デントリペアの巻

 隣のマンションの5階からステップワゴンが落ちてきて、ボンネットのど真ん中に見事なエクボを作ってくれた。ミニカーといえどもステップワゴンは角張っており、ハッキリ解る状態。見た瞬間「デントしかないですな!」です。ただデントの場合、ウデの差がかなり大きいという。凝り性のワタシだけに、せっかくなら達人のデント作業を見たい。そこで塗装のことなら磨き屋さんに聞け、とばかり『ポリッシュファクトリー』の及川氏に電話してみた。
 すると「減らず口が多いけど上手な職人いますよ!」。早速電話して来て貰う。この方、基本的にディーラーや板金屋さんといったプロを顧客に仕事をしているそうで、仕事あれば出張するそうな。約束の日時に待っていると、カローラバンに修理道具一式積んで登場! エクボを見るなり少し顔色変わる。予想してたより深いらしい。聞いてみたら小さいけれど深いと言う。難易度としちゃ相当高く、デントだと直らない可能性あるとか。



 ボディ面のデコボコを見る蛍光灯と道具などサクサク用意し準備完了。普通、デントは秘密のノウハウが多く、作業や道具を見せず、ましてや写真撮影などトンデモナイと言われる。でも斉藤さん、作業を見てて何も言わない。聞いたら「解るような仕事じゃないですから」だって。まず1mくらいある金属の棒でエクボになった場所(ボンネットのド真ん中)を裏側から押す。いや押すというよりコスる感じ。何度かコスると見る見る浅くなっていく。

デントの道具


 及川氏によれば「裏側からエイッ!って押すだけで直ることもある」というが、今回のような尖ったエクボだと浅くなるだけ。キズは直らない。どうするのかと思ったら、七五三の時にナメる千歳アメみたいな白くて丸い棒(先が尖っている。硬い樹脂製)を取り出し、ボンネット側のエクボの中心に当ててガンガン叩き始めた! やさしく叩くのでなく、ホンキでガンガン、だ。大丈夫かね、と見たら、最初と同じくらい深いエクボになってた。あらら!
 ナニやってるか? 鋭い二等辺三角型だった凹みを押し広げ、なだらかな二等辺三角型にする作業なんだとか。で、再び裏側から押し、凹み全体を浅くする。さらにキズ残ればオモテからガンガン叩く。こいつを繰り返す。これで終わりかとなれば、そうでない。凹んだ分、鉄板が伸びてしまっているため、平面にならないのだ。ジックリ見たら、確かに鉄板は波打っている。仕上げはオモテ面から尖った樹脂の棒で、出っ張った部分を叩く。こら高度なワザです!

凸凹を見ながらコスる


 驚くべき事に、そうこうしているとエクボが見えなくなってしまった。斉藤さんは「完全に直すことなど出来ませんけど、見えなくはなります」と言う。目を凝らせば塗装面のわずかなキズこそ見えるが、鉄板は平坦としか感じない。塗装面のキズも、及川氏によれば「2〜3ミクロンくらい。磨けば解らなくなる」。今回のエクボ、難易度にすれば10段階の7くらいとか。作業時間は1時間半程度。業者相手だと1万5千円くらいの仕事だと言う。
 デントが可能な凹みは1)塗装に剥げ無いこと。2)ボディの縁のような折り返し部分で無いことの2点。デントなら板金塗装と違って長時間経っても色が変わる心配をしなけていいのが嬉しい。難点は「上手な職人をどうやって探すか?」ということか?