熱心な『サーキットの狼教』の信者だからして、根っからのミッドシップファンである。憧れのクルマはロータスヨーロッパだったし、高校生の時にゃ「ペケワンナインや1、7の914でいいから買ってやる!」(ちなみにX1/9の正式名称はエックス・ワン・パー・ナイン)と思ってた。人気マンガの『イニシャルD』を書いているしげの秀一氏も同好の士ざます。バリバリ伝説がヒットすると同時にヨーロッパを探しまくり、見つからなかったので新車のエスプリターボを買ったほど。かくいうワタシもミッドシップ欲しい病が吹き荒れ、914−6、NSX、ビート、フェラーリ328と、4台もゲットしてもうた。
なぜミッドシップがいいか? サーキットの狼教の教えによれば「FRやRRなんぞと比べ圧倒的にコーナーで速い」となっているからである。直線で遅く、コーナーで抜き返す。これがサーキットの狼教の基本理念なのだ。しかぁし! 実際ミッドシップに乗ってみると、期待を裏切られることばかりであった。なかでもイチバン「どうしてなんだよう?」だったのは、アンダーステアがキツいということ。ワタシの経験からすると、どんなミッドシップカーも、市販状態では限界時に強めのアンダーステアとなっている。
具体的に説明しよう。コーナーに進入し、ハンドルを切ったと思って欲しい。スピードが遅ければ、ごく普通に曲がるのは先月号まででも説明したとおり。”性格”の差が出る限界に近づくと、必ずアンダーステアになってしまう。しかもアクセルを戻して前輪に荷重を移してやっても、ブレーキを多少踏んで強めのタックインを仕掛けても消えない。スピードを落とさない限り、ひたすらアンダーステアが出てしまう。サーキットの狼のロータスやフェラーリを見ると、そういった挙動などカゲもカタチもないにぃ……。
なぜアンダーなのか? 答えは非常に簡単。オーバーステアに仕立ててしまうと、みんなコーナーで内側のカベやガードレールに張り付いてしまうからである。ミッドシップと聞くと、たいてのヒトは前後の重量配分が前後50%対50%だと思っている様子。こらトンデモない誤解だったりする。一般的に横置きエンジンのミッドシップで35%対65%前後。ホンキで作った縦置きエンジンタイプでさえ40%対60%に近づけるのは難しい。思ったよりリアヘビーなのだ。
リアヘビーのクルマでリアを流れるようにしてしまうとどうなるか? もはや答えるまでもない。コマだな。カウンターを当てたとしても、リアのスライド量が少ないウチに修正しないとアカン! ハッキリ「滑った」と思った時点では、もう慣性がついてしまい、修正など不可能。たいていはカウンターステアさえ前に合わず、コーナーの内側に向かって突進することになるだろう。市販車でこんなクラッシュをするとモンダイとなるため、リアを出さないようにアンダーにセッティングしてあるのだった。
しかも、だ。クルマというのはスピードが出るほどオーバー傾向になってくる。100qのコーナーでニュートラルのセッティングにすると、それ以上でオーバー。以下はアンダーということ。普通の日本製スポーティカーだと60q〜130qくらいでニュートラルになるようセッティングし、しかもニュートラルの速度域が広いほど高い評価を受ける。ミッドシップカーの場合、200q出すヤツも居るだろうから、この速度域でもアンダー傾向にしておかないとダメ。すなわち、低い速度ほどクソが付くアンダーステアになるのだ。
こう書くと「レーシングカーはどうなんじゃい!」と思うヒトもいるに違いない。確かにレーシングカーはミッドシップカーが最も有利。理由は二つある。まずトラクションの問題。レーシングカーは軽くできているため、駆動力を稼ぐには少しでも駆動輪に重量を掛けたいところ。といったことからすれば、ミッドシップが最良のバランスであること明白。同じくブレーキバランスも、ミッドシップがベスト。RRという手もあるけど、今度はリアヘビー過ぎてコーナリング速度が落ちてしまう。
二つ目はセッティング。レースやラリーなら走るコースのコーナーに合わせ最適なセッティングが可能。アンダーオーバーだけでなく、ウイング類でリアのダウンフォースを強く(高速になるほどリアの接地力が高まる)することだって出来る。ル・マンのGTIクラスも、ボディ全体でダウンフォースを発生し、高速域で車体を路面に押しつけるだけでなく、やはり前後のウィング類でバランスを取っている。こんなこと、市販車じゃマネ出来ないでしょ?
ミッドシップカーが早いのは、極限まで性能を引き出したときだけだと思って欲しい。
そんなら市販車を買ったヒトはどうしたらいいか。これまた二つのチョイスがある。一つは「ノーマルで早く走るテクを身につける」というもの。ミッドシップの武器であるブレーキと加速力を活かす作戦だ。すなわちブレーキングポイントは遅らせ、十分にスピードが落ちたところでハンドルを切り込む。この時の回頭性はさすがにミッドシップで、鮮烈にシャープ。そして向きが変わったら、間髪入れずにアクセルを踏み込む! NSXやフェラーリF355などは、このテクニックさえマスターすれば(アンダーを出さない限界を見極めるのが難しいけど)、鬼に金棒といってよろしい。
二つ目は「セッティングを変える」というモノ。といっても割に簡単だ。アライメントテスターのあるショップに行き、標準設定よりリアのトーインを少し減らし、フロントに標準より強めのネガティブキャンバーを付けてやる。これでイッキにアンダーは減ってくれるだろう。ワタシはNSXも328もアライメントをいじったけど、ワインディングロードでのアンダーステアが劇的に軽くなった。ただ高速域でオーバーになりやすくなるため、あまりトバさないこと。