クルマ好きの間の会話じゃ、挨拶代わりのようにボディ剛性がアルとかナイなどと言われる。そんならボディ剛性って何だ? この質問に対し、正確に答えられるヒトは、シロウトにゃいないと思うな。いやいや。シロウトをナメてるんじゃないぞ。ワタシらのようなヒョウロンカでさえ、キチンと理解してるヒトは50人に一人くらいだと思ってよろしい。たいていワケがワカランクセにボディ剛性の有無を語ってるのだな。そんならオマエは知ってるのかとなれば「たいへんに難しいことを知っている」のだった。以下、ボディ剛性について巷間言われることを並べてみたい。
1)ボディ剛性って何だ? そもそもこいつが難解。自動車メーカーがボディ剛性と表現する根拠となるのは『ねじり剛性』とか『曲げ剛性』と呼ばれるモノ。専用の計測器の上にクルマをセットし、ゾウキン絞りみたいに力を掛けるのがネジリ剛性で、格闘技で言うところのサバ折りやエビ固め的な応力は曲げ剛性。クルマが走っているときに掛かる力は、90%こういった方向から受ける力なのだ。したがってボディ剛性を上げるとガッシリしたボディになると信じられている。

 ところが、だ。外からの入力というのは、一定でない。当たり前だな。サスペンションを介してジワッと入ってくるモノもあれば、サスペンションがフルバンプ(ストロークを使い切った状態)してドシッ!っとくるモノもある。メーカーの言ってるボディ剛性は、このウチ前者のみが対象。ゴムみたいな物質を考えて欲しい。ゴムは硬くすればいくらでも硬くなる。ゴムの中に材木で補強でも入れてやると、ボディ剛性を上げることだって可能だ。ただあくまでユックリ力を入れていった時だけ。ハンマーでブン殴るような力を入れたらヘナヘナでしょう。
 逆にスライム(とか水)みたいな物質を思い出して欲しい。ユックリ力を加えていけば、自由にカタチは変わる。なのに衝撃的な入力に対しては驚くほど硬いのだ。水も墜落した飛行機にとっちゃコンクリートより硬い。飛び込みでハラが痛いのも水が硬いから。つまり水みたいな物質も、素晴らしく高い剛性を持ってるということ。ここまで読むと「そうか。ボディ剛性って、メーカーの数字じゃ解らないのね」と解ってもらえるだろう。

2)ボディ剛性が高いとは? といったことからすると、ワタシらがいつも表現するところのボディ剛性は、メーカーの宣伝するボディ剛性と全然違うもの。ネジリも曲げも、普通感じることはほとんど無い。むしろピークが高く、ガシガシとボディを揺らすような衝撃に強いボディのことをボディ剛性が高いと言ってる。水やスライムと同じで、剛性そのものは低いかもしれないワケ。つまり「ボディ剛性」でなく「ボディの剛性感」のことをボディ剛性と表現していると思って欲しい。
 大変興味深いのが、最近話題の衝突安全性。ヨーロッパで98年10月から施行される厳しい安全性をクリアするには、衝撃的な入力に耐えないとイケナイ。当然ながら各社そいつに耐えるボディを作るワな。結果として出来たのが「すっごいボディ剛性高いじゃないの!」と感じるクルマだ。プジョー406なんかビックリするほど剛性があるモンなぁ。これは激しい入力に耐えるためのボディを作った結果、ボディ剛性感が上がったという寸法。ムカシからドイツ車はボディ剛性があるといわれていたけど、衝突安全性の高いボディを作ったために剛性感も出たのだろう。

3)低いということは? ここまで読んで解るとおり、ボディ剛性が低いとは「アホンダラ」や「スカタン」「役立たず」(こいつぁワタシのナニであった)と同意語であると思っていい。乗ってワナワナするし、ぶつかってグッシャリだからだ。98年規制で生き残る事故でも、剛性低ければアウトということ。特にネジリ剛性が低かったりすると、マジにコーナーで車体はヨジれる。以前、車体にビデオを取り付けてチェックしてみたら、ボディの前後で2pくらい変形してた! 右前輪だけジャッキアップするとドアの開閉が出来なくなるクルマだってあるし。

4)クルマにとって大切か? 過度のボディ剛性は必要ないと思う。強固過ぎる剛性を持たせようとすれば重くなるし、コスト高にもつながる。衝突安全性という観点からも、ちょうど潰れるくらいがいいのであって、戦車みたいにガチガチのボディじゃクルマは大丈夫でも乗員が死ぬ。何事も”適当”がイチバンなのだ。”いい加減”とはちゃうので間違わないこと。

5)判断はどうすればいいの? ボディ剛性というコトバの次に難しいのがこのブブン。困ったことにボディ剛性が無いように感じる要因は、車体構造そのものだけでない。ベンツやポルシェのようなボディ剛性大将軍のようなクルマでも、ヘナヘナのタイヤを付けただけでグニュグニュしてくる。劣化が始まったブッシュ(サスペンションと車体の間に取り付けられている防振ゴム)を付けてもアウト。ヘタッたダンパーあたりもボディの剛性感を落とす。インテリアの遊びが出てキシキシと音を立て始めると、これまたヤレたように感じてしまう。
 ようするに中古車みたいに個体差が大きいクルマであれば、長年の使用で金属が疲労してボディ剛性まで落ちたのか、その他のブブン(たいていはゴムの劣化)によるものかワカランのだ。相当な経験を持つヒトでも原因を言い当てるのは難しい。そんなこと出来たなら、タイヤメーカーや自動車メーカーの宝になる。テスターとして十分喰っていけると思うぞ。巻頭のボルボのページで書いたように、ボディ剛性の低下って、ワタシらが思っているより少ないモノ。

6)じゃボディ剛性は落ちないの? そうでもないから難しい。こらもう乗り方で決まる。サーキットや極悪路を年中走っているようなクルマは当然金属疲労が溜まってしまう。ドイツのニュルブリックリンクサーキットを千q走ると、普通の使い方の10万q分のヘタリがあるというし(性能によって劣化の速度は違う)、レーシングカーでも数戦走ったら”緩く”なる。
 一方、平坦な道を大人しく走っていれば、10万q走行後も新車と同じボディ剛性をキープ出来るだろう。ここで5)に戻る。ホントにボディ剛性そのものが落ちたのか、その他の状況でボディ剛性感が無くなっているのか解らないと判別不可能。よって中古車を買う時は基本的に走行距離が少なく、ボディ剛性感のあるクルマを選ぶこと。ただイタリアやフランス車みたいに、新車時からボディ剛性感の無いものもある。いやぁクルマって難しい!