ひと昔前は『ボーイズレーサー』とか『ホットハッチ』などと呼ばれ、1、6リッターの2BOXスポーティモデルが大いに盛り上がったもんだ。きっかけは初代ゴルフのGTI人気だったんだけど、シビックのツインカムモデルが登場してから完全にブーム状態。各社このクラスのハイパワーバージョンを登場させている。
ところが、だ。このところ人気は超低迷。パルサーやカローラFX、ファミリアのツインカムグレードを見ても売れ行きは微々たるもの。もはやノンターボのFFでハイパワー路線を突き進んでいるのは、シビックとミラージュだけになってしまった。
 しかし生き残ったということは強烈な魅力を持つということでもある。なかでもシビックのハイパワーバージョンであるSiRは、今でも根強い人気をキープする。今月はこいつを分析したいと思う。


シビックシリーズの人気を支えているのは、誰が何と言ってもVTECエンジンだろう。元々はレースから生まれた技術ながら、このバルブシステムを持つエンジンに共通するのは速さじゃなく”気持ちの良さ”である(もちろん速いけどね)。とにかくVTECのパワーフィールは素晴らしい。高速側のカムに移ると明らかにエンジン音は変化。7千回転を超えてレッドゾーンに飛び込むまでのサウンドとパワーフィールは、ほとんどレーシングエンジンを思わせる。日本車で唯一「カムに乗る」という雰囲気が味わえるのだ。
 VTECが出る前のハイパワーエンジンはこうじゃなかった。街中での使い勝手を考えると低速トルクがまったく足りない。かといって低速トルクを太らせると、高速域で伸び悩んでしまう。トヨタ御自慢の5バルブエンジンでさえ、VTECと比べると低回転域と高回転域はイマイチである。そういった弱点をカバーするために『世界一のエンジン技術を持つホンダ』が開発した新兵器がVTECである。シビック用の1、6リッターはリッター当り106馬力をマーク! ハイチューンのターボエンジン(例えばアメリカ仕様のスープラターボ)よりパワフルなんだから凄いじゃないか。

 今回も久々にSiRの試乗をしてみたけれど、パンチは強烈。ほぼそのままの状態でN1レースに使えるというのも解る気がする。だってグループAレースの始まった84年は、ホンダのワークスシビック(ドライバーは中嶋悟)でさえ170馬力程度だったんだもの。加えてボディは軽く、パワーウエイトレシオは6、18s(旧型は6、31s)。ちなみに5バルブエンジンを搭載するライバルのレビン&トレノGTアペックスは6、81sだから、勝負にならないくらいシビックのスペックは強力。
キッチリとレッドゾーンの8500回転まで引っ張れば(カッキーンと気分よく回る)、箱根のキツイ登りもまったく気にせずガンガン走るのだから凄い。動力性能で不満を感じることはまずないだろう。
 エンジン同様に高く評価したいのは、このシビックからハンドリングがよくなったこと。旧型シビックはサーキットのように滑らかな路面だと速かった。ところがデコボコの多い公道ではメロメロになってしまい、アクセルを開けると怖いくらい。サスペンションストロークが短いWウイッシュボーンの悪い面だけしか感じなかったといってよかろう。現行モデルは1ランクどころか、2ランクはレベルが向上。峠道を走って「こりゃホンダのクルマじゃない!」と思ったくらいしっとり粘る足に仕上がっている。運転がうまい人なら、コーナーを一つクリアしただけで旧型との違いが解るに違いない。
 唯一の弱点は価格。エアコンだのオーディオだのを付けると、190万円に届いてしまう。総支払額にすれば220万円コース。1、6リッターということを考えると、やや厳しい金額じゃなかろうか。実はこのクラスのスポーティモデルが売れなくなった最大の理由は価格。メーカーも本気売りたいと思うなら、フル装備状態の総支払額で、200万円程度にして欲しい。そうすれば、またまた注目のクラスになると思う。

 シビックは現行モデルが5代目にあたる。初期型から簡単な紹介と、バイヤーズガイドをお届けしたい。
<初代>最初のシビックは排気ガス規制が始まる直前の7*年に登場。ころんとしたデザインを持つボディのサイズは、今のシティよりもコンパクトだった。エンジンは希薄燃焼方式を採用(CVCCエンジン)し、排気ガス規制をクリアしている。
 若い読者は知らないだろうけど、初期モデルには『RS』というツインキャブ仕様のスポーティエンジンがあった(もちろん排気ガス規制はクリアしていない)。このエンジン、レースにも多数使われ当時は憧れの存在。現在生き残っている初代は、このRSがほとんど。相場はあってないようなもの。60万円くら出せば捜せる。
<2代目>なにがスーパーなのか知らないけど、とにかく『スーパーシビック』と呼ばれた。このクルマを使ったワンメイクレースなんかも行われ、ボクも出たことがある。



