日本人の多くが選挙でキチンとした意志を表明しないため、世の中、依然として不景気である。これじゃ企業も生き残れない。そこでホンダは考えたね。「少しでも安い御予算で最大限の夢を買ってもらおうでないの」と。考えてみればRVのネダンをググッと下げたのはホンダだ。オデッセイに200万円チョイというプライスを付け、ステップワゴンも200万円前後という魅力的な価格設定。それまでの相場を20〜30万円低くしたのだから凄い。かくしてライバルメーカーも値下げを余儀なくされ、今や200万円台前半がRV車の価格帯になっている。
しかぁし! 昨今の景気の悪さは、200万円でも「ウ〜ン!」と悩ませるようになってるほど。さらに昨年12月の京都会議で、二酸化炭素の削減率も定められた。こうなると燃費の悪いRVも買いにくい。そこでホンダはまたまた考えたね。「もっと安い御予算で燃費もいいクルマを作りましょうか」と。かくして出てきたのが『J−ムーバー』と呼ばれるシリーズ。日本に合った小型のジドウシャという意味で、燃費や車両価格を可能な限り下げ、それでいてウルサイ要求を出す日本人にも満足してもらおうというのが狙いらしい。
その第一段が今回紹介するキャパ。カタログスペックを見ただけでクラクラするくらい、今の日本のユーザー心理を掴んだクルマだったりする。具体的な内容はジックリと紹介することにして、まずサイズから分析してみたい。データによれば全長3775o×全幅1640o×全高1650oで、こいつぁ日産キューブより2、5〜3p大きいだけ。ほぼ同じと言ってよかろう。ベースになったホンダのリッターカー、ロゴとも同じだ。ただキューブより大きく見えるから面白い。S−MXが実際のサイズより大きく感じるように、キャパもドッシリしてる。
どんな効能があるか? キューブくらいの見栄えだと、ファミリーカーとして使うにゃチト寂しい。セカンドカーとか、若いヒトのクルマに見えてしまうからだ。キャパくらいの押し出しがあれば、ファミリーユースにも十分耐える。後で説明するように室内サイズもキューブは4人乗車すると厳しい。おそらくクルマの企画段階から、キャパはファミリーカーとして使うことを前提としてきたのだろう。ちなみに全高1650oはタワーパーキング不可だが、デミオみたいに1550o以下とすると、やっぱりセカンドカー風になっちゃう。
ファミリーカーとして使おうとすると、どうしても高速道路での移動が不可欠。セカンドカーなら半分諦めればいい高速巡航性能も、重要な項目になってくるワケ。そこでキャパは1、5リッターエンジンを採用した。とは言え全開時の加速性能を追求しても意味がない。そこで高回転域のパワーを削り、その分を低回転域にもってきた。最大トルクの発生回転数は、高速走行で重要な3500回転。100q巡航からアクセルを開けると、ちょうどこの回転数になる。そこでパワーを出してやろうという狙い。燃料消費率は100qくらいが最良の値になるように設定されている模様。10・15モード燃費も60q燃費も、200t小さいキューブに匹敵するからエライ!
ミッションは金属ベルトを使う無段変速のATのみ。スクーターのようにスムースな加速と、優れた燃費効率が特徴。このATの弱点は発進時のギクシャク感だ。日産もキューブに無段変速ATを採用したけれど、発進時の感覚は大いに不満。したがって従来と同じトルコンを使う4速ATの方が人気となっている。ホンダ式無段変速の特徴は、トルコン式ATのようにクリープ(ブレーキを離すと少しだけ前に進む挙動。トルコン式ATだと必ずクリープする)を出している点。これを出すとギクシャク感が大幅に緩和されるのだ。加えてシビックに採用した後も細かい改良を進めているようで、もはや違和感は無くなった、と思う。
サスペンション形式はベースとなったロゴと同じ。性能を追求したスポーティカーでないため、凝った足回りを使う必要もない。それより重要なのは、車内スペースを削らず、優れた乗り心地を実現すること。といった観点からすれば、なかなか良いチョイスだと思う。リアのラゲッジスペースにリアサスの出っ張りがなく、床はフラット。最新のホンダのクルマ作りからすると、走りも期待していいか?
