MOVE LATTE

ダイハツ工業

ムーブ ラテ

平成16年9月3日

《ムーブ ラテ試乗レポート》

●ミルクは隠し味じゃありません

 ムーブ・ラテというネーミングが示す通り、このクルマのベースがMOVEであることはいまさら説明するまでもないだろう。かく言うボクも試乗する前は「ムーブの見た目をかわいくしたのね」と、単純な“衣替え”程度の認識を持っていた。しかしである。いざ乗ってみると、ボクの浅はかな認識は大きな間違えだったと大反省。走行性能という“実”の部分もしっかり磨かれた、開発意欲の高いクルマだったのだ。

 室内空間やシートアレンジなどはムーブと同様なので、以下走りの洗練度を中心に話しを進めていこうと思います。

キャラクターカラーはバナナシェイク サイドミラー内臓のウィンカーは軽自動車初

○マイチェン後MOVEの走りが見えたかも

山崎(以下 山) ムーブ・ラテに試乗してきました。

国沢(以下 国) 20歳代から30歳代前半の独身女性に対するアピール度高いクルマらしいけど、普通のムーブと違ってた? 

山 ラテ(イタリア語でミルク)って言うくらいですし、見た目も思いっきりファニーですからてっきりマイルド指向かと思ってたんですけど、その反対で、これまでのムーブシリーズよりずっとしっかりしてます。もちろん、エアロダウンカスタムみたいにガチガチじゃないですよ。

国 ムーブ特有の常にアンダーステアなハンドリングはどうだった?

山 特性としては相変わらずアンダーステアです。ただ、ロール剛性が確実にアップしていますから、傾きこそ大きいんですけど良くできたリッターカー並の安定感でした。

さすがにロールは大きめだが極めて安定指向です

国 もう少しニュートラルステアなら楽しいんだけどねぇ。まあ、一般女性をターゲットとしてるなら、アンダーステア気味の方がスピンしたりする危険性少ないけどさ。

山 でも、直進安定性なんかはバツグンに良かったです。結構速いペースで流れている片側2車線の道路でレーンチェンジしてみたんですけど、ワダチに足元をすくわれるようなこともありませんでした。

国 具体的にはどのあたりを変更したワケ? ま、シャーシは変わらずだからサスペンションの味付けを変えるくらいしかできないだろうけど・・・。

山 その通りです。ターボもNAも全て同じ足回りなんですけど、前後のダンパーの減衰力を上げて、コシのある挙動になるようにチューニングしたそうです。特にリアに関しては、ケース自体も拡大してオイル量を多くしたことで、微少入力域から安定した減衰力を発生できるようになったみたいですね。(バネレートは変更なし)

国 それがホントなら道路の継ぎ目なんか通過してもヒラリといなせそうだけど、試してみた?

山 もちろんやってみました。継ぎ目については、突起になってるような所じゃなければ全く問題なしのレベルだと思います。石畳の上のような連続した細かな凹凸には多少コトコトと振動しちゃいますけど、決して不快じゃないですよ。実はボディ剛性も多少上がってるらしいので、それもサスペンションをスムーズに動かす要因になってると思います。

売れ筋となるであろう『X(エックス)』 14インチアルミホイールはOP

国 ほとんどマイナーチェンジ並だね。単なる派生モデルじゃないんだ。

山 そうなんですよ。ボディ剛性については何%っていう明確な数字はないんですけど、設計段階でアップすることは分かったみたいです。ピラーの形状なんかが変わったことで、主に上体の剛性が確保できたという話しですね。

国 副産物と言ったらそれまでだけど、見かけ倒しじゃないってことの証明にもなるよ。

山 社内的には新車を作るくらい多くの人が関わったと聞いてますから、気合い入ってると思いますよ。おそらく、ムーブがマイナーチェンジするときはラテの足回りを採用するハズです。従来品の在庫がなくなり次第、ラテと同じモノに一斉に切り替わる可能性もあるというハナシも耳にしましたし・・・。

国 ということは、今ムーブを買おうとしているなら「ちょっと待った!」ってことになるね。ラテと乗り比べて乗り味が大きく異なるようだったら、もう少し時間をおいた方がいいかも知れない。ベーシックグレードの『X』同士を比べても価格にほとんど差がないんだから、待てるならより進化した方を買うべきだよ。

○ATのテコ入れで加速力と燃費がアップ

国 資料見るとラテの売れ筋グレードであろう『X』はムーブの『X』と同じ車重の4速ATなのに燃費良くなってるね。ラテ:19.4km/L、ムーブ19.2km/L)

山 それも忘れちゃいけない大きなポイントです。『X』を初めとする2WDのNAモデルについては燃費と加速性能の向上を図ってミッションをいじってます。ただ、ちょっとビックリしたんですけど、燃費良くするためにギア比を上げたんだと思っていたら、逆にローギアー度化してるんですよ。

国 今までのギア比より全てにおいてマッチングが良いギアがあったってこと?