 初代は大成功を納めたものの、地味すぎた2代目は売れ行き低迷。性能的にも今のシビックと比べれば話にならない(最高速は最もスポーティなグレードでも155qくらい)。こうなるとユーザーも冷たいもの。中古車としても売れず、ほとんどのスーパーシビックはスクラップ行きとなってしまった模様。
 今回も中古車を探したのに、全然見つからなかった。欲しい人は街中で見かけた時に声でも掛けて(駐車してるクルマのワイパーに手紙を入れるのも効果的)、売って貰うしかない。

<3代目>2代目が地味すぎたのを反省し、大幅なイメージチェンジを敢行。結果、大ヒットとなったモデル。エンジンもこのモデルからホンダらしくなっており、1、5リッターのベーシックエンジンでさえ、当時のライバルと比較すれば強力だった。
 少し遅れて登場した1、6リッターツインカムを搭載するSiは、F−1にデビューする1年前の中嶋悟選手の手によってグループAで暴れまわる。このときボクは2リッターのスカイラインRSでグループAに出ており、シビックにはストレートで簡単にブチ抜かれた(もちろんコーナーでもやられたのは言うまでもない)。
 中古車は今でも多く流通しており、86年式で30万円前後。エンジンは丈夫なものの、ボディに問題を持つ中古車が目立つ。ボディさえしっかりしていれば現在の基準を持ってしてもけっこう速いと思う。FFのドラテク入門用には最適かもしれない。

<4代目>ボディスタイルは人気だった3代目と似たイメージでまとめられた。でも細部の仕上げはさすがに時代の流れに乗ってモディファイされ、これまたヒットとなる。ホンダは2代続けて人気車になるケースが少なく、初めてジンクスを破るモデルになった。
 エンジンは最初だけ4代目と同じ4バルブツインカム。途中からレーシングエンジンのノウハウを投入したVTECバージョンが加わる。こいつの実力については説明するまでもなかろう。
 デザインが素直ということもあってか「現行モデルよりも好き」という人が多く、中古車相場は高めに張り付いたままだ。90年式で130万円以上する。これは現行モデルの91年式とほぼ同じ。SiR−Uは流通台数も多くないので、当面は人気が続きそう。

最近のマクラーレンはぶっちぎりの勝利から遠ざかっているのの、エンジンに関してはまだまだホンダのアドバンスは大きい。ところが本業である市販車の分野ではここ2〜3年負けが続いている。ま、コンチェルトに始まり、アコード、レジェンドと、思いっきり地味なクルマばかり作っているのだから無理もない。
「これじゃいけない!」と思ったのだろう。ホンダの動きがガラリと変わってきた。社長もどちらかといえば家にこもりがちの人から、元気のいいオジサンに交代。急速にホンダらしさを取り戻しつつあるように見える。そんななか、登場してきたのが今度のシビックだ。結論からいうと、これがけっこう魅力的。TVのCMからして違う。売れ行き不振のアコードのTV・CMは飛行船が火を吐くというワケのわからん内容だったのに、シビックはBGMも元気。ショールームも日曜日はけっこう人が集まっているようだ。



 ただこのところ全般的に新車の売れ行きは落ち目。なかでもシビックが属する大衆車クラスの環境は非常に厳しい。例えば6月に発表された新型カローラは、早くも大幅値引きをしなくてはならないほど売るのに苦労している状態。ホンダはどういう魅力をシビックに付けたのだろう?ポイントは価格設定である。1500tクラスはハンバーガーの390円セットみたいなもんで、安くてソコソコうまければよい。ところがカローラはグルメを嗜好したためライバルのハンバーガーより高価になり、コーラとポテトを付けると500円以上になってしまう。
 それならファミリーレストランのランチの方が並ばなくていいし、ボリュームがあってうまい。ちなみにこの場合のファミリーレストランとは、160万円でフル装備のプレセアや、シルビアなんかを想像してもらえばいい。シビックはどうか? 価格はパワステ、パワーウインドゥが装備される売れ筋の3ドア1500MXで115万8千円。これはカローラよりはややいいものの、決して安くはない。

