環境問題を考えた場合、果たしてハイブリッドカーが一番良い答えなのか? この項でしっかりと検証してみたい。自動車が吐き出すガスの中で、人間にとって好ましくないとされるモノは主として5つあるとされている。CO2とCO、NOx、HC、そしてSOF/パティキュレート。
御存知CO2は二酸化炭素のことで、燃焼すると必ず発生する。ニンゲンも酸素と食物を広い意味で燃焼させるから、二酸化炭素を出す。ガソリンや軽油、灯油、木、何でも燃やすと酸素を消費し、二酸化炭素を出すワケ。したがって自動車の場合、CO2を減らす=燃費を良くするということになる。
具体的な毒性は無い。なぜ悪者にされているかとなれば、地球の気温を上げて南極などの氷を溶かすためだ。海水面が上がると水没し、国の存続すら危なくなるオランダなどは必死でアピールしている。日本も海水面が上がると深刻な被害を受ける国の一つ。
COは一酸化炭素のことで、人体に対し強力な毒性を持つ。不完全燃焼によって発生し、炭や練炭などを暖房用に使っていた頃は中毒で死ぬ人が多かった。
NOxは酸化窒素の総称。希薄燃焼させた時に出る物質で、ディーゼルや直噴エンジンなどから大量に排出される。毒性は一般に認識されるより強いようで、太陽光線にさらされると光化学スモッグの要因になってしまう。濃い濃度の光化学スモッグを吸うと死亡することも。
最近では花粉症やアトピー性皮膚炎、ゼンソクを発症させるIge値を上げるという報告も多い。つまりNOxを吸っていると、徐々にアレルギーが高まっていくということ。大気汚染の激しい地域にアレルギー性疾患の多い患者が多いのはそのためなんだろう。
アメリカでは非常に厳しく規制されており、ディーゼルだけでなく、NOx出しやすい直噴やリーンバーンなども販売することが出来ない。反対にヨーロッパの規制は緩いため、ディーゼルエンジンの販売比率は急増中。ちなみにディーゼルが増えた結果、ここ2〜3年でアレルギー疾患は爆発的に多くなった。
HCはハイドロカーボンのことで、不完全燃焼による燃料の燃え残りだと思えばいい。強い毒性と悪臭を感じる。触媒の無い時代のガソリエンジンが出す程度の濃度を持つHCを吸うと、数分で死亡するほど。
現在のガソリンエンジンも始動直後に臭い排気ガスを出すが、あれがHC。濃いガソリンを燃やすために出てしまう。臭いガスは身体に悪いと思って間違いない。ディーゼルは触媒を持たないため、ガソリンエンジンより大幅に多いHCを排出する。
SOF/パティキュレートは、いわゆる”スス”。これも不完全な燃焼によって生ずる。ディーゼルの黒煙が代表的存在。HCのような強い毒性こそ無いけれど、非常に臭いだけでなくNOx同様アレルギー疾患の補助をすると考えられている。
といった具合で「環境にやさしい」と言っても、5つの”害”を取り除かなければならない。以下、昨今取りざたされている直噴やディーゼルがどんな状況にあるのか説明し、最近注目されている燃料電池の将来性を探ってみたい。
まずはディーゼルエンジンから。興味深いことにこのところディーゼル車離れが明確になってきた。これまでミニバンやクロカン4WDと言えば、ディーゼルを買うのが常識だったように思う。1BOXカーの日産キャラバンもパジェロも、新型のガソリンエンジンを積むまでは80%以上ディーゼル車だったのだ。
しかしキャラバンの後継モデルであるエルグランデのディーゼル比率は50%にダウン。低燃費のGDIエンジンを積んできたパジェロに至っては、80%がガソリンとなっている。他車種も同じ傾向で、ディーゼルの売れ行きは落ちる一方。
メーカーはこの販売比率を予想できなかった様子。日産も三菱も生産計画の見直しに追われているそうな。筆者は以前からディーゼルに対し苦言を呈してきたこともあり、大変心強い思いをしている。
なぜディーゼルの売れ行きが落ちたか? 理由は三つほどあるようだ。筆頭に挙げられるのが排気ガスの汚さ。少なくとも真っ当な社会人であれば、ディーゼルになんか乗れないだろう。
考えて欲しい。住宅密集地でエンジンを掛ければ、騒音と悪臭で近隣の住民に多大なる迷惑を掛ける。迷惑を掛けられた人にとってみれば、暴走族と変わらない。
