VW ゴルフ

VWジャパン

《ゴルフV試乗レポート》

●高剛性ボディに込められたVWの魂を見よ!

○誕生30年を迎え5代目がデビュー
 ゴルフが待ちに待ったフルモデルチェンジを受けた。先代IVは6年に渡りVWの屋台骨を支え続けたが、初代誕生以来ちょうど30年を迎え5代目へとバトンタッチ。常に世界の自動車業界から注目され、日本でも10年連続輸入車別販売台数ナンバーワンという地位を築いているゴルフはどのように進化したのかを探るべく箱根で試乗してまいりました。


○またもワールドスタンダードをリードするのか
弟子山崎(以下:山):デカくなりましたね。全幅1760mmですって、マークツーとおんなじですよ。
師匠国沢(以下:師):確かにもうコンパクトカーじゃないね。でもねえ、このところのCセグメントって室内空間を確保するためにどんどん大きくなってきてるから、これくらいのサイズがないと勝負にならないんだよ。実際プジョー307と比べると、全長と全幅はほぼ同じだけど全高なんか307の方がゴルフVよりさらに65mmも高い。
山:大きくなったおかげなんでしょうけど、後席は広くなりましたね。
師:全長が先代プラス50mmの4205mmになったのに加え、ホイールベースが60mmも拡大してるから、室内長が70mmも伸びてる。その分がそのまま後席スペースの余裕になってる感じ。
山:先代の後席はお世辞にも広いとは言えなくて、真っ先にゴルフのウィークポイントとして挙げられる項目だったと思うんですけど、これなら大の大人でも不満が出ることはなさそうですね。
師:ドイツじゃ大衆車だからね。カローラが家族で乗れなかったら売れないでしょ。

○ヒトもクルマもホネが大切

山:ボディを作るのにレーザー溶接をたくさん使っているっていうのが特徴らしいですけど、普通にスポット溶接で作るのとどういう違いが出るんですか?
師:簡単に言うと、点で結ぶか線で結ぶかってことになるんだけど、当然接点が多い方がしっかりくっつくでしょ。クルマは複数の鉄板から作られるから、繋ぎ目がしっかりすれば一体感が増す。つまり剛性アップに直結するってコト。接着剤使うときだって最低限の接着力しかいらないのなら、チョンチョンって間を開けながら塗っても効果はあるけど、より強力に着けたいなら接着面全体にダーっと塗ればより強力になる。クルマのボディもそれと同じ。一定の間を開けながら溶接するスポット溶接よりも、レーザーを常に照射し続けながら鉄板どうしを繋げる方がより一体感のある結合ができるってワケ。でも、点で着ければ接着剤は少なくて済むのと同じように、レーザー溶接にはコストも掛かる。先代IVでも世界に先駆けて採用していたけど約5m程だった。それを一気に延べ約70mにしてきたんだからゴルフに懸けるVWの気合はハンパじゃないね。
山:乗れば分かりますか?
師:誰でも分かると思うよ。

○徹底した作り込みで走りもスキなし

師:街中を普通に運転してても全然違うでしょ。

山:カタマリ感って言うんですかねぇ。ミチーッとしてますね。

師:このままラリーにでも出られるんじゃないかってくらいガッチリしてる。ハイペースでワインディングロードを攻めても不要な振動が一切ナイ。ボディ剛性は間違いなく100点!
山:よくヨーロッパ車はボディ剛性が高いって聞きますけど、正直ほとんど運転したことなかったんですよ。でも、これはレベルが違いますね。目からウロコが落ちました。
師:他のヨーロッパ車と比べてもスゴイよ。
山:ハンドリングはどうですか? やっぱりボディの効果って出ますよね?
師:先代は終始アンダーステアだったけど、新型は良く曲がるよ。狙ったライン通りにクルマの向きが変わるから、積極的に楽しめる。テール流れてからのコントロール性も収まり具合もバツグン! ボディ剛性の高さっていうのは、サスペンションの機能を発揮させる上での絶対条件だからレーザー溶接の効果はしっかり出てるね。いやーホント楽しー!
山:今乗ってるGT系のサスペンションってちょっと硬くないですか?
師:多少硬めだけど、街乗りできないって程じゃない。でも、気合の走りをしないのであればGLiの方がしなやかだから印象良いと思う。GLiでも十分スポーティドライビングできるしね。

