スキーやスノーボードといったウィンタースポーツを好む『くるまにあ』読者は多いんじゃなかろうか。かくいうワタシも5年ほど前にドッポリとハマり込み、今や1シーズン30日間くらいゲレンデに出ている。モンダイはスキー場までの足、だ。このところスキー場の駐車場で輸入車を見ることが増えてきた。皆さんスタッドレスタイヤやスノーチェーンを付ければ輸入車でも平気で雪道を走れると思っているようだけど、そいつぁ大きな間違いでしょう。ヒドイ目に遭わないウチ、注意差し上げておく。
体験談から。3シーズン前のこと。ワタシはスキーシーズン中、クルマを新潟県越後湯沢に確保してある合宿所置きママとしておく。大雪が降って関越が大渋滞した時、新幹線で往復するためだ。これ便利でしょ?,そのシーズンは、スタッドレスタイヤ履いたオペル・アストラを越後湯沢用とした。このクルマ、FFながらトラクションけっこう良く、滑りやすい雪道もガンガン走ってしまう。考えてみりゃヨーロッパも雪降りますから。大人4人がキッチリ座れるし。
そのシーズンは雪が多かった。12月中旬に置きママとし、正月を快適に過ごし、2月上旬のこと。1週間で積もった雪を下ろして走り出した、と思って欲しい。ハンドルを切ると、フロントサスペンション周辺からバキバキ音がする。走って直らない。かといって不具合もないのだが。その週末はそのまま使い、次の週に他のクルマとバトンタッチで東京に乗って帰り、ヤナセ行き。サービスマンもバキバキ音を聞いた途端「こりゃダメです」だと。かくしてお預かり。
原因は確定できなかったのだけれど、ステアリング系のベアリングがイカれており交換したとのこと。このハナシを国産車メーカーのエンジニアにしたら「原因は分かりますよ」だって。以下、非常に興味深かったので説明しましょう。エンジニアによれば、日本の雪、特に本州日本海側の雪はめっちゃタチ悪いらしいそうな。世界一、というより比較するものがないくらいアカンとか。雪が降る場所は世界中の至る所にあるけど、ほとんどのバアイ、軽い。つまり水分をあまり含んでいないのだ。
思い当たる。だってスコップで雪をドケようとした際、目一杯載せようモンなら重いの何のって!,北海道あたりだと粉雪なので、全然軽い。アメリカの雪も、ヨーロッパの雪も軽かった。いわゆるベタ雪というヤツなのだが、1m四方の雪の重さを量ると、200s近くありそうな雰囲気(知ってるヒトは教えて下さい)。その重い雪、ヒドイ時は2日間で2m積もる。1日で1mくらい降ると動けなくなるので、そのまま放置。結局2m積もっちゃう。2m積もると下の雪は圧縮されて一段と重くなるそうな。
クルマの面積は全長4m×幅1、7mのアストラで6、8u。ここに1u当たり400sの雪が積もったらどうなる?,恐ろしいことに2、72トンだ。実際、2m積もった時はカンペキにサスペンションを底付きさせ、押しても全くストロークしない。タイヤだってひしゃげるワな。ちなみにワタシの2台横に駐車してあった95年式キャデラックは、雪をどかしたら屋根とボンネット、トランク見事に凹んでました。キャデラックのサイズだと、積もった雪の重さ3、72トン!
国産車のエンジニアによれば、雪の重さ自体は問題ないらしい。困るのが下から吹き出す融雪シャワー。新潟県は田中角栄という政治家のおかげで、冬場でも雪のない道ばかり。国道はツルツルでも県道や町道に入れば地面から地下水が噴き出しており、無雪路になっている。この水を受けるとどうなるか?,吹き出した水は下回りの隙間という隙間に入り込む。その状態で駐車すると、凍る。走り出したら、またしても隙間に水が入り凍る。そうこうしてるウチ、サスペンション回りが凍結してしまう。
そこに2、72トンのオモリ。こらもうタマらんぜよ。しばらく後オペルに行く機会があり、日本の雪道の説明をし、テストを行っているか聞いてみた。答えは「そんなテストを行える施設を持っていない」。国産車メーカーの技術者曰く「けっこう難しいと思います。特殊な状況ですから」。GMのように入念なテストを行っているメーカーでさえ、日本の特殊な雪は手強い模様。以後、アストラは東京と越後湯沢の往復用として使った。大雪降ったら行かないようにして。
それにしても度胸のあるヒトが多いのにゃ驚く。30日間もスキーしてると、いろんな輸入車を見かける。けっこう多いのはランチア・インテグラーレ。4WDなのでスタッドレスタイヤ履かせるとバンバン走ってしまう。でも塩水(高速道路は融雪剤として塩を撒く)につかると電気系トラブルやサビが心配。雪降る北ヨーロッパ行くと、ラテン系のクルマはとっても少ない。ポルシェなども雪道走るとスピンして怖い思いをする。
笑ったのがシトロエン。大雪降った翌日、車体の雪をどかさずエンジンを掛けてる。大丈夫かな、と思ってたら、車体の下が見る見る緑色に。ポンプで一生懸命車体を持ち上げようとするが、重さ3トン。圧力に耐えられずハイドロ、漏れちゃったらしい。新車であれば一定以上の圧力でバイパスするも、中古車になると弱い部分も出てくるのだろう。ハイドロ系が雪道でヘタると積載車を持ってこない限り運べない。ほとんど致命的と思える大きな出費になるから注意して欲しい。
アストロやクロカンの注意点はスタッドレスタイヤ。アストロのサイズだと、乗用車用の高性能スタッドレスタイヤが無い。シェビーバンや、ダッジラムあたりになるとトラック用。この手のタイヤ、乗用車用と比べアイスバーン性能で大いに劣る。エコノラインで奥志賀に行ったら、帰りにアイスバーン出現。乗用車と同じ速さで走っていたら、全くブレーキ効がかない!,運良くカーブの途中にある駐車場に飛び込んだから良かったが、絶対ツッコンでたろう。
そろそろスキーシーズン。今年は輸入車で行ったろかい、と思ってる読者諸兄もいるだろうが、十分な注意を払って欲しい。基本的は「輸入車で雪道は走らない」ということです。なるべく国産車に乗っている友人と一緒に行くことをすすめておく。ちなみに国産車なら全然平気。アストラの後任にパジェロ・ミニを充てたが、3シーズン乗りっぱなしにしてもヘコたれない。いやぁ丈夫丈夫。雪の降る地域に住んでいる輸入車好きの知人に聞いてみたら「冬の間はヨメさん用の軽自動車が足」と言ってた。ワタシの2000年シーズンはプレオちゃんです。