一昔前までは「クルマを買ったらマフラーを交換する」というのが大いに流行った。かういうワタシもマフラー交換したクルマは5台や6台に留まらぬ。しかぁし! 今やこういったチューニングメニューを実行するヒトは少数派になってしまっている(特に輸入車オーナー)。結論を出す前にいろんなことを考えてみたい。
 マフラー交換をしたくなる最大の要因は、パワーアップが期待できたことだろう。できた、と過去形になったのは、もはやパワーアップなど不可能に近いからに他ならない。さて、マフラー交換というメニュー。モトを辿ればミニとかビートルあたりだったように思う。御存知の通りこの2車、非常にショボイエンジンを積んでいた。機会があったら見て欲しいけど、ビートルのインテークマニホールド(キャブからエンジンに吸入した空気を送る管)なんて水道のホースより細い!



 現代の1、6リッター高性能エンジンの4分の1くらいだろうか? ミニも同じで、660tの軽自動車より細い。エンジンパワーって、吸える空気(燃焼に必要な”酸素”と同じ意味)の量で決まる。ショボイ管で空気を送っておけば、パワーも出せず耐久性が確保出来たのだな。でもクルマ好きはあのパワーじゃ辛抱タマランかった。だって1リッターキャブ時代のミニなんて、ノンターボの軽自動車より遅かったんだぞ! ビールトの遅さについちゃ、説明するまでもないでしょ。
 そこでクルマ好き達はチューニングのセオリー通り大口径キャブを付ける。空気ばかり吸い込んでも出す方がショボければ仕方ないので、当然のごとくエキゾーストマニホールド(エンジンから出ているブブン)と、それに続く排気管(マフラーと考えてよい)まで交換。コレでいっちょ上がり! バリバリ速いミニやビートルの完成だ。ということで、マフラー交換の基本はパワーを出すためであって、吸気系と合わせて交換しないとアカン。

 このコンセプトの延長線にあるのが、排気ガス対策車のマフラー交換だ。75年式から厳しくなった排気ガス対策のため、大半の輸入車はエンジンパワーをガックリと失うハメに。当時のポルシェ911など、どうしてこんなヒドいクルマになったのかと思えるくらい厳しかった。加えて日本の規制を通すため、相当無理をしたのだろう。高速巡航すると触媒が真っ赤になったり(草の上に止めるな、などの注意書きがあるのはその名残)、耐久性も低い。正規ディーラー車でさえ2〜3万q走れば触媒の効力を失うモデルがゴロゴロあった。
 となればマフラー交換しかないでしょう! ムカシのエンジンは触媒を取り外しても不調をきたすことがなかったため、走りを重視するヒトだと90%くらい”外し”を実行したと思う。並行輸入車などは、触媒を外すだけでカッキンとエンジン回る本国仕様と同じになるんだから。ワタシが買った88年式のベンツW124(新車で買ったヤナセモノ)も高速巡航すると触媒過熱の赤警告灯が必ず点いた。何度触媒外したろかい、だったなぁ。ジャーナリストの理性で耐えたが。

 参考までに書いておくと、最新のクルマの場合、触媒取っても意味ない。皆さんムカシのイメージを持っているのか、触媒って大きな排気抵抗になってると考えてるんじゃなかろうか。そら100%間違いです。現在使われているモノリス触媒など、向こう側がそのまま見えるハニカム形状で、タバコのケムリを吹き付けるとそのまんまスムースに出てくる。ツーリングカーレースやラリー(WRCのカローラやインプレッサ、フォードといったWRカーには触媒が付いてる)でさえ触媒が使われているほど。
 ほんじゃ最近のクルマはマフラー変えても速くならないか? 答えは簡単。ならないと思って良いでしょう! ここ4〜5年というもの、メーカー純正のマフラーのデキが凄く良くなっているからだ。例えばシビックに、1、6リッターから185馬力を引き出すタイプRというスペシャルバージョンがある。このクルマ用のマフラーを様々なメーカーが作ろうとしたけど、相当難しい模様。フェラーリF355用のマフラーなども同じコトが言える。純正に勝てないワケね。

 メーカーはエンジンに合わせた排気系をコンピューターで専用設計する。ホンダのVTECやBMWのバノスなど吸排気系の可変システムなどが採用されていると、それに合わせた微妙なチューンが必要。その上で、実用回転域から高回転域まで理論上最高のパワーを出すための形状や、容量にされる。しかもスポーティモデルだと、マフラーを作る下請けメーカーだって真剣。空気の流れを乱さないよう、丁寧に作られるのだ。
 マフラー屋サンも、高回転域だけパワーアップするような製品であれば作れる。実際、シャシダイナモ計測で高回転域のパワーが上がったマフラーだって珍しくない。でも低回転域でのトルクを失ったり、4千回転くらいでトルクの谷が出来たりと、サーキット走ったら遅くなるばかり。ノーマルエンジン+マフラー交換だけでサーキット速くなるケースなど皆無に近いだろう。ということでパワーアップを狙うことと、触媒を外すことはムダだということを認識して欲しい。

 となるとマフラー交換は意味無いか?そうでもないと思っている。そいつぁ音だ。新型車の大半が世界で最も厳しいと言われるヨーロッパの騒音規制をクリアするべく、やたら静かになってきた。フェラーリでさえ”ささやくような音”になったくらい。ワタシの持っている89年式日本仕様は、世界でイチバン音量の大きな328GTSと言われているが「ホントに純正マフラーなの?」くらい素晴らしい音を出す。アクセルを開けた時はもちろん、アクセルオフで「バラバラバラバラ」というチューニングカーみたい度。
 新しいスポーティモデルに乗ると、毎度のように「も少しキモチいい音がしたらなぁ」と思う。F355にしてもM3にしても996にしても、エンジンいいけど、気合い入らん! スペシャルマフラー付けたアイディング仕様のM3に乗った時は「M3のエンジンって、こんなエエんかぁ〜!」だった。ちょっと古いアストラとかゴルフなどもマフラー変えるとビックリするくらい楽しくなる。

 ということでマフラー交換はドレスアップと同じようなファッションだと思えばよろしい。キモチ良い音を出すジブンの好きなブランドを装着し、楽しむように。やや飽きてきた愛車のマフラーなど交換すると、またまた長続きするようになります。マフラー穴開いたらごっついヤツに交換か? 例外が280馬力規制が掛かった日本車のターボモデル。マフラー含む排気系とコンピューターの交換でビックリするほどパワーアップする。