一ヶ月ほど前のこと、警察の外郭団体の一つである『交通事故総合分析センター』が「厚底靴での運転は危険」というプレスリリースを出した。内容は「運転シュミレーターを使った実験によれば、厚底靴は制動距離は1m近く伸びることが判明した」というもの。
詳しく読むと「20歳代から40歳台までの女性9人により、11p厚底靴と運動靴とのブレーキテストを行ったところ、時速60qで走行中、障害物を発見しブレーキを踏むまでの平均反応時間が運動靴0,61秒に対し厚底靴0,66秒と0,05秒延びた(8pのブーツも実験しており0,62秒だった)。計算上、これで制動距離は1m伸びる」。
この実験から「交通事故になるかどうは紙一重のことが多い。1mの差でも生死を分けることを認識せよ」とコメントしていた。ところが、である。記事を読んだ多くの人は「よくない」と感じたらしいが、中には「たった1mしか変わらないのなら履く」と思う人も少なからずいるらしい。
確かに0,05秒の反射差というのは、個人による差より少ないレベル。年齢による差など0,1秒以上に達することも珍しくない。また、運転経験による差も間違いなく0,1秒以上ある。筆者のような専門家から見ても、0,05秒の差なら厚底靴でもいいかな、と思ってしまう。
参考までに書いておくと、この実験をする要因になった事故は右コーナーで、ほぼノーブレーキ状態の軽自動車が標識のコンクリートにオフセット衝突(車体前面の助手席側だけ潰れるモード)。助手席の女性が亡くなったもの。運転していた女性は当時流行している厚い底のブーツを履いていた、と報道された。
ただ事故は明らかにブレーキペダルを踏めなかったことによって発生したもので、ブレーキ反射と全く関係ないことが確認されている。0,05秒ブレーキが遅れたとしても、標識につっこうむことなどない。こういった乱暴なコジ付けで厚底靴を批判するという方法は疑問を感じる。
では厚底靴でも問題ないのか? 言うまでもなく「絶対に良くない」だ。運転する時の靴というのは、可能な限り足に密着し、ある程度ペダルの感覚が解らないとダメ。アクセルペダルからブレーキペダル踏み変える際、厚底靴だと踏み間違える可能性が出てくる。今回の事故も、踏み遅れたのでなく踏めなかったために発生した(ブレーキ痕が無かった)。
実車でテストすると厚底靴は踏力が出にくいため、さらに明らかな違いとなって現れたに違いない。「1mの差なら厚底でもいいか」と思わず、運転するときは専用の運動靴など用意するべきだ。ちなみにスリッパやサンダルでも同じ。つまらないミスで大事をおこなさないよう、十分注意して欲しい。