ジツは隠れキャデラックファンである。アメ車の中でもキャデラックだけいろんな点で突出していると思う。まず個性。今回紹介するドゥビル(デビル、でない)、コンコースと呼ばれていた先代モデルより一回りコンパクトになったものの、依然として全長5260o×全幅1900oある。デカ過ぎると言われ続けた旧型ベンツSクラスのロングボディでさえ5213o×1886oだもの。これだけ大きなボディを気軽に作ってしまうアメリカ人は凄い!
伝統的に信頼性も高かったりして。アメ車の品質がガタガタになった70年代から80年代に掛けても、キャデラックだけトラブル少なかった。おそらくGMもキャデラックをいろんな意味で優遇していたんだと思う。今まで試乗したキャデラックの中で「こりゃひどい!」と感じたのは、ベビーキャデラックと呼ばれる小さなモデルのみ。古いクルマ好きだと『シマロン』なる箸にも棒にも引っかからないようなキャデラック、覚えていることだろう。フルサイズのキャデラックは、常にアメ車の良心だった。
その良心、長い間日本じゃ反映されてなかったと思う。誰が決めたのか知らないけれど、信じられないないくらいの価格設定。アメリカの倍以上のプライスを付けていたんだから。キャデラック=高級車というイメージが、戦争で負け占領された日本人に染みついていたんだと思う。90年代に入ると値下げを繰り返し、今やセルシオと変わらないような価格帯に。キャデラックの最高級車であるドゥビルは、フル装備で699万円。セルシオの最高級グレードが670万円だ。
ウンチクはこのあたりにして紹介に入ろう。ドゥビルはコンコースの後継車として企画されたもので、ドライバーズカー&カジュアルな『セビル』シリーズと違いフォーマル。クラウンとマジェスタの関係だと思えばよろしいです。ボディサイズもセビルより一回り大きい(コンコースより小さくなった)。若干違和感あるフロントマスクがデザイン上の特徴。目がデカいウーパールーパのようなイメージながら、見慣れると悪くない。ワタシは積極的に好きである。
エンジンはセビルと同じV8の4,6リッターで最高出力279馬力。必要かつ十分なパワーといえよう。ベンツS500に匹敵する加速性能持つ。やっぱり高級車って、その気になった時はキッチリ走って欲しいもの。一方、高級車としてイレギュラーなのがFFという駆動方式。FFの大パワーエンジン搭載車というのは、アクセル大きく開けた時にハンドル取られたり、フロントが重いのでハンドリングのバランスを取りにくかったりと、悪いクセ多くあまり好まれない。
そこで『ノーススター』なる総合的なエンジン制御システムが考えられた。エンジンやABS、サスペンション、パワステなどに使われているコンピュターをリンクし、連携してコントロールするもの。中でもスタビリトラックと呼ばれる『車体安定性制御機能』はよく出来ている。考え方としてはトヨタのVSCやベンツのEPSと同じスピン防止装置なんだけれど、FFの弱点をカバーするような仕掛け(アンダーステアを消す)もあったりして興味深い。乗るたびに「アメ車のクセにヤルなぁ!」と思う。
個人的に好きなのが乗り味。ドイツ製高級車のように堅くなく、日本製高級車より一段とソフト。同じキャデラックでもセビルの『STS』はドイツ車的だけど、ドゥビルときたらアメ車のイメージそのまんま! 荒れた路面を走ると、車体全部が船のように上下動する。こう書くと「そらフワフワやんか!」と思っちゃう? そうでないのだ。細かい衝撃は全てサスペンションで吸収。車体だけ優雅に上下動する感じ。恥ずかしながらワタシの文章力だと表現できぬ。
オーディオ抜群によろしい! 新型ベンツのSクラスもBOSEを使っているけど、アメリカ人からすれば圧倒的にパワー不足。ボリューム上げた時、音圧を感じないとダメだ。以前調べてみたら、パワーが全然違う。確かSクラスはアンプ出力300Wなかった。500Wくらいあるキャデラックと比較にならん。特にシンセサイザー音源が多いポップスなど聞くと、ドゥビルのBOSEはシビれます。降りたくなくなるくらいイケてる。ウソだと思ったら、一度好きなCD持ってヤナセに行き、大音量で聞いて欲しい。
インテリアも好きだ。コテコテのウッド調パネルに、アメリカらしい厚くてソフトな革をふんだんに使ったシート(革はオプション)。これくらいノンビリした居住空間を持つクルマは無いと思う。高速道路で90qくらいにオートクルーズをセット。BOSEのオーディオ聞きながら、コーヒーなど飲みつつ走る。これやったら、もはや病みつきでしょう! 699万円ないヒトは596万円でドゥビルみたいな味の『セビルSLS』といったモデルもあります。