最近クルマ好きの間で「ベンツにゃ少し飽きたね」という話になることが多い。確かにバブル全盛時代と比べればベンツの相場はググッと安くなっているのに、売れ行きは落ちてきている。2年前は3年落ちの560SELといえば850万円はしていた。それが今では89年式560SELなら550万円程度。業者間だと400万円台後半だという。
 3年間でこれだけベンツの相場が落ちたというのは、前代未聞。それだけ飽きられたのだろう。むろん中古車だけでなく、新車も同様。納期を急ぐならプレミアムまでついた新型SクラスやSLも、今は即座に定価以下で手にはいるようになった。
 人間と言うのは不思議なもんで、どんなに良く見えたクルマでも飽きるときは飽きる。クルマはデキが良ければいい、というものではない。その証拠に完成度ということに関してはベンツよりはるかに劣るジャガーの魅力を見直す人が増えているようだ。



 実を言うとこのボクがそうで、セルシオを手放し現在シリーズ3の86年式XJ−6を物色中。セルシオもベンツと同じ価値観で、凄くいいクルマだけどクルマ好きとしては少し物足りないのだった。
 前置きが長くなった。そんな具合いでクルマ好きのなかでは飽きられた存在になりつつあるベンツだが、このところ人気上昇中のモデルもある。それが今月紹介するSLシリーズだ。屋根が開くのはやっぱりオシャレだし、2代前の280SLくらいになるとスタイルもよろしい。
 さらに価格的にも下がっていて、先代モデルの450SLあたりなら300万円を切るようになってきた。個人的にも、560SLあたりは一度オーナーになってみたいと思う。以下、バイヤーズガイドといこう。

<63年以降の2代目モデル>
 初代のSLは御存知の通り54年のニューヨークショーで発表された名車300SL。ところが面白いことに300SLはクーペボディであった(その後は300SLにもコンバーチブルが設定されている)。
 しかも300SLはレースを目的として設計されたため当時としてはかなり大柄のボディ(全長4520o。全幅1790o)であった。加えてあまりにも高く、販売は低迷。結局1世代で消滅してしまう。2代目のSLは300SLと同時に発表されリーズナブルな価格設定だった190SLの血を引くモデルとなった。
 それでもサイズは全長が4285o。全幅は1760oもある優雅なボディを持っており、アメリカでは一気に人気となった。このクルマの特徴は、縦目のヘッドライトと、『パゴタ・ルーフ』と呼ばれるエッジに角度の付いた独特の形状をしているハードトップ。当時最も売れたのはアメリカだが、現在も程度のいいクルマがたくさん残っている。

 エンジンは3種類。いずれも6気筒だが、排気量は2300/2500/2800tとなる。このうち、日本でも数多く流通してるのは280SLと呼ばれる2800tエンジン搭載車だ(67〜71年式)。
 相場はあってないようなものだけど、程度極上で600万円程度。普通は400万円くらいで手にはいる。どうしても欲しいならアメリカから個人輸入することも可能で、その場合はフルレストア済みの極上で現地価格は3〜4万ドル。普通のレストア状態なら2万ドル(240万円)もみておけば大丈夫だ。現地価格プラス70万円もあれば日本に持って帰ってきて、ナンバーまで取れる。
 買うときの注意は特に無し。というのもこの年式だと”完全にオリジナル状態”ということはほとんどない。絶対にエンジンや外装はオーバーホールされている。その作業が丁寧であれば安心。そうでなければガンガン壊れると思って欲しい。内装ならカーペット、外装はボンネットを開け、念入りにチェックしよう。

