ファミレスなんかで深夜盛り上がるクルマ談義の中でも、けっこう大きなテーマとなるのが「FR車をどう評価するか?」だと思う。この場合、走り好きのヒトほどFR車を高く評価し、若いモンは「FR車なんて過去の遺物でないの?」と反論する傾向にあるようだ。果たして走りを考えた時、FR車って凄いの? 凄くないの? 最後まで読めば、バッチリ解るようにしてみたいぞ。次回、クルマ談義になったら、ここで得た情報で敵にトドメを刺すように!
まずFR車のブツリ的な評価だが、ヒジョ〜に残念なことに「アキマヘンなぁ」である。なぜか? スーパーカー消しゴムを用意して欲しい(普通の消しゴムでもいいけど……)。エンピツの先で後ろから押すと、真っ直ぐ進ませるのに苦労するハズ。対してボンネットあたりにツキ刺して前に押してやれば、簡単に直進するな。サンタのソリも前から引っ張るから安定しているのであって、後ろからトナカイにグイグイ押されようなモンなら、コドモにプレゼントを配る前に雪道でコースアウトするだろう。
そんなら何でFR車が多かったのか?理由は非常に簡単。ムカシの技術だとFF車を作れなかったからだ。イチバン苦労するのはジョイントである。駆動力を伝えつつ、ハンドルを切らないとイケナイ。今でこそ駆動軸にボールジョイントを装着してたやすく解決してるけど、30年くらい前まで大変な技術だったそうな。加えてエンジン振動がモロにハンドルに伝わる、前輪を回すのに太いウデを必要とする、前輪だけムチャクチャ早く磨り減る、といった弱点を克服出来なかったワケ。
また、FRならではのメリットも見逃せない。サンタのソリを引くトナカイくらいのパワーであればFF優秀理論は完全なモノとなるが、トナカイのエサである草よりはるかに巨大なエネルギー量を持つガソリンを使うエンジンは、めっちゃパワフル。チューニングした2000tエンジンともなれば、300トナカイ(馬の力と北欧の巨大なトナカイだとチカラはイーブンだろう)くらい発生する。すると前で引っ張れば完全にホイールスピン状態。ハンドルを切っても曲がらなくなってしまう。
実際問題としてシビッククラスのボディに500馬力のエンジンを積んだとしたなら、現在の技術をフルに使ったとしてもFFよりFRの方がはるかに乗りやすいクルマに仕上がるだろう。ここまで読めば、カンの鋭い読者だと「なるほど、そうなのね!」と解るかもしれない。つまり絶対的なパワーによってFFが有利か、FR有利かが決まってくるのだ。大パワーだとFR有利。小パワーはFF有利となるのだな。そして今の技術レベルだと、ボーダーラインは一般車で車重1トンあたり160馬力。レーシングカーが1トンあたり300馬力程度だと言われる。
このレベルを超えると、FF車はホイールスピンにより十分な駆動力を伝えることが出来なくなり、下回るとFR車の価値が薄れていく。よって最新モデルについて言えば、ボーダーラインを超えるFR車だけが”正しい”存在だと思う。それ以下のパワーしか持たないFR車はパワーオンでの気持ちいいスライドも仕掛けられず(タイヤ性能が上がったのだ)、単にノスタルジーや趣味性しか残らない。FF優位論を展開してくるワカモノに、味や懐かしさだけで勝負しようとすれば簡単に論破されてしまうだろう。
以上は物理的なハナシ。あくまで机上の理論だと思って欲しい。次にドラテクのハナシに入る。ボーダーラインまでは、FR車もFF車と同じような走り方でOK。基本的に最初はアンダーステアが出るようになっているので、曲がらなくなってきたなぁと思ったらアクセルを戻せばよろしい。M3みたいにパワフルなFR車でも、アクセルを開けなけりゃ大丈夫だ。ところがボーダーラインを超えた途端、FR車は突然キバをムク。しかも困ったことにキバをムイてからのパワーを使いこなさない限り、ボーダーラインを超えた分の性能を使えないとくる。
M3で言えば、テールを滑らさない程度のアクセル開度だと、ボーダーラインを超えている分の53馬力分を使い切れていないのだ。さてさてFR車のキバとは一体どんなモノか? イチバン解りやすいのが、パワーによってテールがスライドするという現象。これを微妙なアクセル操作と、ステアリング操作で最良の性能を発揮するようにコントロールしてやらねばならない(ローリング族が好む大きめのドリフトならコントロールは簡単だが、速くない。しかもリアに滑りやすいタイヤを履くのだ。単なる遊びだと思えばよかろう)。
もう一つFR車には困った問題がある。道路はいつも乾燥しているとは限らないのだった。雨が降って路面の摩擦係数が半分になれば、ボーダーラインは1トンあたり80馬力に下がり、摩擦係数が0、1にもなるアイスバーンだと1トン当たり16馬力でFR車ならではのドラテクを覚えなければならない。ま、雪道はそれなりに覚悟して運転するからいいだろうけど、雨が怖いざんす。1、5トンで120馬力くらいのFR車でも(ベンツやBMWの小排気量車まで含まれる)、突如キバをムイてくるんだもの。
FR車を乗りこなそうとするなら、どうしたらいいだろうか? すぐに実行出来るのは「アクセルを踏まないこと」だ。M3みたいにFR車のボーダーラインを超えているクルマなら、乾燥路でもコーナーは全開にしちゃダメ。怖いモノ見たさで試すなら、見通しがいい登りの2速タイトコーナーだけにしておくこと。ボーダーラインよりパワーの無いクルマであれば、乾燥路面なら思い切りイッて大丈夫。雨が降ったら、タマ抜きのなったみたいに大人しくなればよかろう。それに新しい車種ならFR車にもトラクションコントロール装置が付いている。こいつをオンにしておけば、常時タマ抜きの走りになるので便利だ。雨が降ったときだけタマ抜きにするのが正しいFR車の乗り方かもしれない。
「オレはタマ抜きの走りなんか絶対イヤだ!」と思うヒトは、気軽にスポーツ走行させてくれるミニサーキットでいいから練習しに行くといい。キバをムイた時の挙動を何回も体験し、ソイツをコントロールしてやる。1ラップをグリップ走行で走ったタイムより、アクセルを開けて攻めた時の方が速ければ免許皆伝。ここのレベルに達した時、初めてFR論を語れるのだぞ!
今回はRR車とミッドシップ車のハナシをしなかったが、基本的な理論からするとFR車の近い。次号で分析してみましょうね。