「開腹手術」が一般的になる前まで、盲腸は致命的な病気だったろう。抗生物質の無い時代、肺炎すら一命を落とす危険性高い病気の一つとして恐れられた。お盆休みの渋滞の最後尾に居眠り運転の大型トレーラーが追突し、5人の尊い命を奪った事故を見て「トラック輸送も、医療で言う開腹手術や抗生物質のように抜本的な進化をしなければならない時期になったな」と強く感じた。トラックドライバーの根性論に頼っていたら、悲惨な事故など無くならないと思う。
 この事故の報道を見ていて一番驚くのは、どのメディアもトラック運転手の無謀な労働環境の悪さに焦点を当てている点。確かに労働環境の悪さは、事故の大きな要因になっている。でも十分な休憩時間があったとしても、人間眠くなるときはあります。それより「もし眠ってしまった時はどうする?」ということを考えなければならない時代になったんじゃなかろうか。いわゆる「フェイルセーフ」や「危機管理」と呼ばれるコンセプト。

 こらもう長時間運行を行う他の交通機関じゃ当たり前になっている。航空機は2人で操縦するし、食事だって絶対同じ物を食べない。食中毒で2人とも人事不省になったら困るからだ。一人で運転しているJRの場合、一定時間操作しないと、警告音の後、自動的にブレーキ掛かるシステムになっているそうな。極めて加害性の大きな大型トラックの安全性をドライバーに一任する、というのは無謀と考えるべき。人間のミスというのは無くならない。
 具体的にどうすべきか? 今まで技術的な解決策は無かった。JR方式など効果ありそうだけれど、常にハンドル握っているトラックじゃ「操作してない」の判断が出来ぬ。個人的に最も有効だと思うのは、シーマで実用化した技術の流用である。ミリ波レーダーとCCDカメラ組み合わせ、常時前方を監視するというもの。もし進行方向に障害物を発見したなら、警告音を鳴らし、ギリギリのタイミングで自動ブレーキ掛ければよかろう。技術的には簡単だ。

 シーマに使われているミリ波レーダーは、雨でも霧でも夜でも前方200mくらいまでの情報が入ってくる。どんな情報かと言うと、前にある「物体」との車速差です。つまり遠ざかっていく速度、近づいてくる速度、さらに動いているのか停止しているのかまで解ってしまう。渋滞の最後尾の判別など朝飯前。一方、人間の目の解像能力に似ているCCDカメラを使うと、車線を判断可能。レーダー+CCDカメラで、200m先の情報がクルマに入ってくるワケ。
 さて、来年9月から大型トラックに90kmで作動する速度リミッターの装着が義務づけられることは御存知だと思う。時速90km=秒速25m。渋滞の最後尾を感知してから、衝突まで8秒もある。90kmからの停止距離を50mと考えれば、6秒。渋滞の最後尾を感知し、2秒間やさしい警報鳴らし、その後の2秒で大きめの警告音。さらに無視したら2秒間サイレン鳴らし、50m時点で自動ブレーキ掛けるといった手順を踏むと、安全に停止出来ます。

 また、悪天候で視界悪いなら、CCDカメラからの情報を元に自主的な速度規制を掛けることも簡単。このシステム、一昔前ならコスト的に「てんで実現不可能」だったろう。技術の進歩って偉大だ! 今や30万円も掛からない(間もなく緊急停止機能こそ付かないものの、潜在的能力有す装置を30万円程度でオプション設定する車種が出る)。なるべく早い時期に緊急停止機能を大型トラックに標準設定すべき。放置するなら国交省の重大な失態だと思う。