MLシリーズの生い立ちについてサックリと書いてみたい。キーポントはアメリカ市場、である。御存知の通りアメリカに行くとチェロキーやエクスプローラーといった、クロスカントリータイプのSUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)が大人気。しかしメルセデスはこのタイプのモデルを持っていなかった。加えてドル安マルク高で収益を上げるには、アメリカ工場を作らねばならない状況。だからこそBMWもアメリカ工場を立ち上げたのだ。このあたりの動き、日本のメーカーと同じ。
 ナニを作るか、とメルセデスは会議を開いた、と思う。結果、新しいタイプのSUVなど開発しアメリカ工場で作ろう、となったに違いない。1年後、プロトタイプはアメリカのモーターショーで発表され、話題となった。メルセデスにとって大きな誤算だったのが、トヨタの存在。セルシオのデビュー以来、メルセデスにとってトヨタは無視出来ない存在となりつつある。アメリカ市場でもセルシオを始めとしたレクサス店で販売されているモデルは、メルセデスのユーザーを確実に奪いつつあるほど。

 そのトヨタが、まんまMLクラスと同じコンセプトのSUVを、わずか半年後のモーターショーに出展してきたのだ。もちろん半年じゃマネなどできないので、トヨタも同じコトを考えていたというワケ。日本車は開発期間が短いので、同時デビューとなってしまう。日本名ハリアーと呼ばれる3リッターV6搭載の新型レクサスRX300は、MLクラスより軽いボディを活かしオンロードではるかに快適な乗り味で高い評価となる。意外なことにアメリカでのプライスは5千ドル=60万円しか変わらない。
 冷静に評価すると、悪路での走破性能は本格的な強度を持つフレーム付きシャシ+トラクションコントロールまで付加されるフルタイム4WDのMLクラスが勝ち。ただこれらの機能、オンロードだと重量増を招き、燃費や動力性能、乗り心地で不利となってしまう。したがって悪路走破性を重視するヒトならMLクラスながら、普通のユーザーにとってみるとハリアーの方がイイ、という評価になった。実際、ハリアーの売れ行きは超好調。レクサスのドル箱に育っている。

 このまんまじゃアカン、ということでメルセデスが考えた結果、より高級化する作戦をとる。ベーシックモデルである3,2リッターは、ハリアーの3リッターV6とバッティングするだけでなく、動力性能で負けた。最高速についちゃML320もハリアーも180qで同じなのだが、0〜100q加速で1秒も負け。こらS320とS430くらい違う。アメリカは0〜100q加速の良さが勝負。となれば排気量アップでしょう! 余裕あるエンジンルームをフルに使い、4,3リッターのV8など搭載したのだった。
 公表されたスペックによれば、0〜100q加速8,4秒。ハリアーの8,8秒を凌ぎ(ハリアーのFFは8,5秒)、最高速も210q! 4,6リッターエンジン積むレンジローバーの200qをオーバーテイクし、世界最速のクロカンモデルとなった。考えて欲しい。200qで巡航中、こんなクルマに迫られたらタマゲルぞ! 「世界一」という栄冠が全く存在しないML320と比べれば、いかにもメルセデスらしいクルマじゃぁないの! 最高速だけで存在価値あると思う。

 世の中にはワタシら想像出来ないようなお金持ちが存在する。くだもの屋サンに行けば3千円くらいで買えるメロンを、1万5千円出して高級レストランに買いにくるヒトだっているのだ。パンクしたからとポルシェを修理にだし、7ケタの請求書もらって「よく治してしてくれたんだね。ありがとう」というヒトもいる。おそらくワタシらが1マンエンと思っているお札を、センエンだと理解してるんじゃなかろうか。といったヒトなら、ML430の720万円は全然高くないのかも。
 異なる貨幣価値でML430を眺めると、やっぱしハリアーより良いブブンは少なくない。やっぱしエンジンがイイ。3リッターV6と比べれば、4,3リッターのV8は格段に上質。V6だとわずかに感じる振動も、V8になれば見事に消えるのだ。4気筒に慣れている平民と、普段からV8に乗っているお金持ちは、快適とされる基準からして違う。ワタシも仕事柄、夜のクラブ活動や食費、コドモの衣類削ってまでV8に乗ったけど(今まで4車種。12気筒に乗ってないのが辛い)、やっぱしスムース。

 そんならカンペキかとなれば、答えはNoである。お金持ちの立場になってみると、煮詰まっていないトコロが多すぎる。最大の難点はアクセルの操作感。おそらく右ハンドル化によるものなんだろうけど、アクセルの開け始めが渋いのだ。スタートしようとアクセル踏むと、ガバッと開いてしまう。ML430だけに限った現象でないから、メルセデスの右ハンドル買うときは注意して欲しい。問題ないはEクラスとCクラスくらいだと思う。SL320などもヒドかった。
 も一つが装備類。例えばエアコン。イマドキの高級車でオートエアコンじゃないのって、見たこと無い。720万円するんだから、やっぱりマニュアルないと思う。蒸し暑かった撮影当日は、絶えずファン速度を調整しないと快適な空間をキープ出来なかった。仕上がり、というか質感も低い。革とウッドの部分のみベンツらしいが、プラスティックときたら大衆車と変わらないクオリティ。シフト回り一つとっても、ノブはウッドで好ましいのだけれど、ゲート部分のプラスティクパーツ安っぽい。
 エクステリアにも納得いかない点がある。塗装や鉄板の平滑度不足はコッチに置くとしても、写真のようにハンドル切った時に見えるバンパー内側のデザイン処理など、とてもじゃないがメルセデスと思えない手抜きぶり。ハリアーの倍くらいの価格を付けるんなら、その分の仕事をして欲しい。こういったクルマを作っていると、ワタシみたいな平民がメルセデスに魅力を感じなくなっちゃうよ、と言っておく。こう書くと「おまえらは買わなくてもいいぞよ」と思われちゃうのかもしれませんけどね。