エコランのテクニック

クルマの運転というと、ほとんどのヒトは「速さ」をイメージするんじゃなかろうか。しかぁし!個人的にゃ「公道の究極のドライビング=省燃費走行」だと思っている。なぜか? そいつぁ周囲の交通状況を全て掴み、さらに自分のクルマの効率まで考えないとダメだから。こう書くと「だってエコランなんてユックリ走ればいいんでしょ?」と思うかもしれぬ。右手を前に伸ばし、人差し指を立てた状態で細かく左右に振って欲しい。「チッチッチ」です。
 ユックリ走るだけのエコランは「エゴラン」だと思う。他のクルマに迷惑を掛けるだけ。ワタシの言うエコランって違う。簡単な例を挙げておく。1キロ先の信号が赤に変わったとしよう。普通ならそのまま走り、信号手前でブレーキ踏む。名人ならどうするか? 赤信号を見た時点で、まずバックミラー見る。もし後続車居ないようなら、アクセル戻しユックリ走るだろう。ただ後続車居るときにコレやればエゴランである。
 後続車居れば後続車に迷惑を掛けず、しかも赤信号まで燃料食わないで届く方法を考えねばらならない。この答えは決まっていないのだ。後続車の車種や、それまでの動きなどから判断し、イライラしそうなヤツなら一度速度を上げ気味にし、そこから信号手前までジワジワ速度を落とす。逆に後続車もエコラン傾向であれば、アクセルをパーシャルとし、信号までたどり着きそうな時点からアクセル戻す。

 こういった判断を絶えず繰り返し、少しずつ燃料消費量抑えるのが「上手な運転」である。ワタシの知る限り公道で最もエコラン上手いのは、黒沢元治師匠だ。何度も図書券掛けて勝負し、痛い目にあっています。ジツはワタシの場合、学生時代からエコランに掛けちゃ真剣だった。当時ガソリンがリッター150円。加えてRX−7なんぞに乗っていたから大変である。イヤでもエコランしないとアカン。
 学生時代に雑誌でバイトしていた時、シャレードのエコラン大会があった。雑誌対抗で富士スピードウェイまで使った大きな規模のイベント。ここに出たワタシは、バイトの立場で見事2位となる。最近そんな彗星のようなデビューをする若手、おらんがな。だからして昨年シビックとカローラの燃費勝負をすることになった時は、10%くらいならウデでカバー出来るな、と思ったくらい。ホンダ&CT鈴木兄スマン。
 その際、鈴木師匠丸刈りになるなら御一緒します! と志願して生まれて始めて丸刈りになったエボ山口だったが、どうやら次回は自分で燃費勝負の運転手になるつもりらしい。正面から「教えて下さい!」とやってきた。教えて下さい、と言われて断ることなど出来まいぞ。かくしてコーチすることにした。ま、一人くらい燃費スペシャリストを育てて置くのも悪かないか。むろん秘伝は教えないけど、レシピの全てを伝授することにした。
 といったワケで上手なエコランは、他から見て全然解らない。だからこそCT鈴木兄をダマせたのだ。さて、どうやってエコランの練習をしたらいか? 簡単なのはサーキットと同じく、同じ条件で何度も走ること。今回は1周25分程度のコースを設定した。ここを同じペースで走れば、運転方法による燃費の違いが解るというもの。コース図についちゃイラストを見て欲しい。クルマはボルボのV70ターボ付きを使った。
 以下、走行条件別による省燃費走行を伝授しよう。まず高速道路。ここは普通に走るなら、速度とアクセルワークがポイント。速度は遅いほど良いけれど、んな走り方したら危ないだけでなく迷惑だ。ヒンシュク買わず、同時に燃費を延ばせる速度は85〜90キロくらいだと思って欲しい。特にリーンバーンや直噴エンジンの場合、90キロくらいから急に燃費は落ち込むから覚えておきましょう。CT鈴木兄最大の敗因は、高速道路を100キロで巡航したことである。
 追い越し車線を走るときは「ブレーキを掛けず、アクセルも深く踏まない」というのが原則。すなわち先行車に追いつきそうになったら、アクセル戻し気味で走る。ブレーキ踏んだら失敗だ。また先行車居なくなって加速する時は、可能な限りジワジワと。イライラしてそうな後続車が居れば、一度左に避けて先に行かせればいいだろう。これだけで簡単に燃費は10%くらい違ってくるからナメたらあかん。