山 タントのNAモデルです。車重が増えてしまったタント用に開発したファイナルギアを組み込んで、変速タイミングを最適化したら、加速が良くなり、しかも少ないアクセル開度で走れるようになったということですね。まさに一石二鳥ってヤツです。

国 ターボのRSだってムーブカスタムのRS系より0.6km/Lも良くなってるね。(ラテ:18.6km/L、カスタム:18.0km/L)

山 ターボ系はギア比こそ変更ないんですけど、もともと電子制御の4速ATを搭載してますから、それをより賢い制御にしたということでした。実際、鋭い反応とショックの少ない変速を両立していて、しかもロックアップしている状態からアクセルを離すと自然なエンジンブレーキがかかったりします。従来型の機械式ATを搭載するNAより自然で好印象でした。

より上質な走りを求めるならターボエンジン搭載車がベター

国 車重もラテの方が20kg軽いから有利だろうけど、剛性上げたうえでの軽量化だって簡単じゃない。やることキッチリやってきてるね。月販目標台数5000台ってちょっと消極的なんじゃない。

山 まあスタイルからしてターゲットがある程度限定されちゃうんじゃないかという読みだと思いますけど、オーソドックスなカラーリングを選べばそれほど女の子グルマには見えない感じなので、意外に広いユーザーを獲得できるかも知れません。

○一歩先行く快適空間

国 プラズマクラスターエアコンやクリーンエアフィルターなどは(どちらもL以外全車標準装備)車内の清潔感に気を使う人にとっちゃポイント高いと思うよ。特に女性は気になる部分だろうけど、こういう気配りによって赤ちゃんから年配の方まで全てのヒトが気持ちよく移動できるんだからね。

室内空間の広さはムーブの真骨頂 小物入れにも工夫の跡が見られます

山 シート表皮やクッションなんかも肌触りのいいものを取り入れてますし、インテリアのデザインも外観に負けないくらい個性的です。触れてみれば単に可愛らしさを狙ったクルマではなく、「おおらか新スペース」という開発コンセプトをしっかり実現していることが分かると思います。それと、かなりコストをかけて防音対策を行っているので、一般的なスピードで流している限り軽自動車としてはナンバーワンじゃないかと思えるくらい静粛性も高いです。社内試験の結果でもライフやワゴンRといったライバルより優秀な結果だったそうですから。

国 デザインコンセプトの違いをアピールする軽自動車には他にR2やラパンなんかもあるけど、考えてみるとラテみたいな背の高いスペース重視スタイルのクルマってちょうど空席状態だったかも。プレオのニコット以来かな〜。完成度も高そうだしタイミングいいと思うよ。

RSのインパネ周り ナビはもう一段上に装着することも可能

山 こういうクルマをきちんとまとめてくるあたりをみるとダイハツってとっても意欲のある会社だと思います。実はラテのインパネオプションには木目調なんかもあって「ミラジーノみたいですね」って質問したら「いずれ分かりますよ」というお答えを頂きました。間違いなく「期待しててください」というようなニュアンスのそぶりだったので、おそらくそう遠くないうちにミラジーノのモデルチェンジ(03年の東京モーターショーで展示されていた『XL−C』か? インパネ周りのデザインは激似!)があるでしょうね。

国 思い返してみると、軽自動車が新規格(現行規格)になったとき真っ先にムーブを発表したのがダイハツだった。初めて見たときは、軽自動車も遂にリッタッカー並の質感になったなぁと感心したもんだけど、ムーブの登場によって軽自動車の質感争いが激化したのも事実。もはやクオリティの高さは当たり前になった今、ヒット商品を生み出すにはオリジナリティの高さとユーザーの声を取り入れた開発姿勢しかないと思う。ダイハツはラテで競合他社にまたもや先手を打ったかもしれないよ。

○味の決め手はミルクなんです

 このほか、ラテにはエンジン始動直後から触媒の活性を引き上げることのできる「触媒早期活性化システム(ダイハツが独自開発)」が世界で初めて採用されたり、ムーブより大きく進化した歩行者傷害軽減ボディであったりと、ここでは紹介しきれないほど多くのトピックスが盛り込まれている。軽自動車を検討中なら一度実車をじっくり観察してみて欲しい。あくまでムーブ“ラテ”というサブネーム扱いだが、ファーストネームがつかなければ全くの新型車と言っても通じるのではないかと思うくらい洗練されているのだ。悲しいかな、ムーブの登録台数底上げのための苦策だったのかもしれないですけど・・・。

Report:山崎 裕正