『くるまにあ』読者の反応を見ていると、ベンツってカンペキに好き嫌いが分かれるみたいね。半分くらいのヒトはベンツ特集をやると喜び、半分くらい「ベンツばかり扱いやがって!」だもの。とは言えクルマ好きにとってみると、一度くらいベンツに乗ってみたいかもしれぬ。ナニを隠そうワタシですらW124なんぞ買ってみたりしたことがある。面白いことにオーナーになってからも「二度とベンツなんな乗りたくねぇ!」と「オレの求めてたクルマはこれなんだぁぁぁぁ!」に二分されるようだ。
今回担当したのは190Eの後継車、Cクラスざます。このモデル、94年に日本デビューした。と言うことは97年あたりから1回目の車検を迎えるため、そろそろ中古車としての流通量が増えてくる時期に差し掛かるワケ。実際、中古車市場の動きやオークションの出展車をチェックしていると、11月あたりからCクラスの動きが目立っている。今年の春くらいになれば、さらに買いやすい車種になると思う。となれば当然のこととしてバイヤーズガイドをせねばなるまい。
最初にサックリとCクラスについて解説しておこう。198*年、190Eなるコンパクトクラスをリリースしたベンツは、予想外の成功を収めると同時に、商売の難しさを知る。売れたけれど、思ったより儲からないのだった。高い価格が付けらない小型車を、Sクラスと同じようなクオリティで作ったんだから無理もない。そこでベンツは考えたね。「次はコストダウンの努力をすればいい」と。そんなバックボーンから開発されたのが、Cクラスである。
現行Eクラスが旧Eクラスと比べ激しく安っぽいのと同じく、Cクラスは190Eより物足りない感じがしてならない。いや、正確に表現するなら、190Eで感じる”過剰品質感”がCクラスにはないのだ。それでも同じクラスのライバル車より高い完成度を持っているあたりがベンツの実力か? BMW3シリーズより2ランク上の品質から、1ランク上にダウンしただけ。依然として3シリーズよりは高いクオリティを持っている。ただ新興イケイケ勢力のアウディA4あたりには並ばれてしまった。
また衝突安全性という点からすると、過大な期待はもたないこと。『ユーロNキャップ』による64qからのオフセットクラッシュテストの成績は「がんばりましょう」の星二つ。「大変よくできました」星四つのボルボ40シリーズよりググッと劣るだけでなく、日産プリメーラの「まぁ合格です」星三つに負けた。トヨタはGOAのコロナと実車衝突させたようだが、その時の結果も芳しくなかったそうな。性能や安全性の高さでベンツを選ぶ時代は190Eで終わったと思うこと。
しかしながらCクラスの魅力度は大きい。佳き時代のベンツを知らなければCクラスの質感でも感動するだろうし、乗った瞬間から「こら普通のクルマとチャウ!」と感じるハズ。次のCクラスになると、さらなるコストダウンもあり得る。Cクラスの後にデビューしたEクラスは、もうアカンくらい安っぽくなってもうた。となれば今のCクラスがホントに”最後のベンツ”かもしれない。一度くらいベンツに乗ってみたいと思っているなら、今年が狙い目かもね。
まずはCクラスのベーシックバージョンたるC200。136馬力の4気筒エンジンを搭載し、ヨーロッパ仕様の最高速は198qと発表されている。ただ実際にデータを取ると、205〜208qくらい出るようだ。おかしいぞ、と調べてみたら、例によって作為的な数字だということが判明した。ベンツのオキテじゃCクラスがEクラスより高い性能を持つことは許されないらしく「そらマズイ」とばかり同じエンジンを積むE200の最高速200qより低い数字にした模様。
ちなみに150馬力のC220は、C200と同じピストン径を持つエンジンを積み、210qという最高速をカタログに載せるけれど、これまた実測値だと213〜215qに達する。E220の実測値はカタログデータの210qを下回るから、やっぱりCクラスって速い。国沢光宏はナニを言いたいか? C200で十分に走りますよ、なのだ。BMW320iと比べると、加速でチョイと負け、最高速で気持ち勝つ感じ。エンジン自慢のBMWより速いのだから驚く。
