BMWと言えば3シリーズが身近な存在。でも予算さえ何とかなれば「いつかは7シリーズ」であろう。BMWセダンのフラッグシップだけあって、味も濃い濃い。セルシオとも違う。ベンツSクラスとも違う。ジャガーとも違うクルマに仕上がっているのだった。今回は8気筒エンジンを全面的に見直したとのこと。どんな走りを見せてくれるだろうか? ややウエットな路面を気にしつつ、アクセルを床まで踏んでみましょう!
 最初にハンドルを握ったのは、日本初登場となる735i。こう書くと、BMWに詳しい読者なら「懐かしいじゃないの!」と思うかもしれない。しかし、でございます。以前の735iに搭載されていたのは、基本設計の古いストレート6。最高出力211馬力で、最高速が230qであった。新しい735iのエンジンは、235馬力を発生するV8。最高速も240qにスペックアップしている(ヨーロッパ仕様の場合)。このくらいの実力がありゃ十分ってもの。



 コクピットに座ってATのセレクトレバーを見ると、あれれれれ。P/R/N/Dの4ゲートしかない。Dレンジから横に動かすと『+』と『−』表示が。ここで思い出した。今回からポルシェと同じタイプのATを採用したのだな。BMWは『ステップトロニック』と呼んでいるけれど、まんまポルシェのティプトロと考えてよい。前にカチッと押せばシフトアップ。後ろでシフトダウンになる。違いはポルシェが4速。7シリーズが5速タイプだという点。
 早速横のゲートをセレクトし、マニュアルでギアを換えてみる。1速で全開してみると、レッドゾーン直前で自動的に2速にシフトアップ。どうやら制御方法もポルシェと同じようだ。個人的にはマニュアルでシフトする時に限り、勝手にシフトアップしない式がいいと思うのだが……。加えてATの内部機構も従来と同じタイムラグのあるワンウェイクラッチタイプ。クラッチtoクラッチでシフトする三菱式と違い、クイックじゃない(三菱式の方が技術的に難しい)。「4ドアのスポーツカー」と敬意を持って表されるBMWのフラッグシップなんだから、も少し気合いを入れ欲しかった。とはいえ普通のATよりずっとスポーティ。ワインディングロードでは、Dレンジを一度も使わなかったほど。

 絶対的なパワーは「まぁまぁ」と書いておきましょう。235馬力ある反面、車重も1860sとヘビー級。特に今回試乗したようなアップダウンのあるワインディングロードだと、立ち上がり加速が厳しい。ただ平坦地であれば必要にして十分。ドイツに行くと、730iでさえ皆サン涼しい顔でオーバー200qの巡航をしておられる。7シリーズとして恥ずかしくない性能だと思う。参考までに書いておくと、日本仕様はHR規格のタイヤを履くため210qでリミッターが働くそうだ。
個人的に「やっぱし良いなぁ」と思ったのがエンジンフィール。BMW独特の硬い感じで「カーン!」と回ってくれる。もちろん安っぽい振動なんてものはナシ。モーターのようなスムースさなのに、無機質でないから凄い。ベンツのV8よりずっと繊細で洗練されている、と表現しておこう。車外から全開で登り勾配を掛け登っていくサウンドを聞くと、けっこうシビレてしまいました。

 お次は740i。どこが変わったのか? チェックしてみたら、4、4リッターエンジンになっている。ドイツ車ってのは昔から排気量至上主義として知られる。2リッターからスタートしたポルシェ911なんぞを見ても、最終的にゃ倍近い3、8リッターまで拡大させてしまった。BMWも同じ。2、3リッターを上限としていた3シリーズは、旧型の途中で2、5リッター搭載車が登場。そしてついには2、8リッターモデルをリリースする始末。確かに排気量アップに勝るチューニングはない。
 カタログを見ると最高出力は従来型の740iと同じだったりするが、まぁ乗ってビックリというヤツ。AT車で多用する2千回転前後のトルクは、10%以上太くなっているのだ。BMWによれば「低回転でのトルクを太くすることによってギア比も高く出来る。となれば燃費も向上します」らしい。燃費もさることながら、やっぱしパワーフィールの向上が凄いと思った。735iだと「ここは登り坂」と感じた区間さえ、平気でグイグイ加速してしまうほど。当然こいつもステップトロニックミッション付きとなる。

