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《クラウン試乗インプレッション》

 ●クラウンの原点回帰は今後のトヨタFRの方向性を示している

○時代の変化に対するトヨタの答えがゼロ・クラウンなのだ

 クラウンといえば「お年寄りのクルマ」というイメージが強い。実際、ユーザーの平均年齢は60歳に達している。若い年齢層にとってみると、アメリカ車のようなフワフワな乗り心地のクラウンより、ベンツやBMWといったドイツ車風の乗り味がいい、ということなんだろう。トヨタも事情を理解しており、クラウンのフルモデルチェンジにあたり、ガラリとイメージを変えてきた。

 トヨタの気持ちはカタログの1ページ目を開くとハッキリ出ている。クラウンという車名でなく『ゼロ・クラウン』と書いてあるのだ。宣伝もゼロ・クラウンと言っているため、車名が変わったとカン違いしている人まで出てくるほど。開発担当者に聞くと「新しいクラウンを創造する気持ちで取り組みました」。簡単に言えば「アメリカ車からドイツ車に模範を切り替えた」ということになろう。
 例えば乗り心地。初代クラウンがデビューした当時の高級車はシボレーやキャデラックといったアメリカ車。ガタガタ揺すられるトラックのような乗り心地の国産車からすれば、雲の絨毯のようだったろう。当然クラウンもフワフワな乗り心地を開発目標とした。インテリアやシートだってソフトなファブリック(布)を多用。かくして憧れのアメリカ車に近い日本の高級車が生まれたのだ。


 しかし時代は変わる。道路の舗装率が高くなり、走行スピードも上がってくると、車体を思い通り操る必要が出てきた。特に日本の道は狭く、高速道路でさえ曲がりくねっているため、アメリカ車のように「走行する場所が30cmずれても問題ない」では不満。日本のような道路事情で快適に走れるヨーロッパ車に乗ってみると、予想以上に運転しやすい。
 そんなことからアメリカ車に対する憧れの無い世代は、こぞってヨーロッパ車風の乗り味を求めたのだ。だからこそキャデラックやリンカーンは売れなくなり、ドイツ製高級車が人気になったワケ。クラウンも「もはやこれまで」と観念したのだろう。ハッキリとベンツ、BMWをターゲットとしてきた。開発目標を定めた時のトヨタは強い。今までのシャシやエンジンを全て捨て、ゼロから開発したのである。

○今までのクラウンのイメージを覆す乗り味に驚き!

 試乗車は最上級グレードである3リッターのロイヤルサルーンG。夜間に歩行者の姿が見えるナイトビューや、マークレビンソンのオーディオなどは付かないものの、ナビゲーションまで標準装備で470万円。価格からすればBMW525i(Gと同等の装備内容で570万円)に100万円まで迫った。また、試乗車はナイトビューなどフルオプションだったこともあり、570万円というプライスタッグ。もはや国際商品と考えていいんじゃなかろうか。お客さんも当然BMWやベンツをライバルとして意識してると思う。以下、私も志(ココロザシ)高く評価してみたい。
 エクステリアとインテリアの評価は後回しにして試乗と行こう! Dレンジをセレクトして走り出すと、おお! もはや国沢光宏は驚いてしまっている。エンジンも足もステアリングフィールも今までクラウンと全然違う。これまでのクラウン、イメージで言えば「ぐにゃぐにゃの集合体」だった。ハンドルと路面の間にゃゴムみたいな物体が介在し、エンジンもアクセルと連動していない感じ。エンジン音すら、防音壁みたいなもので防げなかったものだけ聞こえてくる。なのに新型クラウンときたら全てダイレクトなのだ。乗り心地を重視しているだろうロイヤルサルーンでもそう。

○ドライバビリティも秀逸

 アクセル開ければ開けた分だけパワー出る。ハンドル切っても、切った分だけ曲がってくれる。サスペンションは決してソフトでないけれど、しっかりストローク。それでいてコーナー攻めたってビシッとしてるのだからタイしたもの。無論、若向きのスポーツカーのような粗い乗り心地にはなっていないし、高速安定性だって従来型クラウンの比じゃない。完全にヨーロッパ車と並んだと言ってよかろう。ベンツEクラスとドッチがいいのさ、と聞かれたら「ブレーキフィールを除けばクラウンかもしれないぞぅ!」と答えてしまいそう。BMWと比べてもエンジンで優勢。こう書くと「ホントかね?」と思うだろうが、乗った私自身びっくりしてるんだから間違いなし。クラウンって根本的に進化したと考えてよかろう。