装備は予想外に充実している。オートエアコンを始め、オーディオ、ABSなど全て標準。オートクルーズまで気前良く付いているあたりに好感が持てる。C280とC200の装備差は、パワーシートくらい。VWアウディグループなんざ、パサートはもちろん、A6にもオートクルーズが付かないという貧乏さ加減。おそらくVWアウディの装備を決める担当者は、ムカシからコストダウンしか考えない日本車のメーカーから入ってきたんだろう。こういった考え方にベンツの佳き時代を感じるな。
試乗車のコンディションは、案外と良かった。3万3千qという走行距離も正しい数値だろう(メーターの故障などで走行距離が解らなくなるケースもある)。190Eほどボディはガッシリしていないものの、他メーカーの車種と比べれば明らかに高い水準。3万qくらいでヘタりがくるワケないか。エンジンは絶好調といった雰囲気。ベンツの4気筒は1万qくらいから実力を発揮し始め、7〜8万q走っても性能低下を起こさない。オイル交換だけで元気に走れる。
足回りの性能低下をチェックしてみたが、これまた目立った現象が出ていない。タイヤのゴツゴツ感や、ダンパーのヘタリ感もないのだ。C200はソフト目のサスペンションだし、シャシ性能からすればパワーだって低め。無理していない分、ヘタリやヤレがくるのも遅いのかな? インテリアをキチンとクリーニングし、塗装の磨きだしをすれば新車のニオイを感じさえるくらいのコンディションに戻るだろう。事故の修復痕などもなく、3年落ちの中古車として考えると、まぁ標準的である。
問題は価格か? 今回撮影で使ったC200のプライスボードを見たら275万円。これでもC200の中じゃ最も安いのだが、やっぱし高め。新車価格390万円。値引きもあるので、370万円といったところ。9年乗るとすれば、1年当たりの消却は41万円。3年落ちなら123万円安の247万円が実力値。398万円だった同じ年式の320iは200〜230万円なのだ。今までは売り物が少なく実力以上に相場も高かったのだろう。もう少し安くなってくれば、と思う。
C280はCクラスの最強バージョン。2799tの直列6気筒193馬力を搭載し、例によってE280と同じ230qをカタログデータとする。実測値なら232〜235qといったところ。ちなみに同じエンジンを積むS280は、さすが同じ最高速とならず215qに留まる。新車時の価格は590万円と、C200より200万円も高い。800t/2気筒分のオネダンとして考えると、ムチャクチャな値付けながら「あるトコロからは徹底的取る」というのがベンツの基本コンセプトだから仕方ないか。
中古車相場はC200よりずっと納得できる。先ほどの計算式を当てはめると、現在の新車価格560万円÷9年=62万円が1年あたりの減価償却分(1年間のC280代金ということですね)。3年落ちの場合、6年分の価値が残っているから、62万円×6年=372万円以下なら中古車で買ってもトクをするという計算。果たして試乗車は348万円と、程度次第じゃ新車で買うより安くつくことが解る。C200より中古車のメリットは大きいということだ。
程度はどうか? 走行距離をチェックすると4万700q。3年落ちの中古車として考えると平均的な数値だろう。査定は1年=1万qを標準とするため、1万q分のマイナス査定になる。94年式C280の基本相場は370万円前後。したがって1万q分くらい安くなっているのだった。外観を調べてみると、まぁ走行距離と年式相当といった雰囲気。全体的に疲れた感じが出ているけれど、磨きに出せばシャッキリすると思う。これといったプラスポイントはない代わり、マイナス要因もなさそう。
