自動車メーカーに聞くと、最近「ガイアックスという燃料を入れても大丈夫か?」という問い合わせが多いのだという。確かにガイアックスを販売するスタンドが急に増えてきた。1年前まで数店舗だったのに、今や100店舗以上。ほとんど全国で入れることが可能になっている。なんせレギュラーより10円程度安いのに、オクタン価ハイオク並。しかもクリーンだというのだから魅力的だ。果たして自分のクルマに入れても大丈夫か?
 まずはガイアックスという燃料の組成を調べてみた。それによるとアルコールが60%。炭化水素40%となる。炭化水素=ガソリンなので、アルコールとガソリンを混ぜたものということ。この手の燃料、別に珍しくない。メキシコでは『ガソホール』と呼ばれムカシから販売されていたし、現在もヨーロッパに行くと10%くらいのアルコールが混ぜられているガソリンもあるくらいだ。この燃料、面白いことに日本じゃ税法上の『ガソリン』でない。



 ガソリンとは炭化水素50%以上の燃料を示す。50%以下のガイアックスを「ガソリン」と表示して売っちゃイケナイ。逆に考えるならガソリンでないとすると、1リッター当たり53円80銭課税される『ガソリン税』は掛からない。そんなことから、ガイアックスが発売された当初、無税。1リッター60円台で販売されていた。ワタシも愛知県にあったガイアックスを65円くらいで入れたことある。こら安い、ということで全国に急増したワケ。
 しかしこういった”抜け道”を石油ギョウカイや大蔵省が放置するなんてことはあり得ない。取り扱いスタンド急増を見て早速クレーム付き、今は32円10銭という『軽油取引税』を掛けられることになった。軽油じゃないのだからムチャクチャなことだけど、逆に考えると、もう”脱税”じゃなくなったということだから、もし本当にガイアックスが「ハイオクと同じオクタン価でレギュラーより10円安い」燃料なら、大いに魅力的だと言うことになろう。
 ここで気になるのが「アルコール」という燃料の特性。ガイアックスを発売した当初、ガイアエナジーは「普通のクルマに入れても全く問題ない」と説明していた。ワタシも信じて入れたのだけど、結論から書くと安全で無かったのだ。今は組成を換えたらしいけれど、当初のガイアックスは『メタノール』というCARTなどで使われるアルコールを使っていた。メタノールの特性上、耐性のあるゴムを使わないと『膨潤』という現象が起きる。
 水の中に小さなカメやトカゲのオモチャを入れると、水を吸って巨大化する。あれと同じ現象だと思えばよかろう。もちろんゴムだからして、あんな巨大化はしない。でもメタノールに耐えるゴム使わないと、必ず膨潤するのだった。長く使っていると、燃料系のパッキンなどが膨潤し最悪の状況じゃ漏れてしまう。ガイアエナジーも「問題ある」と判断したのだろう。昨年11月にメタノールから違うタイプのアルコールに換えた。これについてのデータは無い。

 ただ前述の通りヨーロッパに行くと、10%程度のアルコールを含んでいるガソリンもあるため、輸出仕様と同じ燃料系のクルマについちゃメタノールであっても膨潤の心配はしなくてよろしい。ヨーロッパ車もメタノール対策してあるから、おそらく大丈夫だと思う(心配ならメーカーに確認して欲しい)。もう一つの問題点がアルコールの熱量。メタノールの場合、熱量はガソリンの70%だ。つまりメタノール100%なら、熱量30%落ちる。
 初期のガイアックスはメタノール60%だったから、単純計算でガソリンの82%という熱量となりますな。つまりガソリンの82%しかエネルギー持ってないということ。ガソリンエンジンの熱効率を30%とすれば、燃費は6%くらいしか落ちないが……。これまた11月に新しいアルコールに換えたので、ガソリンと同等の熱量を持つと主張している。膨潤無し。熱量ガソリンと一緒だけすれば、素晴らしい! ただ現時点じゃ確認出来ませんが。
 ジツはもう一つ問題が残っている。そいつぁ気化熱。クルマに詳しいヒトなら知ってると思うけれど、ガソリンエンジンってオーバーヒート防ぐため高負荷時に『燃料冷却』を行う。空気14,7対ガソリン1という理想空燃費より濃いガソリンを吹き、気化熱でバルブなどエンジン内部&排気の温度を下げる。ターボや高性能エンジンの大半が、オーバーヒート時にエンジンや触媒を守るため、この制御入れているのだった。いや、普通のエンジンでもやってる。
 ガソリンは気化時に奪う熱が大きいから燃料冷却を有効に使えるのだけれど、アルコール系だと厳しい。ホンダやトヨタがCARTシリーズに出ていった直後、エンジンをバンバン壊した。あれは燃料がメタノールだったため燃料冷却を使えなかったのだ。ガイアックスにも同じことが言える、と思う。おそらく自動車メーカーがガイアックスを使用してエンジン壊れても保証してくれないのは、このあたりにあるんだよ、という情報も聞く。

