RRというレイアウト、物理的に考えると大いに問題がある。焼き鳥の串と粘土を思い浮かべてもらいたい。串は車体。そして粘土を重いエンジンとしよう。粘土を串の前の方に刺し、投げたらどうか。粘土を前にして飛ぶこと明白だな。これがFRやFFの基本特性。じゃ粘土を中央部に刺して投げたらどうか? 今度は落ち着かないまま飛ぶ。これミッドシップね。そして後ろに刺したのがRRで、当然ながら後ろを前にして飛ぶ。つまりFRやFFと比べるとキホンテキな安定性に欠けるのであった。
具体的にゃどういったな状況でこの特性が出るかとなれば、非常に簡単。スピンした時だ。例えば高速でハイドロプレーニングに陥ったとしよう。FFやFRならアクセルを少し戻してガマンすればモトの姿勢に復帰。「おおっっ! アブナなったなぁ!」で済むワケ。ミッドシップで同じ状況になったなら、絶妙なテクニックを必要とする。ヘタするとスピンで、クルクルクルとコマのように回りつつカベにドン!RRだと間違いなく後ろを向き、コントロールを全く受け付けないままドン!となってしまう。
実際、911の前身モデルである356がデビューした時も、クルクルクルのド〜ンが続出。この特性、ビートル時代は超トロかったこともあって問題にならなかったけど、100マイル=160qも出る356になると無視出来なくなってくる。そして911。こいつは356より一段と高性能になっただけでなく、より重い6気筒エンジンを積む。かくしてテスト段階で事故続出。とうとう対応出来ず、市販車はオモリをフロントバンパーに埋め込み、前輪に荷重を掛けた。こら有名なハナシでしょ。
しかも年々パワーアップしてくるエンジンに対し、ポルシェのテストドライバーは911カレラまで極力テールを流さないような穏やかなアンダーステアがベストとしてきた。後輪より前輪の限界を低くすれば、少なくともスピンしてクラッシュする心配は無くなる。ただそれだと単に限界の低いクルマとなってしまい、スポーツーカーの面目まる潰れざんす。対応策にポルシェはタイヤに凝る。当時はレーシングカーでも珍しかった50扁平のピレリP7も、ポルシェのリクエストによって世に出たのだ。ちなみにP7は限界が高いだけでなく、限界を超えた時の挙動もマイルド。
カレラ2になると911カレラ時代と逆で早めにテールスライドさせ、コントロール性を高めるという手法を取る。もはやアンダーステアにするだけではパワーを活かせなくなったのだ。楽しくないし。早めにテールスライドさせることでドライバーに警告を与えようとしたワケ。しかもスライドした時のコントロール性を向上。少しウデを磨けば、リカバリー出来るようにした。その代償としてやたらドリフトしやすいクルマになってしまい、パワーアップした割にはサーキットのラップタイムも縮まらない。
993はどうか? カレラ2と同じくテールスライドを許すセッティングなんだけど、限界を大幅に高めてきた。簡単にアンダーやオーバーステアにならず、かといって限界を超えるとイッキにリアが流れるというRRの弱点も抑えているのだからたいしたもの。コーナー手前でタックインをカマせばテールはスライドするも、流れる量は適度。しかもハーフスロットルを入れればリアの流れはピタッと止まる。あとは285馬力にモノを言わせ全開! コーナー出口に向かって1370sの軽いボディをイッキに加速させればよい、というRRの理想的なドライビングが可能になったのだ。
RRの理想的ドライビングとは何だろう? もう一度物理のおハナシ。まず加速時。加速する時はクルマの荷重が後輪に掛かる。FFだと駆動輪である前輪から荷重は抜け、たやすくホイールスピンだ。FRになると後輪荷重が増えるものの、それだって前輪40%対後輪60%くらい。ミッドシップなら25%対75%程度になるため、フルにパワーを活かせるという寸法。でもRRは一段と良く、15%対85%程度にまで達する。ムカシのショボいタイヤだと、決定的にRRが有利だったのだな。
ブレーキングも同じこと。これまた前輪に荷重が移動。FFだと前輪80%の後輪20%といった荷重となり、後輪の性能をフルに発揮出来ない。ミッドシップはもちろん、この点でもRRがイチバン有利なのだ。加速と減速だけに関して言えば、RRの天下なんですな。がーっと加速してぐがっというブレーキングの繰り返しなら、RRしかないと思う。後はいかに曲がる時の安定性を確保するか。ちなみにポルシェもレースの世界じゃRRが通用しないことを知っている。だって356以後の純レーシングカーは、全てミッドシップなんだもの。
そろそろまとめよう。911を速く走らせるには、キチンとした加速と減速が出来ればいい。クリッピングポイントでアクセル全開し、コントロールを失わないギリギリの速度までキチンとブレーキングしてやれば、それだけ十分に速いのだ。その際、タイヤの変更はイノチ取り。ノーマルのサイズとポルシェ御指名のタイヤでのみ性能は発揮出来る。速く走ろうとして高性能タイヤを履いたりするのは、カベとお友達になる早道。低性能タイヤもアカンですぞ。
イチバン危険なのはウエット路面だと思う。ワタシ自身も谷田部のテストコースでバンクのガードレールに張り付いた経験を持つ。見開き用にメーター読み240qの写真を撮りたい、とある編集部に頼まれ、雨天イヤイヤながらチャレンジしていたら突如スピンモードに。必死でコントロールしようとしたが、30度ほど横を向いた時点で一切の操作を受け付けなくなってしまったのね。あああああぁぁ悲しい。かくしてバック状態のまま180qくらいでガードレールにドン。エンジンが横にズレ、ほとんど全損してしまった。こんなこと、公道でやったらイノチまで無い。いくら挑発されても、ウェットの時だけは相手にならないようにしましょう。