CR−Xというモデル、初代はシビックの兄弟車として登場。先代モデルもシビックと同時にフルモデルチェンジをしたが、どうやら今回から「完全に別の車種にしよう!」という方針になったようだ。発表時期をずらせただけではなく、スタイルを見てもシビックとの共通性はまったくなくなっている。では新しいCR−Xデル・ソルはどういったクルマになったのだろう? このあたりが今回のキーポイントとなるので、少々説明しておきたい。
ヒントはCR−Xの後に『デル・ソル』というサブネームが付くこと。というのもシビックは3ドアを本家シビックとし、イメージを大きく変えた4ドアには『フェリオ』というサブネームを付けた。今回もおそらくこれと同じだと思われる。つまりCR−Xは、本来ならシビックのスポーティバージョン。ところがルーフの開くデル・ソルは、どちらかというと楽しさを追究したモデルなので、本家とは思えないのだ。
それにボディ形状を見ると、ミッドシップも充分可能。後から走りを追究した”本家CR−X”が出て来る可能性が大きいと思ったほうがいい。ではCR−Xデル・ソル(以下CR−Xと略)の具体的な説明に移ろう。まずは写真を見て欲しい。驚いたのは2シーターになったことである。これまでのCR−Xは実用的とはいえないまでも、とりあえず4人乗ることが可能であった。新型はリアシートだったスペースをルーフの収納に利用してしまい、完全な二人乗りになっている。
スポーツカーなのかというと、そうでもなさそう。ホンダはNSXを発表して以来、半端なクルマをスポーツカーとは呼ばなくなった。CR−Xはどうか? カタログスペックを見ると、170psのV−TECを搭載するSiRの車重は1090kgもある。これは同じエンジンを搭載するシビックSiRUより40kgも重いのだ。
それにコーナリングもシビックの方がよさそう。現に旧型同士の比較では、サーキットのラップタイムは車重の重いシビックが速かった。FFの場合、ある程度のホイールベースを持つ方がバランス的に優れているという。となれば新型同士の比較ではシビック有利(しかもシビックの方が軽い!)といったところ。という具合いだから、絶対にスポーツカーとして開発されたクルマではなさそう。
CR−Xの売りは何かというと"楽しさ"だと思う。こいつは初代MR−2やユーノス・ロードスター、ビート等と同じ狙いだ。初代MR−2やビートの動力性能はごく普通。同じクラスに速いクルマはいくらでも存在する。モーターボートに例えれば、ランナバウト的存在といっていいだろう。ランナバウトは動力性能を追究したパワーボートとは違うものの、操縦性が良く小回りが効いてキビキビ走る。CR−Xもそういった狙いなのだ。
外車にはこの手のモデルが多数存在した。VWビートルをベースにしたカルマンギアやポルシェ914、フィアットX1/9あたりはすべて新型CR−Xのようなランナバウトといっていいと思う。ホンダもそのあたりは充分認識しているのだろう。1500ccをグッと魅力的なプライスにしてきた。この程度の価格なら2BOXカーにサンルーフを付けたくらいの気持ちで購入可能。初めて買うクルマとしても無理がないのではなかろうか。
スタイルは大幅に変化した。初代、先代共にCR−Xはどちらかというとコロンとしたデザインだったのだが、新型は完全にスポーツカー風。横から見たシルエットは初代のMR−2似といっていいかもしれない(これを見てもミッドシップは”可能性大”だと思う)。サイズは大きくなっており、全長は20pも伸びた。
ただホイールベース(前輪と後輪の間隔)は7cmしか変わっていないので、延長分は前後のオーバーハングに使われた。これまたオーバーハングをあえて切り詰めていた歴代CR−Xと大きく変わった点だ。フロント回りはホンダ車のラインナップにないイメージでまとめられており、けっこうカッコいいと思う。街中で見かけたら相当目立つデザインであることは間違いない。
搭載されるエンジンは2種。SiRはシビックSiRと同じV-TECの170ps。いくらランナバウトとはいえ、ある程度速くなくてはダメなのはいうまでもない。このエンジンを搭載したグレードは、シビックSiRと同等の走りを見せるはずだ。
もう一つは130psのV-TEC。これもシビックに搭載されているものと同じスペック。車重はやや重いものの空力はいいだろうから、最高速は200km(もちろんリミッターがない、と仮定した場合)に届くと思う。けっこうパワフルだから1500ccで充分かもしれない。