インテリアも3年落ち中古車相応。新車のニオイは残っていない代わり、使い込んだという感覚もない。可もなし不可もなし、というクルマが最もヒョウロンしにくいな。特徴がないんだから。ベンツ自慢の硬いシートは4万qぐらいじゃヘコたれないようで、96年式から乗り換えても違和感なかった。ただ全般的に細かいゴミやホコリが溜まっているのが気になる。ワタシだったら、内装は全部クリーニングしてスミからスミまで掃除機を掛けるだろう。
エンジン/ミッション/ボディのコンディションもそれなり。新車と比べると、やっぱり全般的に緩くなったみたいなフィールだった。ATの変速ショックは少し出始めている。さすがのベンツも、4〜5万qくらいから徐々にヨレが出始めるのかもしれない。それでもパワーはキッチリと出てた。アクセル全開で加速したらホイールスピンしまくり。C280らしいパワフルな走りを堪能出来る。C200との価格差が70万円くらいなら、コッチの方が楽しめると思う。
足回りはそろそろ手入れが必要な状態。4万qになるとダンパーの効きも落ちてくるし、ブッシュやタイヤといったゴムの劣化が進む。具体的に言うとゴツゴツした乗り味になってくるのだ。撮影したクルマはタイヤとダンパーが交換時期に差し掛かるところ。買ったらタイヤ交換し、5万qくらいをメドにダンパーを換えてやりたい。そうすれば8万qくらいまで快適な乗り心地がキープ出来るだろう。ドイツ車のタイヤとダンパーは消耗部品だと割り切って欲しい。
Cクラスの初期登録車は93年秋に発売された94年式。その後、細かい改良を受けたものの。大きな変更はV6エンジンが搭載される97年まで無い。よって96年式のC280も、ほとんど94年式と同じスペックである。インテリアを見回しても、これといった違いを見つけることは出来なかった。参考までに書いておくと、撮影に使ったクルマは96年1月登録なので、取材日の97年12月から逆算すると丸々2年落ち。2年で2万9千q走ったということになる。
このあたりが年式表示の難しいところ。最初に登場したC200は94年12月登録だから、登録時点からすると3年しか経っていない(ベンツはイヤーモデル制を止めているので不明ながら、クルマとしちゃ95年モデルだったかも)。なのに方や94年式。こなた96年式とされてしまうのだ。考えようによっては、年末に登録されたクルマの方が安いと言うことですな。ま、クルマを買うときは、年末に登録しないようにしたいもの。ハナシがズレてしまった。
また1月登録というのは大変にビミョウ。年式落ちを叩き売りした可能性もある。いずれにしろ今回のC280は、94年式との目立った違いはない。走行距離の2万9千qは「けっこう乗りましたね」という距離。電車通勤している会社員だと、なかなかここまで伸びない。たぶん毎日通勤で使っていたか、高速道路をよく走ったかだろう。渋滞路を2万9千q走ったクルマはヘロヘロだけれど、日本の高速道路はクルマへの負担が非常に少ない。コンディションさえよければ、問題なしとしておこう。
ワタシは中古車を買うとき、必ず前のオーナーを想像する。乗り方によってクルマのコンディションが大きく変わるからだ。撮影車はズバリ高速道路を多用したヒト、と踏む。走行距離の割にインテリアはビシッと新車のムードを残すし、外観もモンク無し。実質的に1年しか違わない94年12月登録のC200と比べても、明らかに程度がいい。これで事故車じゃなければ、まぁ失敗することはないと思う。当然チェックしてみたが、修復歴も見あたらずタイコ判を押す。
エンジンや足回り関係も、ほとんど新車と変わらない状態。今回はV6になった98年式のC280を比較車として持っていったが、エンジンフィールなんか新車より良かったくらい。それにしてもV6は安っぽくってアカンなぁ。ベンツ最後になる直列6気筒を味わいたいなら、もはや中古車を買うしかないのだ。乗り心地やハンドリングも新車のまま。右ハンドル化による違和感は、94年式より格段に少なくなっている。最大の問題は418万円という飛び抜けた価格だろう。