 最もアタマ使わなくちゃならんのが市街地である。ポイントとなるの、信号です。信号青になってアクセル全開加速し、赤でブレーキ掛け止まる。これの繰り返しが最もガソリン喰う。エボ山口の運転を見てると、前後の道路状況など全く気にしてない。いつも前のクルマとの車間一定。加速すればコチラも加速する。ブレーキ踏まれればコチラもブレーキ踏む。これじゃ燃費悪いだけでなく、ギクシャクしてヘタクソに感じるぞ。”流れ”を見てないのだな。
 運転席からは最低でも10台。トラックやバスが走っていれば20〜30台先まで見えると思う。その流れの速度をアタマの中に入れ、自分のクルマの流れを算出すればよろしい。普通、ゴハンとオカズがあれば、ちょうど両方無くなるように食べるもんでしょ? エボ山口の運転って、オカズだけ食べちゃうようなもんなのだ。これが自然に出来るようになれば、ゴハン食べるように自然なエコランが出来るワケ。
 ここで注意したいのが後続車の観察である。イライラさせないためには、信号変わった時の加速をなるべく元気よくすべき。すると後続車は「このヒトは走るときは走るんだな」と判断してくれるだろう。ノンビリ走り出すとイライラされ、車間距離を詰められる原因になってしまう。後続車のイライラを買ったら、もはやエゴランだとキモに命ずべし! くどうようだけれど「エコランには見えない」のが名人のワザ。
 ヒルクライム=登り坂である。ここでのポイントは二つ。速度とブレーキだ。登り坂だからして、当然のごとくアクセル深く踏まないと走らない。かといってユックリ走っていると、高いギアに入らないから困る。同じ距離を走るとしよう。2速より3速ギアの方が燃費いいのだった。したがってある程度の速度までは、アクセルを踏んで加速すべき。地球防衛軍ヒルクライムに於けるエボ山口の走り見ると、ギア2速&3速。
 勾配によっても違うのだけれど、60キロまで届けば間違いなく4速に入る(V70は5速AT)。ワタシは一度60キロまで引っ張り4速に入ったのを確認し、そこから3速に落ちない範囲でアクセル開度をコントロール。さらにブレーキ可能な限り使わないのは当たり前。エンジンブレーキも使わないようにしなくちゃ。とにかく登り坂でブレーキ掛けるのは100%ムダです。コーナー手前から速度をコントロールしておくこと。
 野菜ステーション先を曲がってから頂上までの走行時間はエボ山口の2分25秒。対するワタシが2分10秒。15秒速く走っても、燃費はワタシの方が間違いなくいい。燃費競争をする時は「速く走って相手を驚かせる」というのも大切。インサイトで鹿児島まで燃費競争やった時は、ホンダ研究所チームをこの作戦で揺さぶった。先に着いてるチームに燃費で並ばれてしまうと、けっこう動揺するもの。空気抵抗少ない走行条件なら、速度は気にしなくていい。
 下り坂はエンジンブレーキの使い方がポイント。インジェクション仕様のクルマだと、アクセルオフで一定の回転数以上は燃料をカットしている。クルマによっても違うのだけれど、1500回転以上になると大半のモデルが燃料カット。つまり1500回転以上回っている状態でアクセル戻していれば、ガソリン喰ってないということです。下り坂ばかりだとリッター100万キロだ(そんな坂は地球上に存在しないが……)。
 なのにエボ山口見てると、ずっとDレンジのままじゃないの! ホントに何にも知らないみたいだなぁ。コツを教える! 下り坂ではマニュアルシフトし、可能な限り1500回転以上をキープ。逆にコーナーの立ち上がりでスピード上げたい時は、Dレンジに戻してエンジンブレーキを緩くするのだ。これをコーナーの通過速度や勾配によって判断する。ま、経験値ですな。メーカーの10・15モード専門のテストドライバーは、燃料カットの使い方が上手。
 これまた遅ければいいというものでない。峠の頂上から下りきった右手アブナイ交差点までのタイムは、エボ山口もワタシも1分27秒。この間、エボ山口燃料カットモードにあまり入っておらず、さらにアクセルまで踏んでやがんの! もうアカン! エボ山口・この時点で「燃費大王に教えを請うようなラベルにゃ達しておらぬ! 雑誌記事など読んで勉強せい」とタンボにケ落とされました。