山:エンジンはゴルフトゥーランと同じ2リッターの直噴タイプで150馬力というスペックですけど、思った以上に軽快に加速しますよね。
師:先代2リッターは116馬力だったから、新型の150馬力は力強く感じるね。直噴特有のノイズも無いし完成度高いと思う。でもね、軽快な加速をもたらす一番の立役者は6速化されたAT。
山:日本のアイシン製らしいですね。以前試乗したゴルフトゥーランも基本的には同じものを使ってましたけど、小気味良く変速するからタコメーター見てても楽しいですよ。
師:トゥーランより約200kgも軽いからおのずと動力性能に余裕が生まれてる。どんな場面でも最適なギアを選択できる6速ATは大きな武器だね。こういう多段ミッションは本来なら絶対的なエンジンパワーがソコソコっていうこのクラスのクルマに採用するのが理想。パワー不足に陥る状況ををミッションで補うことができるからさ。日本車じゃセルシオやクラウンといった高級車にしか採用されてないけど、あちらは静粛性や燃費に対する意味合いが大きい。まあ、日本ではCVT志向が高いっていうのもあるだろうけど、当分大衆車レベルで6速ATは採用されないだろうね。だからこそゴルフの作り込みの徹底さが際立つんだけど。
山:もちろん燃費だって良くなってるわけですよね。
師:燃費いいよー。大人しく高速道路走ってる分には15km/Lを下回ることないもん。
山:そのあたりはしっかりコンパクトカーしてますね。

○単なる廉価版じゃないベーシックゴルフ


山:そう言えば「ゴルフはベーシックモデルがイイ!」みたいなこと言われますけど、今度のゴルフにもEという1.6リッターモデルがありますよね。
師:まさにその通り! ワタシのオススメは1.6リッターエンジンを搭載する「E」。姿勢安定装置のESP(エレクトロニック スタビリゼーション プログラム)を初めとする安全装置はフル装備だし、気になる動力性能も6速ATの効果で不満なし。これで229万円はバーゲンプライスでしょ! 上級グレードに大きく引け目を感じるブブンなんてないもん。

山:いいことずくめのゴルフVですけど、これはちょっとイケませんという点ってありますか?
師:あるある。大いにある!
山:だいぶ気になってるようですが…。
師:気にならなかった? アクセルとブレーキの配置が異常に近いの!
山:言われてみると確かにブレーキ踏むとアクセルに触れるような感覚ありましたけど、今日履いてる靴がブーツっぽいものだからかと思ってました。
師:でもね。ドイツ人やアメリカ人は日本人よりもっと足大きいと思うよ。
山:つまりは靴や足の大小の問題じゃなくてペダルのレイアウトそのものがタイト過ぎるってことですね。
師:そう! だってね、走行中ならブレーキとアクセルを一緒に踏んじゃってもESPが介入してスロットルを絞るから大丈夫だけど、ブレーキを踏んで停まっている状態でアクセル踏むとズルズルと進んじゃうんだよ。渋滞してるときに「アレッおかしいな?」と思ってさらに強くブレーキ踏んだらもっと前に出てゴンッ! っていう状況だって考えられなくもナイじゃない。暴走することはないと思うけど、安全性のことを考えるとこのままじゃマズイでしょ。
山:ペダルレイアウトの調整ならそんなに難しくないでしょうから、今後どうなるか注目したいと思います。そのほかに早期改善項目って見当たりますか?
師:なしっ! さすがにVWの看板モデルだけあって魂が込められてるよ。正統派の良いクルマです。
山:ジツは次期愛車にプリウスを考えていたんですけど、ちょっとゴルフ欲しくなっちゃいました。やっぱり乗るなら普通のクルマ以上に気合い入れて開発されたクルマがいいですから。
師:プリウスとゴルフで迷う人、少なくないと思うよ。

Text:山崎 裕正