タイヤは13インチの175/70サイズ。スタイルを考えると14インチくらいを履きたいところだが、性能的には十分とのこと。ま、タイヤ交換の時を考えると、13インチの175/70なら非常にリーズナブル。スタッドレスタイヤを買うのも安い。スタイルを気にするワタシなら標準装着ホイールをスタッドレスタイヤ用とし、14インチの185/60+アルミホイールあたりに換えるが……。
キャパ最大のポイントがココ。ホンダ製RVの弱点だった衝突安全性を突如グレードアップさせてきたのだった。エンジニアに聞いてみたところ「98年10月から施行される新日本基準はもちろん、オフセット衝突もユーロNキャップを考えています」だと。何のことだか解らないって? 訳すと「50qからの側面衝突やGOAが盛んにPRしていた60qでのオフセット衝突だけでなく、ボルボさえ大いに自慢している64qからのオフセット衝突まで想定している」というもの。つまり現在考えられる最高の内容なのだ。常識的な速度で走っている限り、まず大事には至らないレベル。凄いぞ!
インテリアのポイントは広さ。室内高が1240oもあり、余裕タップリ。さらにルーフを絞り込んでいないため(乗用車の場合、屋根の横幅を減らしているので目の高さの左右幅が数字以上に狭く感じる)、窮屈な感じもしない。大人4人で長距離移動する時は、このくらい広くなくちゃダメ。このあたりもファミリーカーとして十分に使える資質を持っている証明か?
質感も高い。ホンダはライフ以後、急にインテリアのセンスが良くなったように思う。シンプルだけど、決してチープでないのだ。ライフなど「こらイタリア車か?」とタマげた。キャパもシート地のセンスから形状に至るまで、明るくてキモチいい(窓の面積が大きく実際に明るい)。高級を目指したのでなく、楽しい雰囲気を大切にしたのが良かったのかも。
グレードは2タイプあるが、ベーシックな『Cタイプ』でも必要なモノは全部標準。両席エアバック+ABSの安全セットを始め、エアコンやオーディオ、パワードアロック、電動ミラー、他車だと上級グレードにしか装備されないリアヒーターダクトといった快適装備まで付く。違いはCタイプだとマニュアルエアコンになり、オーディオのグレードとシートのファブリックが多少落ちる程度。価格差*万*千円なので、もしツートンカラー(Dタイプ専用)でなくてもいいならベーシックグレードで十分だと思う。ナビゲーションシステムは、**万*千円のメーカーオプション。エンジンや足回り、タイヤといった主要スペックは同じである。
居住性は前後席『優』を付ける。気に入るのがリアシート。前後に25pもスライドするので最後端を選ぶとレッグスペースは広々してるし、着座位置も前席より高いため圧迫感がない。リアシートのシートバックなど12段階にリクライニングまでしちゃうのだ!4ドアセダンじゃ絶対に不可能なスペックでしょう。全長わずか3775oしかないクルマとは思えないほど。リアシートのクッションだって上級モデルのS−MX以上。
フロントシートは身長155〜175pくらいまでなら問題ナシ。それ以下&それ以上のドライバーが座る場合、オプションの『ユースフルキット』をすすめておく。このキットは運転席ハイトアジャスターを含む。ノーマルのシートだと、身長が小さいヒトにとってはフトモモが当たり不快。大きいとフトモモが当たらず不快である(ワタシは後者)。個人的に気に入ったのは全車標準装備のアームレスト。このクラスで肘掛けが付くのは、大変珍しい。長距離ドライブ時に威力を発揮する。
リアシートは前後に25pスライドするだけでなく、半分ずつ前に倒すことも可能。イチバン前にスライドさせて使えば(リアシートにコドモを乗せるような時)、72pの奥行きを確保出来るので、2〜3泊旅行の荷物なら楽に積める。1、8リッターセダン並のラゲッジ容量を想像してもらえばよかろう。海外旅行用のトランクも2個+ソフトバックまでOKだ。小学生までのコドモ2人なら、海外旅行の時も空港まで乗っていけるだろう(大人4人はちょいと無理)。
リアシートを片方畳むと、3人分のオートキャンプグッズが入る。どうしても4人乗ってキャプしたい時は、ルーフ上の積載を考えないとダメ。屋根に荷物を積むのってカッコイイと思うけど……。リアシートの背もたれを両方倒せば、相当な大物まで大丈夫。経験上、ここまで大量の荷物を運ぶ機会はあまり無い。ということで、キャパに出来ないことは大人4人+人数分の海外旅行用トランクを運ぶことくらいだと思えばよろしかろう。