さて。最後にボクの試乗レポートでお約束となってる「攻め攻め走り」と行きましょう。7シリーズだってSクラスだって、クルマは限界を極めないと個性が出てこない。普通に走っていれば、ハンドルを切りゃ曲がるだけ。ブレーキを踏めば止まるだけ。ウエットでイヤだけど、とりあえずコーナーに飛び込んで見る。重さが2トン近くあるとヨタヨタするかと思いきや、大ハズレ! ハンドルを切ると同時にフロントノーズはクイッと向きを変える。絶対的なコーナリングスピードも高く、スポーティな雰囲気さえ漂う。このあたりは大味なベンツのSクラスと違ってBMWらしいところ。
 進入スピードを間違え限界を超えてしまった場合は、ドライバーの意志に関わらず4輪独立したブレーキ制御も行う。これはベンツやトヨタと同じアンチスキッドコントロール機能(スピンを防止する新兵器)のBMWバージョンで、ワザとスピンをするようなフェイントを掛けても、テールは一定以上流れない。面白いのはベンツやトヨタと違い、スイッチを切れること。早速オフッてみたら、流れる流れる。ちょっとガッカリしたのは、BMWらしい”硬派”な部分が薄れてる点。乗り心地を重視するためサスペンションに使われているブッシュを柔らかくした結果、シャープさに欠けるようになってしまった。7シリーズにもスポーティな味付けのモデルを作ってみたらいかがなものか? 買ってから自分でやりゃいいって?

BMW750i

 久々に「こりゃあスゲえや!」と思った。何がスゲえかというと、クルマとしての完成度である。何たってエンジンを掛ける時からブッたまげたね。普通のクルマだと、始動するのにキーをオンの位置から1段ヒネッてセルを回すでしょ。エンジンが掛かるまで、その位置をキープし続けるワケだ。750は違う。一応キーは1段ヒネるんだけど、一瞬でいい。後はアクセル開度を含め、全部コンピューターが操作してくれる。超寒冷地での始動や、しばらくエンジンを掛けなかった時は、勝手にセルモーターが3〜4秒回るらしい。
 しかもキーは完璧に電子制御になっており、形状だけマネしたスペアキーを作ってもダメ。キーの中に入っている情報がメインコンピューターと合致しないと絶対にエンジンは掛からないんだそうな。ドロボーなんぞ出来ないってことになる。関係ないことだけど、外でドアロックしたら内側から絶対に開かないというのも面白い。試しに編集部のスタッフを車内に入れた後、外からドアロックしたら出てこれずに相当アセッてた。こりゃ凄過ぎるぞ!



 クルマとしての能力もカンペキに近い。326馬力を発生する5、4リッターのV型12気筒は、何が何でもパワフル。車重は2トンあるが、アクセルをチョイと踏むだけで文字通り「思いのまま」の加速に入ってしまう。ワインディングロードの短い直線でもワープのごとく加速し、たやすく前車を抜けるのにはホントに驚いた。スポーツカーの加速と違い、どの回転域であっても「ドン!」と速度を上げてくれるのだ。しかもウルトラスムースで、振動や騒音は皆無。
 重さが2トンあるとコーナーでヨタヨタするかと思いきや、これまた大ハズレ! タイトコーナーでこそアンダーステアを感じるものの、80q以上出てればハンドルを切ると同時にフロントノーズはクイッと向きを変える。絶対的なコーナリングスピードも高く、スポーティな雰囲気さえ漂う。このあたりは大味なベンツのSクラスと違ってBMWらしいところ。318tiコンパクトなどより、ずっと楽しいのには驚かされた。

 もし進入スピードを間違え、限界を超えてしまった場合、ドライバーの意志に関わらず4輪独立したブレーキ制御も行う。これはベンツやトヨタが発表したアンチスキッドコントロール機能(横滑りを防止する新兵器)のBMWバージョンで、ワザとスピンをするようなフェイントを掛けても、テールは一定以上流れなかった。このシステム、テールを完全に流さないようなガチガチの安定方向にも設定可能ながら、少しだけテールアウトするのがBMWらしいと思う。
 その他、インテリアの仕上がりや、広くなったリアシートも文句無し! 1370万円というプライスは決して安くないけど、自分でハンドルを握るというヒトだったら無味乾燥のベンツS600なんかよりずっと楽しいのではなかろうか。現在買えるクルマのなかじゃ間違いなく最も高いハードを持っている。ただ個人的にはハンドルを握りつつ「こんなにいいクルマが必要か?」という疑問を感じた。バブルが終わった今、99、7%くらいの日本人にとって、新しい750は英語で言うところの『too much』(スゴ過ぎる)である。