<70年以降の3代目モデル>
 中古車市場の主力となっているのがR107と呼ばれる3代目モデル。スタイルは見慣れているだろうから説明しない。アメリカモデルは無様な大型バンパーを持つためカッコ悪いものの、ヨーロッパ仕様はなかなかよろしい!
 R107は19年間も生産されたためか、エンジンバリエーションは非常に多い。このうち、中古車市場に流通しているのは、排気ガス対策の技術が煮詰まってトラブルも減った80年式以降である。
 エンジンは先代のSクラスと同じで、6気筒が85年まで280SL。それ以降は300SLとなる。V8は80年までが350/450SL。それ以降は380/420/500/560SLというバリエーション。
 価格と程度は非常に幅があるようだ。400万円前後のプライスを付けて中古車屋の店頭に並んでいるのをチェックしてみた。最初は85年式500SL。価格は399万円で新車を並行輸入し、中古車になったもの。程度は並。2台目は84年式380SL。価格は398万円。ディーラー車。最後は87年式300SL。448万円というプライスだった。

 この中で買い得車はどれかというと、やっぱり87年式の300SLだろう。500SLはすでにATも寿命に近く、100万円は余裕を見とかないと厳しい感じ。380SLも古く、しかも当時の排気ガス対策は大幅にパワーを奪ったため、走りだって高年式の300SLといい勝負だ。
 全般的にR107ボディのSLは、年式が古くなるにつれて程度が悪くなるのが気になる点。理由はいくつかあるが、最大のものはコンディションを維持しようとすると大金が掛かるためだろう。
 このボディだと”クラッシック”という価値がないから、オーナーはそう入れ込まない。となるとお金も掛けたくない。一方で、Sクラスのエンジンを流用しているせいで、メインテナンス&オーバーホール費用は莫大にかかるのだ。だからオーナーの多くは「どこかが危なくなって来ると手放す」ということになる。
 SLの”売り”であるハードトップや幌の状態も年式相応に悪くなるため、10年以上経ったようなクルマはオーバーホールの必要性がある。ところが幌は高価だし、ハードトップも歪が出ていれば修正は大変。これまた最低でも50万円以上の出費を覚悟しなくてはならない。

 それにSLが本当に好きなら2代目を買って、コツコツとレストアした方が面白い(エンジンも6気筒だからお金もかからない)。そういった理由があって、R107は古くなっても本格的にレストアされないのだと思う。
 というワケで、R107を買うなら85年式以降のディーラー車か、新車並行に限った方がいい。アメリカからの中古並行も目立つけど、走行距離は信じられないくらい多く、強い紫外線で内装もボロボロ。さらにこの年式のエンジンは、アメリカ仕様だとパワーが著しくダウンしているのだ。
 おすすめは高年式の560SL。今回取材したなかに、87年式で走行距離が非常に少ないディーラー車があった。価格は648万円。内外装共に新車に近い状態で、個人的にもグラリと来てしまった。
 560SLはさすがにパワフルで、元気の良さでは現行500SL以上。アクセルを踏むと強力なトルクがグイグイと立ち上がるのだ。程度が良ければ長く乗ることも出来るだろう。こういったクルマと共に歳を取っていくのも悪かぁない。

<現行SL>
 バブルの申し子といえるのが現行SL。ベンツジャパンの商売もバブルっぽかった。なにしろ最初のプライスは1380万円。それが人気爆発で納期5年ともいわれる状態になると、年度の途中から1480万円に値上げ。翌年1580万円に再値上げし、現在は1631万円と完璧にインフレ。
 しかし人気は値上げと共に低迷し、最新の並行輸入車相場は新車で1350万円。中古車だと91年は1150万円。90年が1000万円を切るあたりとなっている。
 面白いのは300SLの相場。日本には正規輸入されない300SLも売られているが、相場はほとんど500SLと変わらないのだ。それなら遅い300SLを買う意味はまったくない。リセールバリューも絶対に500SLが有利なのはいうまでもなかろう。
 購入する時はなるべく走行距離の少ないものにすること。1年あたり1万qを目安にし、それ以上走っているのはパス。また、外観に細かいキズの多いものは屋根のないガレージに入れられていた証拠。ベンツの塗装は柔らかいので、昼間にしっかりチェックして欲しい。