 以上、中級から上級のエコランテクニックなど披露してみました。『大磯10・15モード燃費コース』を普通に流した時の燃費は6,8キロ/リッター。エボ山口がエコランやって7,2キロ/リッターだ。本人は「けっこう立派な数値!」だと思ったらしい。しかしワタシが同じコースを1分近く速く走り、8,5キロ/リッター。クルマの性能で15%燃費向上させるのは大変だけれど、テクニックあればすぐ出来る。
 さらに大魔王モードというのがあるのだった。これ、企業秘密のブブンあって多くは語れないのだけれど、4ストロークエンジンの主な抵抗になっているポンピングロスを可能な限り減らすテクニック。外から見ていても、ほとんど解らないと思う。ヒントを少し書くと「アクセル一定より少し開けたり閉めたりする方が燃費良い状況もある」(説明も難しい)。これと信号待ちのエンジン停止を組み合わせたのが大魔王モードで、10、3キロ/リッッター。
 パンピーであるエボ山口のエコランと比べれば30%もいい。ここまで読んで「そうか!」と思ったヒトもいるだろう。丸刈り勝負やった時、ワタシは「CT鈴木兄だってエコラン知ってるけど、大魔王級ではないから10%くらい差を付けられるだろうな」と踏んだワケです。ちなみにワタシが燃費じゃフォーミュラニッポン級の平均的ドライバーだとすると、メーカーにゃF−1のトップクラスみたいな超大魔王級がいます。
 マニュアル車の燃費向上テクニックの基本は「飛ばしシフト」である。5速までシフトアップするとしよう。一般的には1速から5速まで順にシフトして行く。でもその間、空走抵抗あったりアクセルのオンオフが頻繁に繰り返されたりと燃費低下要因多し。そこでエコランでは1速の次ぎに3速に飛ばしシフト。ここで50キロくらいまで引っ張って5速に入れてしまう。これ、ワタシの場合はけっこう日常的に使っています。特に6速マニュアルなどだと、全部順番にシフトしていくの面倒。この場合、1速から3速。そして5速、6速の順というのがセオリー。3速から6速はちょっと無理。また燃料カット領域の使い方もATより自由度が高い。
 早め早めのシフトアップをするのが最大のコツ。ATというのは設定上、一定のアクセル開度だと高い目の回転数までシフトアップしない。しかし一度アクセル踏んで加速状態にし、アクセル戻してやれば早めのシフトアップが可能。シフトアップしたら再び加速し、次のギアに入る速度域に達したらアクセル戻してやる。これを繰り返せば、普通の加速より早いタイミングでシフトアップするのだ。また下り坂の燃料カットはタコメーターを見ながらどうぞ。Dレンジ1500回転以下でブレーキ踏むより、シフトダウンしてエンジンブレーキ使った方が燃料は喰わない。最も燃費良い巡航速度はODに入るギリギリの速さ。60〜70キロが標準的。
 燃費大魔王としても未だハッキリとドラテクを完成していない分野。特に直噴と組み合わせたCVTの場合、どうやって走ったらベストなのか分析しきれていない。さらにハイブリッドまで組み合わされるインサイトに至っては複雑すぎる。ホンダ研究所チームにギリギリで負けた最大の要因が修行不足にあると思う。今回セディア・ワゴンで同じ道を走ってみたが、V70では楽に超えられた10・15モード燃費も達成出来なかった(セディアワゴンの10・15モード燃費は16キロ/リッター)。とりあえずマニュアルモードで早めにシフトアップさせてみました。今後厳しい修行を積むので、近いウチにレポートしてみたいと思う。ただ基本は同じです。
ターボエンジンは「とにかくブースト圧が多く掛からない状態」をキープするべき。ブースト圧タップリ掛かると、熱効率(1リッターのガソリンで発生するエネルギー量)悪化してしまう。とは言いつつも加速する際は、軽い過給状態で有れば低いギアでノロノロ加速するより効率いい。したがって地球防衛軍ヒルクライムのようなコースでは、ある程度過給させ、一定速度に達したらクルージングモードに入った方が総合的に考えれば有利。対するNAは、多少アクセル開けた状態の方がポンピングロス減って(ここを説明するの大変。ま、なぜTVが映るのかと同じようなモンだと思って下さい。いずれにしろ少し開け気味の方が熱効率いい)、ダラダラ加速するより良い。どちらもアクセル全開にしたらダメです。