 もちろんアルコール100%でないから燃料冷却効果はゼロじゃない。でもメーカーだって出来ればガソリンをジャブジャブと吹きたくないので、必要最小限の増量で済ましている。ガソリン比率40%のガイアックスだと、どうしても増加量が足りないのだろう。資料の入手元の関係上、これ以上詳しく書けないけれど、燃料冷却しなくちゃいけない状況になった時、アルコール系燃料は不具合出る可能性を考えるべきだ。以上がアルコールという素材の特徴。
 排気ガスのクリーン度については、一長一短ある。車検の時に計測するHCやCOこそ有利だとされているが、アルコールからはガソリンだと出ない『ホルムアルデヒド』が出てしまう。二日酔いの時の排気ガス(ニンゲンが吐く息)と同じニオイで、人体に有害だとされている物質。またHCやCOは、最新のガソリンエンジンだと、ほぼ出ないと言って良いレベル。TLEVやLEVなどなら、ガソリンとガイアックスでHCとCOの差は計測誤差内。
 以上、ザッとアルコールとガソリンについて物理的な説明してみた。もしガイアックスを使うのであれば、ここで挙げた弱点と長所を上手に使ったらいいのではなかろうか。例えば高性能車。アクセル全開で走るような時なら、サックリ止めておくこと。メーカーだって保証してくれない。でも毎日の通勤に使う程度だと、燃料冷却が入ることなど無いから大丈夫。むしろ「レギュラーより10円安いハイオク」としてのメリットが大きいと思う。
 ハイオク仕様のエンジンにレギュラー入れると燃費で数%ダウンする。オクタン価98のガイアックスなら、ここでの燃費ダウンが無い。しかもガイアエナジーの主張通り熱量も差がなければ、燃費はハイオクと同等だ。現在ハイオクとレギュラーの価格差約15円。ガイアックス入れると25円くらい安くなるということ。この差は大きいです。燃料冷却制御が日本車より少ない輸入車などもガイアックス向きかも。一度使ってみたらいかがだろう。

 ガイアックスの将来性を考えてみたい。現在、世界レベルで見るとガソリンの価格が急騰している。近い将来、日本でもリッター20〜30円上がるだろうとウワサされ始めた。アルコールを60%使うガイアックスなら、値上げもガソリン分だけで平気。アルコールはガソリンから採取するのでないからだ。もしかすると現在10円の価格差が、20円くらいに開くことも。そうすれば街乗り用の燃料としちゃ魅力的。将来性あると思う。
 マイナス面はホルムアルデヒドの問題。この成分を「人体に有害」とされると、アルコール系燃料は厳しい。専用の触媒などを開発しなければならないからだ。触媒装着するにしても、数が出なければコスト下がらないから困る。もう一つは「ガソリンエンジンに入れのだから、ガソリン税を掛けろ!」となったケース。これまたコスト面でガソリンと対向出来なくなりますな。ただ新しい物を排他するのはどうかと思う。当面、今のままでいいじゃないですか!



   <ベストカーのコラム>

『ガイアックス』と呼ばれる燃料を知っているだろうか? ガソリンエンジン用として販売されており、価格は1リッター70〜85円といったトコロ。今年に入ってから取り扱いスタンド増え始め、今や日本全国に展開中。そんなことから最近ワタシのHPに「ガイアックス入れても大丈夫なの?」という質問が増えてきた。確かにリッター70円ならエラく安い。ディーゼルの燃料である軽油と同じようなもの。
結論から書いてしまうと「長い間使っているとトラブルが出る車種もある。また、高出力車はなるべく使わない方が良い」ということになるようだ。なぜか? まずガイアックスの組成だが、普通のガソリンのバアイ『炭化水素』を主としている。対するガイアックスは炭化水素=ガソリン40%。アルコール(自動車メーカーの解析によればメタノールに近いとか)52%という組み合わせ。



 炭化水素50%以上というのが、いわゆる税法上の『ガソリン』だからして、ガイアックスはガソリンじゃない。よってガソリンに課税される58円ほどの税金は掛からないのだ。日本のガソリン税は不当に高いので、この点についちゃ非常に気分イイ。そんなことから基本的にワタシがガイアックス支持者である。ただ「安心して使えるかどうか」ということになってくると、ハナシは別。
 アルコールとガソリン混ぜた燃料、別に新しいコンセプトでなく、メキシコとかでムカシから『ガソホール』と呼ばれ一般的に使われてきた。ここで注目したいのがメキシコ仕様の存在。ガソホール使うため、若干スペック違っているのだ、逆に考えると、メキシコ仕様で対応されているブブンは、ガソホール使う時の注意点でもあるワケ。調べてみたら、大きく二つのモンダイがあるという。

 一つは『膨潤』。燃料系などに使われているパッキンなどゴム類、耐アルコール仕様になっていないと、アルコール染み込み膨らんでしまうそうな。ヨーロッパ車や、日本車の一部は標準で耐アルコール性能持つパッキンを使っているそうだが、依然として未仕様のメーカーもある(もしかして車種によって違うかも。残念ながら調べきれない)。パッキン類ダメになると、燃料の漏れに発展する。
 二つ目がノッキング性能。アルコールは普通のノッキングを起こさず、突如エンジン壊れることもあるらしい。恐ろしいことにノックセンサー利かず、イキナリ壊れるのだという。だからこそインディCART用のエンジンって難しいのだ。といったことからすると、高出力型エンジンにアルコール系燃料入れるのはやや不安。もちろん燃料が原因でエンジン壊れたなら、メーカーもクレームを受けてくれない。