足回りは前後共にストロークをたっぷり確保したWウィッシュボーン。はやりシビックと同じタイプで、どちらかというと乗り心地を重視した味付けになっているという。ホイールベースが短い分シビックよりシャープだろうが、それでも超クイックだった旧型と比べれば大人しくなったのではなかろうか。その変わり限界でのコントロール性は向上しているだろうから、走りの性能は大幅にアップしていると思う。
インテリアはどうだろう? 最大の特徴はオープンとなるルーフだ。このルーフ、ちょうとばかり複雑な形状になっているので、右の写真を見てもらいたい。電動のトランストップが作動している時の連続カットだが、ほとんど芸術作品に近い。ベンツのSLやソアラの電動トップの動きは面白いと思ったけれど、CR−Xには負ける。
エンジニアによると、トップの持ち上げはパワーシート。差込みはサンルーフの技術を応用したとのこと。海辺の道で信号待の時に動かしたらすっごく目立つに違いない。
面白いのはリアウインドゥまで開くこと。この手のルーフはタルガトップと呼ばれるが、他車は屋根の部分だけが開く。CR−Xはリアウインドゥまで収納されるため、風の動きはオープンカーとまったく同じだという。
参考までに書いておくと、トランストップと手動トップの価格差は**万円。高いように思うかもしれないが、リセールバリューまで考えると案外トランストップも損はないような気がする。
またトランストップ仕様の重量は62kg増すものの、かえってバランスはよくなるため(後ろが重くなる)コーナリング限界は向上するというウワサもある。これはホンダのエンジニアが言っていたことだから、今度試乗したときに確認してみよう。
グレードは事実上ないといってよろしい。エンジンの違いにより1500ccのVXiと1600ccSiRの2タイプがあるだけ。装備差も足回りくらいだ(タイヤサイズと、ボディの補強)。とりあえず必要と思われるオプションはエアコンとオーディオ。後は希望に応じてアルミホイール、エアバック、ABS、ビスカスLSDといったものを選ぶことが可能。
CR−Xというと、やっぱり走りを期待してしまう。スペックを見た段階での予想はどうだろう? まず加速性能だが、これは同じエンジンを搭載するシビックと同等だと思う。ややCR−Xの方が重いけれど、専門的に言うと前輪荷重が高いためスタートは有利。最高速は車高が低く、空力のいいCR−Xだ。シビックは220km近く出るのだから、そいつをオーバーするのは確実。ランナバウトといっても、ある程度速さが求められるのはCR−Xの宿命。それに応えるだけの実力はあると思う。
ハンドリングは従来型と比較するとイメージが大幅に変わっているはず。これまでのCR−Xはフォミュラーカー的でキビキビしていた反面、コントロール性はよくなかった。限界に達すると急にバランスを失ってしまうのである。新型は非常に評判のいい現行シビックと同じサスペンションを採用。きっとキビキビ感は薄れたと思うが、コントロールする楽しさは倍増しているに違いない。
新型CR−Xのライバルは何だろう? このクルマ、価格はけっこう張る。例えば1600cc車に、絶対必要なエアコンとオーディオを付けただけで**万円。アルミやエアバック、ABSを装着すると、排気量の大きいMR−2やプレリュードくらいのプライスになってしまうのであった。ミッドシップといった強烈な個性があればこの価格も納得出来るのだが……。
一般的に考えれば、ライバルはコンパクトなサイズと2シーターのオープンといった点でユーノスロードスターあたりが候補に上がる。でもロードスターはマニア度の高いユーザーに好まれており、この手の層は案外CR−Xのようなクルマに興味を持たない。MR−2も価格は近いものの、これまたミッドシップに憧れているユーザーが多くCR−Xの方を向きそうもない。そう考えると、バッティングするのはレビン&トレノやシルビアあたりか?
この2車、動力性能や価格を見ると、けっこう近いものがある。なかでもCR−Xの1500ccモデルはレビン&トレノの売れ筋であるハイメカツインカムの1600cc(エアコン標準装備のレビンSJで152万4千円)やシルビアQ,sと実力伯仲の戦いになるだろう。ということで、おすすめグレードはVXi。これにエアコンとオーディオを付けると約**万円。ランナバウトとしては面白いと思う。