ターボというとジドウシャが元祖だと思ってる若いヒトも多いんじゃなかろうか。確かにターボはジドウシャに採用されてからイッキに知名度を高めた。でも基本技術を確立したのは、ABSや直噴エンジン、その他全ての高度な技術と同様、飛行機なのである。なんで飛行機なのか? 飛行機は空気の薄い空を飛ぶ。当然、エンジンが吸い込む空気も薄くなるので、酸素量まで減るワな。高い山に登ったニンゲンが酸欠になるとの同じこと。爆発エネルギーは、ガソリンをいかに多く燃やすかで決まる。薄い空気だと酸素量も減るのでパワーを出せない。
そこで考え出されたのが過給システム。始めは簡単な構造のコンプレッサーで空気を圧縮し、エンジンに送り込むシステムだった。いわゆるスーパーチャージャーというヤツね。これだとエンジンにコンプレッサーを装着するだけで実現できるし、技術的にも難しくない。しかぁし! 5000mくらいまでなら十分な性能を発揮したけど、それ以上になると過給能力が足りなくなってくる。かといって高空でピッタシの能力を出す大容量のコンプレッサーを装着しようものなら、今度は低い高度の時に過給能力過大になり、パワーロスが出てしまう。
こらアカンということで登場してくるのが2段式の過給器。低高度はコンプレッサーを低回転使い、不足してくると2段目のギアに入れ高回転で稼働させるという方式。第2次世界大戦中に使われた日本の戦闘機は、ほとんどが2段式の過給器だった。高度7000mくらいまでの使用なら、2段式で足りたと思う。が、敵は高射砲の射程高度10000mを越える高さを飛ぶ爆撃機を開発してくるのである。そいつがB29だ。搭載されているエンジンは、当時『排気タービン』と呼ばれたターボを装着。コンプレッサーよりはるかに大量の空気を圧縮出来た。
コンプレッサーの場合、システムはピストン式のエンジンと同じ(構造は全然違うが)。空気を吸い込み圧縮して吐き出すという行程を経る。エンジンの回転数に限度があるのと同じく、絶対的な能力は限られてしまう。一方、ターボはジェットエンジンと同じ理論。タービンの回転数さえ上げれば、いくらでも能力を上げられるのだ。技術的なネックは排気ガスでタービンを駆動させるため高熱にさらされ、その上で超高回転に耐える素材を開発しなければならない点。残念ながら日本は素材技術や材料不足のため、ついに敗戦まで壊れないタービンを作ることが出来なかった。
その後、しばらくターボ技術は忘れ去られる。航空機用エンジンがレシプロからジェットになり、ターボを必要としなくなったからだ(正確に表現するならジェットエンジンはターボ理論をそのまま発展させたもの)。おそらく激しく高価で取扱いの難しいタービンを使いこなせなかったのだろう。ところが19**年、BMWが2002ターボを発表! 航空機技術を引き継ぐKKK社がジドウシャに使える超小型タービンの開発に成功。同じく飛行機屋サンのBMWも「よっしゃ! 使ったろかい」とばかり採用したに違いない。
ベンベターボ見てギョウカイ中が震え上がりましたね! 凄いの何のって!2リッターエンジンにも関わらず、3リッター以上の高性能エンジン車をカンペキ相手にしない実力を持っていた。さらにポルシェも911にターボ仕様を加え、これまた愕然とする性能を発揮。ターボ時代の幕を開けることとなる。今になって思えば、困ったことにターボ技術が中途半端だったのだろう。1〜2万qでタービンはぶっ壊れ、交換するとなると50万円コース。アクセルレスポンスも悪く、とうてい普通のクルマに普及するとは思えなかったけれど……。
第2世代のターボを生み出したのが、そろそろイケイケ状態になりつつあった日本勢。許認可権を振りかざす運輸省の説得に成功した日産は、量産車であるセドリックにターボエンジンを搭載した。おそらく日本の技術屋サンは、誰もがターボをやりたくって辛抱タマラン状態だったと思う。考えて欲しい。日産のエンジン技術を引っ張っていたのは、元中島飛行機のメンバー。第2時世界大戦時、世界トップクラスのエンジンと称された『誉』の設計者である中川氏まで居た。戦争中から「なんとしても使いたい!」とターボに憧れていたハズ。
ここからの歴史についちゃ説明するまでも無かろう。ターボの耐久性向上とコストダウンに成功。となりゃ次はパワーアップだ。ブースト圧を上げ、そこで限界になるや戦闘機のようにインタークーラーを装着。吸入空気の温度を下げるデバイスを負荷する。さらにレスポンスを向上させるため、タービンを二つ装着するなど、もはや戦闘機作ってるみたいになっていく。日産だけでなく、やっぱりターボを作りたくてイライラしてた三菱まで乱入してくるや、際限無くなりました。世界最初のタービンと称されたKKKなど霞むイキオイ。
モータースポーツにターボが使われたのも進化に拍車を掛ける要因となる。第2次世界大戦での敗戦国、ドイツ/ポルシェと日本/ホンダの戦いは凄かったと思う。F−1でパワーアップ技術が育ち、さらにWRCに使われるようになるや、レスポンスまで求められることに。市販車には使われていないが、WRC用最新ターボエンジンはアクセル戻した時もタービンの回転を落とさないシステムが付いている。アクセルを開けた瞬間からドッカ〜ンとパワー出るそうな。パワーを出すための技術や、レスポンスについてはNAをはるかに越える域に到達したと思う。
以上、簡潔にターボの特徴をまとめると「NAよりコンパクト&軽量で大きなパワーを引き出せること」に尽きる。ル・マン24時間レースを見ても、V12を搭載するノンターボのBMWより、コンパクトなV8ターボの方が圧倒的に速い。2リッターくらいの排気量から600馬力くらいのパワーを引き出すことなど朝飯前。全盛期のF−1は、1、5リッターで1300馬力あったそうな。エンジンをコンパクト&軽量化出来れば、車体も小さくまとめることが可能になる。理論からすると、圧倒的にターボが優れていると理解して欲しい。
ここまでが過去から現在までのターボ。興味深いことに、今年の秋くらいから次世代のターボが登場してくる。どんなターボかとなれば、ズバリ燃費を向上させるためのもの。すでにボルボや新型VWパサートなど「燃費を落とさず性能アップを実現する」をテーマとし始めた。いずれもNAと比べて遜色ない燃費。パサートのデータを見ると、1、8リッタターボで12、3q/リッター。同じ出力とやや劣る動力性能の2、3リッターNAが10、3q/リッターとなる。1、8リッターNAは11、4q/リッターだから、ターボが最も効率いいのだ。
日本も黙っていない。秋には新しい規格の軽自動車がドバッと出てくる。この中に燃費とトルクを向上させるターボが混ざっているらしい。パワーを追求するのをやめれば、吸入空気を冷やして濃い空気にするインタークーラーを省略出来る。インタークーラーを付けないと、タービンで過熱された空気は膨張したまま。パワーは期待できないが、面白いことに薄い空気を作れるのだった。えっ薄い空気だと? 何のことはない。直噴と同じく燃費を稼ぐことが出来てしまう。アクセルを深く踏まない巡航時は薄い空気を吸い、パワーが必要になればターボの威力をフルに発揮して重いボディを引っ張ってくれると言う寸法。どうやらターボにはまだ先があるようですな。