ほとんどの読者は『ベンツよりBMWの方がハンドリングは上』と思っているのではなかろうか? 何を隠そうこれを書いている自分自身、ベンツを買うまで(ミディアムで一番安い230E)そう信じていた。
ところが、だ。想像に反しベンツのハンドリングは相当なものである。230Eなどは、エンジンが軽いためか高速コーナーを攻めると見事なニュートラルステア。タイトターンでもアンダーステアは軽微で、コーナリングスピードはBMW5シリーズより速いくらいだ。
うーん、と考え込んだボクは今年の3月、560SELで箱根を思いきり攻めてみた。結果はというと、読者諸兄には信じてもらえないかもしれないが、大カウンター大会が楽しめてしまったのだ! カメラマンによると、あの長いボディが横を向く迫力は拍手モノだったそうな。ウワサではショートホイールベースの560SEだとさらに楽しいらしい。
脱線してしまったが、今回乗ったのはハンドリングの良さで定評のあるBMWM−3のライバル、190E2,5−16エボリューションである。こいつはベンツきってのコーナリングマシーンといわれている。
カーステーションの読者なら説明するまでもないが、このクルマはベンツがグループAレースで勝利するために作ったスペシャルバージョンなのだ。
レースの規則が変わってグループAレースが始まった当初、ベンツは2、3−16というモデルを登場させ、勝ちまくっていた。ところがBMWがオーバーフェンダーを付け、空力を向上させたトランクを持つM−3を発表。レースに参戦してくるやベンツは連敗に次ぐ連敗。面目まる潰れになってしまった。
この事態にプッツンしたベンツは、名門チューナーであるコスワースをプッシュして排気量を拡大。さらにワイドタイアが履けるようにオーバーフェンダーを取り付け、空力を向上させるため暴走族も顔負けのでかいリアスポイラーを装着したモデルを500台生産した。それが今回試乗したエボリューションモデルである。
説明はこのあたりにして、まずは試乗してみよう。インパネはほとんど190Eと同じ。ややバケット気味の本革シートと、7200回転から始まるタコメーターくらいしか特徴はない。
シフトパターンは手前の下が1速というスポーツ走行に適したもの(2速と3速間が直線でシフト出来る)。シフトフィールはゴリゴリしてお世辞にもいいとはいえないのが意外だ。
クラッチをミートすると、エンスト。思っていた以上に高回転を好むエンジン性格らしい。試乗車が新車ということもあって、1速は5千回転までにし、2速にシフトしてから高回転の様子を探ってみたが、やはり本格的なパワーバンドに入るのは5千回転を過ぎてから。
以前、充分慣らしの済んだエボリューションに試乗した大先輩の浅岡氏によると、5千回転からレッドゾーンの始まる7200回転までまったくフリクションがなく回りきったそうだ。今回も後半に一度だけ7千回転近くまで回してみたが、あまりにスムースなので気が抜けた。
なんでもこのエンジンはコスワースが一台ずつ入念に組み上げるそうで、バランスシャフトも持たない大排気量の4気筒が「シューン!」と回る様子は見事なもの。
お次はいよいよコーナリングだ。最初は様子見程度とし、タイアが鳴くくらいのスピードで攻めてみる。とはいえ、タイアは225/50ZR16というヘビーなもの。これでも普通のクルマなら飛び出してしまうくらいのスピードだ。
ここで攻めるのをやめて偉そうなことをいってはベンツの開発担当者に悪いので、いよいよ本気でアクセルをオープンにしようではないか!
最初のコーナーは右。絶対曲がれないだろうな、というくらいのスピードでアプローチする(20キロ×8くらいの速度)。ギリギリまでブレーキを我慢し、フル制動! ボディにはオーバークオリティとも思えるブレーキは、まるで背中を引っ張られる感じで速度を殺していく。
すると何の事はない。コーナーの手前で減速を終了してしまったのだ。こうなるとクルマにナメられたような気がしてシオシオのパーである。
次のコーナーは気を取り直し、さらに奥まで突っ込んだのはもちろんだ。今度はうまくいき、かなりのスピードでコーナーに進入(M−3だったら絶対テールが流れるくらいの速度)したが、それでもクルマは姿勢を崩さずコーナーをクリア。225サイズのタイアは伊達ではなさそうだ。
後はもう頭のネジを飛ばして全開だ。で、その結果スピードを上げていくとどうなるかというと解ったのだが、このクルマ、さんざん粘った末にスパッとテールが流れるのだった。しかも限界はかなり高いので、ハイレベルの腕がないとコントロールは難しそう。
でも一度乗りこなしてしまえば、ドライバーの思うままに反応し、これほど面白いクルマはないように思う。ということで、こいつを手にいれたらサーキットなどで練習し、テクニックもエボリューション(進化)させるとよろしい。