中古車相場を調べてみたら、95年後期で380万円前後。走行3千qの1年落ち418万円というのもあった。ディーラー扱いの中古車という安心感はあるけれど、年式が新しければ普通の中古車屋サンで買っても心配ない。単に高いだけだと思う。それなら新車のC200や、V6を搭載する新型のC240(460万円)を値引かせて買うのも手。昨今の不景気で新車の売れ行きが悪く、けっこう引いてくれるのだ。いずれにしろCクラスの相場は大きく値下がり始めている。慌てて高い買い物をするのは損だと思う。
Cクラス全般的に言えるコトながら、やっぱし実力値以上に高いと思う。理由はたった一つ。人気の割に流通量が少ないからだ。Cクラスを買いたいヒト、を想像して欲しい。フトコロさえ暖かければ「ど〜んと新車で買ったろかい!」だと思う。でも「そこまでは無い」というなら、やむおえず中古車を考えるワな。するとどうだ! ほとんど流通していないかったりする。全国5千万読者を抱え、莫大なる発行部数の『くるまにあ』で探してみても、15〜20台くらいだろうか? 今回の撮影車探しにも苦労したらしい。
一方、Cクラスを買いたいと思ってるヒトはけっこう多いだろうから、カンペキに売り手市場となってしまうワケだな。ジツはこの状況、中古車業者にとってみると嬉しくないこと。なぜか? Cクラスのような人気車であれば、ドンドン売りたいのだ。実際、今年はCクラスが多数売買されるに違いない。でも現在の中古車相場は、あまりに高くてダメ。ここまで高いと、気軽に買えるレベルじゃないでしょ? 本文中にも書いた通り、C200など新車を買った方がトクなケースだって出てくるほど。
そんなことからCクラスを仕入れようとすると、予想外に高いモノになってしまう。オークションじゃネダンのセリ合いになるし、売る方も人気車だと思っているから安いネダンじゃ納得しない。つまり「売れるのは解っていても、仕入れも高いから利幅が上がらない」というジレンマを抱えてしまうという寸法。97年春くらいから、扱いたいけど高い、という膠着状況が続いていたのである。じゃ何で今年はCクラスなのか? これまた理由は簡単。中古車の流通量が激増しそうな雰囲気だからだ。
御存知の通りCクラスの新車はC200を中心に売れ行きが好調であった。3シリーズやゴルフに匹敵する販売台数を記録した月もあったくらい。もはや大ヒットと言えるだろう。その車種が3年目の車検を迎え、ドッと市場に流れ出す。さすがの不景気で、以前と比べれば乗り換えるユーザー比率も少なくなるかもしれないが、ベンツのユーザー層は安全性について敏感。ボルボより圧倒的に劣るテスト結果を見せつけられちゃタマらんでしょうなぁ。ワタシは相当な数の下取り車が発生すると思っている。Cクラスから高い安全基準をクリアしたCLKへの乗り換えなんかも多いか?
さて、今回乗ったクルマでどれが最も魅力的だったか? 価格を抜きに考えれば、やっぱしC200である。C280は速くて楽しいものの、ベンツにスポーティさを求めるのって、ちょっと違うと思うのだ。ベンツは偉大なる実用車。走りを楽しみたいなら、BMWあたりをプッシュする。C280は必要以上にお金のあるヒト向き。ベンツらしさということであれば、過不足ない走りを見せるC200にトドメを刺す。動力性能だって200qを軽く超えるんだから十分。
ややガックリしたのが新型V6。回転フィールときたら国産のV6みたいで、質感みたいなものは皆無に近い。シュンシュン回るだけなのだ。もし新車で買いたいというなら、今年はパスすること。V6のフィールに不満を持ってるのはワタシだけでないだろうから、来年モデルになると大幅に改善されると思う。いやいや。そうこうしてるウチ、衝突安全性を大幅に向上させた新型Cクラスが出ちゃうな。ま、新車を買おうとしているヒトも現行CクラスのV6はアッサリと諦め、コンディション抜群の中古C280あたりを買って新型が出るまで2年くらい乗って吉、です。