 スポーティな『アスリート』のハンドルを握ると、ロイヤルサルーンの味のまま、一段とスポーティになっている。ロイヤルサルーンをベンツ風とすれば、BMW風。ここまでハード面をグレードアップさせたのなら、いっそデザインも国際商品になるようにして欲しいとさえ思ってしまうほど。クラウンとしちゃ新しいけれど、BMWに張り合えるくらいにしたらもっと魅力出たろう。

 素晴らしいイメージ持ちながらスポーティな味付けの3リッターアスリートのGパッケージに乗り換える。こちらは18インチタイヤと本革シートが加わり490万円。走り出すと、あらら? ロイヤルサルーンGより雰囲気良くない。エンジンこそ同じながら、ブレーキ掛けたときのバランスやコーナリングが全然違う。後で調べて貰ったら、どうやら初期ロット特有のバラつきとのこと。この試乗車にしか乗らないでアスリートの評価をすると「落ち着きが足りない」となってしまうだろう。後で紹介するけれど、このあたりに新型クラウンの難しさがあると思う。

 どうやら本来の仕上がりじゃなさそうなので、2,5リッターのアスリートに乗る。このエンジンも新しく、大いに気になっていた。走り出すと十分なパワーじゃないの! 0〜100km加速タイムで3リッターより1秒くらい遅いということだが、従来型クラウンの3リッターと同等のデータらしい。これまたBMWの2,5リッターやベンツの2,6リッターと勝負しても全然負けておらず。新しいV6、パワー出てるのだ。ナビと本革シート、6速ATじゃなくなるものの、350万円というフレンドリィな価格になってくる。同じ性能の従来型3リッターと比べればお買い得か。


 肝心のハンドリングだが、ロイヤルサルーンの味付けのままスポーティにしたと思えばよかろう。18インチタイヤを履いているにも関わらず、路面からのハーシュネスは驚くほど少ない。日本製ダンパー(カヤバ製とのこと)としちゃ極上のしなやさかさである。ステアリング系の剛性感の高さも特筆してよかろう。センター付近のレスポンスこそイマイチだったが(使っている素材の関係上、2千kmくらいまでフリクション残るそうな。走れば良くなると言う)、切り始めるとトヨタ車と思えないライントレース性。狙ったラインにピタリと乗るのだ。

 ロイヤルサルーンをベンツ風とすれば、BMW風。ここまでハード面をグレードアップさせたのなら、いっそデザインも国際商品になるようにして欲しいとさえ思ってしまうほど。クラウンとしちゃ新しいけれど、BMWに張り合えるくらいにしたらもっと魅力出たろう。正統派の良いクルマであります。

○今後のトヨタFRを占うであろうシャシはどうか?

 言うまでもなく新型クラウンに使われたシャシ(車台とも言う)は、ブランニュー。初デビューである。日産のFMプラットフォームみたいなもので、今後マーク2クラスからマジェスタトヨタ売れ筋FR車全てに使われると考えてよかろう。したがって良ければトヨタのFRが大いに期待できるし、イマイチだとガッカリといった具合。結論から書くと「大いに期待してよろしい!」です。何を根拠にそう判断したか? こらもう簡単。一発目のクラウンにして、良いブブンをたくさん感じさせてくれたから。


 中でも気に入ったのは、ステアリングインフォメーションと、サスペンション回りのフリクションの少なさ、そして限界特性である。ステアリングフィール出すのが難しい電動パワステを使っているのだけれど、予想していた以上のインフォメーション持つ。ハッキリと路面からの情報を伝えてくれる、と言い換えてもよかろう。おそらくステアリングラックの取り付け部や、ステアリング機構そのものの剛性を上げたんだと思う。どこからもヨジれる感じが伝わってこない。
 トヨタのエンジニアに聞くと「従来のシャシやエンジンを使う限りベンツやBMWに届きません。根本的な設計思想からして変えないとダメです」。具体的に言うと、ハンドル関係の部品は2、5倍くらいの強度を持つそうな。今までだとフルモデルチェンジで10%とか20%の向上だったのだけれど、そんなレベルじゃ全く追いつかないほどドイツ車は凄かったということだろう。

