今月のテーマは『ジコシャ』らしい。ま、中古車を買うときにゃ”必ず”と言っていいくらい話題に上がる問題だからして、一度は取り上げてみてもいいかもしれぬ。さてさて。ジコシャの定義とは何だろう? 軽い接触によるダメージを修理したようなケースまでジコシャとしてしまうヒトもいるようだけれど、それだと多くの中古車が前科モノになってしまう。それじゃ困るし、ホントの事故車が埋もれちゃう。したがって査定をするような時のため、とりあえず基準を設けてある。知らなかったかな?
 基準を要約すると「フェンダーやバンパーだけを交換するような事故についてはカウントしない。フェンダーやバンパーを潰し、さらに車体を構成している主要部材(モノコックシャシにもリーンホースやピラーのような主要骨格があるのだ)まで損傷を受けたものを示す」となる。つまりグシャッと壊れても、フレームの修正や主要メンバーの取り替えをしない範囲ならジコシャじゃないワケ。



 なぜフレームまで壊れるとジコシャ扱いになるのか? 理由を説明しよう。最近トヨタが『GOA』なる安全基準をPRするためのTVCFを盛んに流している。あれを見てると、クルマって衝突の瞬間にボンネットは『へ』の字となって曲がり、フレームはアコーディオンの蛇腹みたいにクシャクシャに折れ曲がるワナ。あの潰れ方、ジツは全て計算してあるのだ。例えばボンネットが『へ』の字状態に折れないまま、フロントガラスを突き破って車内に飛び込んできたらどうなる? エンジンがフロア下に潜り込まず、ダッシュボードを突き破ったらどうなる? こら怖いな。
 つまり事故の衝撃を主として受け止めるのはフレームなのである。ノーマル状態ならキチンと注文通りに潰れるが、修正したらそうもいかない。鉄は伸ばしたり曲げたりすると、たいてい初期の強度と違うモノになってしまう。メーカーの設計通りに潰れるかどうか、解らなくなるということだな。あるメーカーがフレーム修正を行ったクルマで衝突実験をしてみたところ、やはりノーマルとは相当違った結果になったそうだ。だからフレーム修正まで行ったクルマは、ジコシャとして分類しているのだ。ワカッタかね?

 なかには「ジコシャに対し「真っ直ぐ走らない」とか「キシミ音が出る」みたいなイメージを持っている読者がいるかもしれない。確かに未熟な技術で修理したり、手抜きをしたりすれば走行面での影響も出る。しかしキチンとした技術で修理されたものについては、そういった心配をしなくてもいい。だって考えてもみなさい。レーシングカーなんかも、クラッシュしたボディを修復して次のレースで使う。ボクもフレーム修正まで行ったクルマでレースをしたけど、問題なかった。
 今回試乗したC280の場合、ナニも言わないでハンドルを握らせたなら、専門家でさえジコシャ当てをすることなど出来ないと思う。むしろ走行距離が少ないこともあり、ジコシャの方がスムースで静か。「160qくらいからフルブレーキングを掛ける」といった大きな入力をボディに入れてみても、全然普通。高速域での直進安定性だけでなく、ブレーキを掛けてフロントサスがフルストロークしているような状態でさえ、真っ直ぐ走る。騒音振動も普通と買わない。

 外観は専門家が見ればジコシャだと解る程度。具体的に言うとボディパネルの隙間で判断するのだ。ボンネットやフェンダーを修正したクルマなら、隙間が連続的に変化してしまう。ヘタな工場だと鉄板がデコボコしてたり、色の違いも出る。ただ今回のクルマは見事。経験の浅い査定マンや、中古車屋サンならジコシャだと見抜けないかもしれない。これまた気にすることもないと思う。
 以上、ザッと説明したように”キチンと修理されたジコシャ”なら問題は一つだけ。「次の事故の際、どう潰れるか予測出来ない」というものである。今回の取材車は優れた衝突安全性を持つベンツだからして、マークUなんぞより強いかもしれぬ。逆に恐ろしく硬い車体構造を持つGOAボディのスターレットだと、当たり負けするかもしれない。確率的に分析したって、年間3万qくらい走るボクでさえボディ構造がイノチを救ってくれたような事故を起こしたことはないのだ。宝くじに当たるようなものか?

 それに少なくともサビの出たクルマよりは強いだろう。同じ場所に当たらなければ大丈夫、という考え方もある。おそらくジコシャを買っても、99、99%くらいの割合で大きな事故を起こすことなく過ぎると思う。ただボクは安くてもパスしておく。常にリスクを最小限にしておきたいからだ。ここまでくると人生哲学みたいなもので、もはや理屈でない。最後になるが、知らないウチにジコシャを掴まされているケースはけっこう多んだぞ! それよりも「ジコシャだと知って買う」方が5万倍くらい気分的にもいい。

   以下くるまにあ編集部古屋氏のベンツ190Eについて