンが得意としたワザだ。今もWRCで必ず見られ、専門的には『フェイント』と呼ぶ。コーナーの進入で一度曲がる反対側にハンドルを切る。すると車体はバランスを崩すので、そいつの揺り返しを利用して激しいタックインを発生させるというもの。速い速度でやると真横になってしまいコントロールを失うため、70q以下で使うとよろしい。
 二つ目はサイドブレーキを使いながらコーナリングするテクニック。FF車じゃない場合、サイドブレーキを掛けるとアクセルを踏めない。いや、正確に言えばサイドブレーキを引いてもアクセルを踏めば意味がないのだ。FFならコーナリング中にサイドブレーキを引くと後輪を横に流すことが出来るので、アンダーステアを消せる。サイトコーナーやダート、雪道で使うと面白いようにテールは流れるし、アクセルを踏んでいればスピンもしないで済む。
 ザッとFFのテクニックを紹介してみた。全てマスターすれば、もう怖いモン無し! どんなFF車でもフルに性能を引き出せるだろう。プジョー106やアルファ145あたりなら、そこらのスポーツカーを軽くブッちぎれるくらいだ。今回撮影に使ったミニ・クーパーでもFFのテクニックは有効。いや、FFのテクニックはミニ・クーパーが確立したのである。限界こそ低いものの、楽しさときたらFRスポーツに匹敵するほど。ぜひともマスターして欲しい。ただしミニ・クーパーはサスペンションストロークとホイールベースが短いため、非常にシャープ。ウデに自信があるドライバーでも、国際C級コースくらいにして置くように。