 サスペンションのしなやかな動きも印象に残った。トヨタってダンパーの使い方が上手。ホンダは素性良いショーワのダンパーを使えるため普通の使い方でも質感出せる。しかし必要以上の耐久性を追求したトヨタの基準で、しなやかな味出そうとすると”工夫”を必要とする。だからヴィッツと同じスペックのカヤバ製ダンパーを工夫せず使ったフィットの乗り心地、カタいです。クラウンに乗ると、ヨーロッパのダンパーみたい。カヤバも頑張ったろうけれど、基本設計からして優れてるんじゃなかろうか。

○新型V6エンジンの出来は上々
 シャシ以上にホメたいのがエンジン。トヨタのエンジン開発担当者に聞くと「トヨタのエンジンと思えない、と言われることを目標に頑張ってきました」。悲しいことに私、術中にハマッてしまいました。「どうですか?」と聞かれ「トヨタのエンジンじゃないみたいです」って答えちゃったんですね。しくしく。どこがトヨタらしくないと言うと、絶対的なパワー。普通のトヨタ製エンジンに共通するのは「ホントにそんなパワーあるの?」という点。同じ排気量なら、間違いなくドイツ車に負ける。
 
 従来型クラウンの3リッターと、BMWの3リッターを比べたら、どんなトヨタ贔屓だって「負けてる」と感じるハズ。明らかにトヨタよりBMWの方がパワーあったのだ。トヨタの実験部のヒトも皆さんそう言ってました。でも新しいV6は全然負けていない。いや、勝っているとさえ思う。日本の規制や認可の関係でアクセル開度とトルクの出し方の関係が異なるけれど(BMWはアクセルペダル少ししか踏まない状態でもスロットルを大き目に開けている)、甲乙付け難し。これは既存をエンジンを改良しても無理で、基本設計から見直し、レーシングエンジンを開発するような理念を織り込まないとできないレベル。確かにゼロ・クラウンであると主張する気持ちは解る。

○お買い得なベストグレードは?

 最初に迷うのは、ロイヤルサルーンかアスリートか、だと思う。「えいやっ!」で分けてしまえば、BMWっぽいアスリートに対しロイヤルサルーンがベンツ風である。個人的にゃトヨタってベンツのような方向性持つメーカーのように感じるから、似合うのはロイヤルサルーンのような気がします。しかも新型クラウンならロイヤルサルーンでも足回りに不満無し! むしろしっとりした味わいで、日本製の高級車らしい。こらもう個人の好みで決めればよろしいかと。


 次なる迷いがグレード。もし御予算ふんだんにあるなら、四の五の言わず最上級グレードのを選ぶべし。クラウンの正しい買い方だと思う。でもコストパフォーマンスで決めれば、2番目のグレードをすすめておく。ロイヤルサルーンの場合、3リッターは400万円。2,5リッターを選ぶと340万円になるも、35万円のナビゲーションと6万円のサイドエアバッグが落ちてしまう。つまり3リッターエンジン+6速AT分は19万円ということ。この価格差なら3リッターでしょう!
 ロイヤルサルーンGになると、さらに70万円高。違いを探してみたら、決定的な装備差が見あたらぬ。簡易型プリクラッシュセーフティ(急ブレーキ踏むとシートベルトを張るといったパッシブタイプ。ホンダの追突低減ブレーキに遠く及ばず)や、ハンドル切るとヘッドライトの向きが変わるAFSくらい。Gにのみナイトビジョンを付けられるけれど、30万円もする。安全性確保に絶大な効果持つミリ波レーダー式プリクラあればGをすすめるが、現状だと魅力薄。

 アスリートも同じ傾向ながら、3リッターと2,5リッターの価格差は、なぜかロイヤルサルーンの60万円に対し70万円。したがって排気量差+6速AT分は29万円となる。こら不思議。したがってアスリートの方が2,5リッターを選ぶ意味大きいということ。350万円のアスリートにお好みのナビを付けるという作戦も悪くないと思う。ちなみにロイヤルサルーンもアスリートも、ナビ付きのモデルはレスオプションが可能で27万5千円安くしてくれる。


 また、ロイヤルサルーンにのみ4WD仕様をラインナップ。試乗してみると、先代モデルより圧倒的にレベル高い。FRだと言われれば、気付かないかも。聞けば先代は前輪用のドライブシャフトを通すため、相当サスペンションを無理な配置していたとのこと。だから妙な乗り味になってしまっていたらしい。新型はFRと同じレイアウトになり、無理も無くなったそうな。車重だって70?増に留めた。35万円高でこの4WDが買えるなら、雪の降る地域の人にとっちゃ魅力的でしょう。