一瞬で通過する暴走族と、暖気運転を5分するトナリのディーゼルとドッチがいいだろうか? イマドキの世の中で、あんなに臭い排気ガスを出すモノが許されること自体、おかしいこと。
二つ目が軽油価格の上昇。本来、軽油もガソリンもコストは同じである。いや、正確に表現するなら、需要が大きいのは軽油や灯油といった産業用油種。
原油からこういった油種を取ると、いやでもガソリンが残ってしまう。しかもガソリンはガソリンエンジン用としてしか使えない。そんなことから日本以外じゃ軽油の方が高い。日本の国民は長いこと「ガソリンは贅沢」と教育されてきたのだ。最近になってやっと是正され始めた結果、今や軽油とガソリンの価格差は20円くらいになっている。
一方、新車価格はディーゼルの方が20万円前後高く、加えて燃費もディーゼルターボで飛ばすのと、ガソリンで快適&程度な速度でクルージングするのとは、ほとんど同じになっている。軽油とガソリンの価格差を考えても、走行距離5万qくらいまでならガソリンの方が安いくらいだ。
三つ目はリセールバリュー。すでにディーゼルの中古車人気は急速に下降中。現在ディーゼルの規制を一層強化する法案(現在は商用車だけ規制されているが、乗用車も都市部では乗れないようになる?)も審議中されており、これが決定したら下取り値が一段と安くなるだろう。
なのにヨーロッパで最も『エコ』だと認識されているのがディーゼルエンジンである。メルセデスを始め、オペルやVW、アウディなどは真剣にディーゼルを開発中。
筆者もベンツAクラスのディーゼルをチェックしてみたけれど、確かにパワフルで黒煙も出さず、臭いも少なかった。臭くなくて黒くない排気ガスを出すようになったディーゼルは環境にやさしいだろうか?
燃費はガソリンエンジンよりいい(CO2の排出量が少ないと言うことでもある。ただし同じ量の燃料中に含まれているCO2は、ガソリンより軽油の方が12%多い。同じ燃費だと、CO2の排出量はディーゼルの方が12%多いということ)。実現すれば、直噴エンジンに匹敵する環境エンジンに生まれ変わる可能性を持っている。
考えてみればガソリンエンジンだって触媒を通るまでの排気ガスは臭くて汚い。ディーゼルもガソリンのように触媒を付けて対応すればいいのだ。しかしディーゼル用の触媒を実用化するのは、これまで不可能とされてきた。
なぜか? ガソリンエンジンの場合、光化学スモッグの原因となるNOxと猛毒のCOは完全燃焼と触媒で無毒化出来てしまう。なのにディーゼルだとNOxを減らせば黒煙が出て触媒を詰まらせし、黒煙を減らすと今度は今までの触媒じゃNOxを除去出来ない(COは完全燃焼で消せる)。
大型車ならNOxを減らし、黒煙はフィルターで集めて燃やすという方法を取れるものの、小型車でそいつを行うとなれば難しい。といったことから、小型車用ディーゼルの排気ガス浄化装置は技術的に難しいとされている。
そんな状況の中、トヨタが市販のディーゼルエンジン車に触媒を装着。大幅に排気ガスを低減してきた。臭いの元になるHCを60%減らし、猛毒の一酸化炭素も90%減らせるそうな。
またSOFと呼ばれる微粒子(黒煙の中に含まれる物質の一つ)を50%減らしている。しかし。実車の排気ガスは黒煙こそ見えないが、臭かった。完全にはHCやSOFを取りきれないし、NOxはモロに出す。
次世代のディーゼルと期待されているコモンレール/直噴エンジンは、燃費や動力性能が上がるだけで、NOxという点からすれば一段と悪化するから困ったもの。
そんなワケでヨーロッパはディーゼル一本槍といった様相を呈している。個人的な意見だが、ヨーロッパは今後ディーゼルの排気ガスで悩まされると思っている。すでに97年夏はパリで大規模の光化学スモッグが発生するなど、悪い兆しも見えてきた。花粉症やゼンソク、アトピー性皮膚炎だって確実に増えるだろう。
重ねて書くが、現在の技術だとディーゼルの汚染物質をガソリンエンジン並にすることは不可能。NOxを無害化させる触媒と、SOF/黒煙の除去を行わない限り、ディーゼルエンジンの今後は暗いのではなかろうか。