M3はBMW3シリーズのエボリューションモデル的存在である。何しろ96年式のスペックを見ると、4433o×1710oというコロナサイズのボディに、3リッター6気筒286馬力というエンジンを積む。ランエボやインプレッサWRXみたいなモンだと思えばよろしい。そのM3が、97年式から3、2リッターの321馬力になったと言う。エボリューション2だな。結果、JTCCに出ているBMWよっか強力なエンジンなのだ。最高速はリミッターで250qに抑えられるものの、外せば280qに届くそうな。凄いじゃないの! 
 では試乗といきましょう。321馬力にひるまず、当然ながら思い切りブン回してみたね。するとどうだ! 予想通り速い。もう2千回転くらいから太いトルクがもりもりとわき上がり、1470sという決して軽くないボディをグイグイ引っ張ってしまう。しかもNAなので、レスポンスも抜群だ。テストコースのキツい登り坂がフラットに思えるくらいトルクざんす。6速ミッションは1〜4速がクロス気味なので、使い勝手も良好。ただ従来の3リッターバアージョンより高回転の伸びがイマイチ悪い感じ。新車だったせいかもしれないけど……。


 足回りはどうか? 最近のBMWは割と乗り心地を意識した味付けになってしまい、5シリーズも7シリーズもセルシオみたいになってもうた。しかしM3だけは違う。気合い十分である。特に感心したのがリアの踏ん張り具合。ハイパワーのFR車全てに言えることだけれど、どのあたりまでリアをグリップさせるかで迷う。限界を低くすれば低速コーナーでコントロールしやすくなる反面、高速コーナーが怖い。逆に高くするとアンダーオーバーになり、限界を越えたときにアウトる。前者の好例はシルビアで、後者がマークUのツアラー系。
 M3はどうなんだろ、攻めてみたところ。まぁ何てお上手なんでしょ! 100qくらいのコーナーでフルパワーを掛けたら、ここがピッタシのニュートラル。それ以下の速度だとタックインを同時に仕掛けないとリアが流れず、コレ以上の速度では全開にしない限りグリップを保つ。しかもリアサスの横剛性は非常に高いので、リアが流れた時のコントロール性もモンク無し!思わず拍手したくなった。ウデの良い読者ならボクの言いたいことが解ると思う。M3にゃアンダーもオーバーも存在しない。ドライバーの思うまま、ウデのまま走れるのだ。


<アイディングM3>

 BMWが3リッターのM3を「イマイチ不満」と思ったように、アイディングも「まだまだイケる」と感じたのだろう。面白いのはエボリューションさせるための手段が全く違っていた、ということ。BMWはヨーロッパの自動車メーカーらしく「排気量アップに勝る手段ナシ!」を実践し、3、2リッターとしている。対してアイディングは「高回転まで気持ちよく回そうとすると6気筒では3リッターが限界。そこで手は掛かるけれど、レーシングカーのような高回転化がベスト」。コストを取るか、気持ちよさを取るか、で分かれたワケだ。
 ただBMWも単純に排気量を上げただけじゃない。キチンと圧縮比を上げ(奇しくもアイディング仕様と同じ11、3になった)、ハイカムも採用。最高出力回転数を400回転上げた。一方、1基づつ入念に組むアイディングは30%軽いピストンを使い、徹底的にバランス取りし、ノーマルの3リッターより560回転高いところで最高出力を発生。ピストンを変えても排気量アップしないところに意地を感じさせる。こういった手法でノーマルから44馬力アップの330馬力を達成した(ノーマルエンジンもVTECよりハイチューンなんだけどね)。


 試乗会の舞台はTIサーキット。1ラップだけコースの状態を確認しながら走り、2ラップ目から全開だ。するとどうだ! 音と高回転域のフィールがレーシングカーのように気持ちいい!不満のある部分がないのである。普通の量産エンジンだと、必ず「高回転での伸びがも少し」とか「パワーはあるけど気持ちよくない」みたいな弱点が存在するもの。なのにアイディングのエンジンは、低回転から高回転まで澄んだ音を立てて回り、パワーフィールも抜群ときた。しっかりタコメーターを見てないと、簡単に7千回転から始まるレッドッゾーンに飛び込む。
 絶対的な出力もモンク無い! 当日一緒に走ったフェラーリF355(380馬力)とストレートで踏みっこしても、ジワジワとしか引き離されないほど。さらに気に入ったのがアクセルレスポンス。FR車できれいにパワードリフトを決めようとすると、右足とタイヤが直結しているような感覚がなくちゃダメ。このエンジンときたら、文字通りダイレクトフィールなのだ。高回転域なら1秒間に5〜6回のアクセル操作をしても反応するほど。こらもうカンペキにレーシングエンジンの世界である。もう全てのコーナーで流しまくってしまった。


 写真を見れば足回りもノーマルじゃないだろうことが予想出来ると思う。簡単にスペックを並べてみる。まずタイヤ。ノーマルのF225/45ZR17とR245/40ZR17から、F235/40ZR18とR265/35ZR18にサイズアップ。当然車体からハミ出すため、ボルト止めのオーバーフェンダーでカバー。さらにブレーキはオプションのAP製ポットキャリパーが付く。ダンパー&スプリングは、ビルシュタインのモータースポーツディビジョンと共同開発したとのこと(もちろンビルシュタイン製)。これまたスペックだけ見ても凄い。
 走ってみて驚いた点は二つあった。一つは乗り心地がいいこと。これなら公道で使っても十分に快適だと思う。直進安定性も良好だ。二つ目はコントロール性。これだけ高性能なタイヤを履くとなると、限界を超えたときの挙動が不安。なのにレーシングカー並の横剛性を持つためか、普通のクルマよりコントロールしやすい。考えて見ればスリックタイヤよりグリップは低いから、何の問題もないのだろう。そしてAPのブレーキが絶品! 10ラップほどシビアに走ったのに、効きやタッチに変化ナシ。これなら公道でフェードすることなど皆無だと思う。