 ただ、カローラのようにグルメ嗜好で高くなったのとは少々違い、ボディサイズそのものがググッと大きくなったのだ。こいつはビックマックのようなもので、ちょっとばかり高くても価値はある(4ドアなどは全幅が5ナンバー枠一杯の1695o。全長はコロナと同等の4395oもあるので、充分立派)。しかもインテリアは思いきりシンプルになり、好感が持てる。ちょうど新築のワンルームマンションといった感じ、といえば解ってもらえると思う。確かに安っぽいけど、こういった割切りは支持されると思う。
クルマの内容はどうだろう? まず目につくのが170馬力のV−TECを搭載するSiR/2。このエンジン、ちょいと前のグループA並の実力なのに加え、ボディは軽くパワーウエイトレシオは6、18s(旧型は6、31s)。ちなみにライバルのレビン&トレノGTアペックスは6、81sだから、勝負にならないくらいシビックは強力。キッチリとレッドゾーンの8500回転まで引っ張れば(カッキーンと気分よく回る)、箱根のキツイ登りもまったく気にせずガンガン走るのだから凄い。動力性能で不満を感じることはまずない。

 それより驚いたのはハンドリングがよくなったこと。旧型シビックはサーキットのように滑らかな路面だと速かった。ところがデコボコの多い公道ではメロメロになってしまい、アクセルを開けると怖いくらい。Wウイッシュボーンの悪い面だけしか感じなかったといってよかろう。新型は1ランクどころか、2ランクはレベルが向上。峠道を走って「こりゃホンダのクルマじゃない!」と思ったくらいしっとり粘る足に仕上がっている。運転がうまいお兄さんなら、コーナーを一つクリアしただけで旧型との違いが解るに違いない。
 売れ筋の1500tモデルはどうだろう。これはエンジンの馬力が少なくなるだけで、味付けはまったくSiRと同じ。外観もインテリアも差はない(黄色いカラーは選べない)。エンジンは3種類あるが、試乗会場にはお値段の高いV−TEC仕様しかなかった。VTiというグレードは普通の1500tより30馬力アップながら、エアコンやカセットを付けると160万円弱。
もちろんハンドリングやエンジンは170馬力仕様の弟分だけあって素晴らしいものの、少しばかり高すぎるのが難点。買うなら100馬力のMXで充分だろう(外観や足回りはVTiと同じ)。そうそう。新型シビックはけっこう4ドアに力が入っていたりする。『シビック・フェリオ』なんて名前を付けたくらいで(次期型からは単なるフェリオになると思う)、新しいユーザー層を開拓していこうと狙っているようだ。

 シビッククーペのスタイルを見て「あらら。こいつぁカッコいじゃないの!」と思った。4ドアセダンはちょいと目がギョロギョロし過ぎてるけど(個人的にゃ3ドアが好き)、クーペだと前後のバランスが抜群によろしい! となれば即座に乗りたくなってしまうのがCTの悪いクセ。先月のGTOに続き、1泊3日のスケジュールでロスまで出張ざんす。
 簡単にクルマの紹介をしとく。これまでウワサされていた「旧型と同じパワーユニットを使うらしい」という情報は大ウソであった。従来型を流用してるグレードもあるんだけど、日本に導入されるのはアッと驚く新エンジン。何と1、6リッターのVTEC−Eなのだ。最高出力こそ120馬力前後(現時点じゃ未定)と日本版1、5リッター3ステージVTECより少ないが、最大トルクは太い。
 しかもマルチマチックと組み合わされるそうな。トルクがタップリあるためリーンバーン領域も広いから、実用燃費は日本仕様VTiより良いという。ちなみに現地価格はWエアバックやAT、スタイリッシュなアルミホイール、エアコン、オーディオ付きて約150万円。日本でのプライスはおそらく3ドアVTiと同じくらいになりそう。期待していいぞ!

 ほんじゃ試乗といきましょう。新エンジンの味見をするため、ミッションはマニュアルをチョイス。ワインディングロードに向かってフリーウェイを飛ばす。リーンバーンエンジンと聞くと、ヘニャヘニャの根性無しエンジンを想像しちゃうけど、乗ってみたらなかなか。アクセルを踏み込めば、グイグイ加速してくれる。5千回転以上の元気さがイマイチなのを除くと、十分スポーティだな。
 面白かったのは「早くシフトアップしろよ!」インジケーター。普通の加速をしていくと、2500回転くらいで緑色の矢印がインパネに点灯するのだ。これに従えば、最も効率のいいタイミングでエンジンを使えるようになっている。キチンとクルマの言うことを聞くと、流れの良い道路状況なら軽くリッター当たり15kmくらい走るらしい。マルチマチックの方は、勝手にコンピューターが適当なギアレシオを選ぶ。偉いぞ!
 絶対的な実力をチェックするため砂漠のテストコースで全開すると、160kmの巡航も軽々オッケーちゃん。その気になればクーペとして恥ずかしくない走りを見せるし、制限速度を守ると東京から越後湯沢のスキー場まで往復しても(400kmある)ガソリン代が2500円で済んじゃう経済性を発揮するワケね。


 次はお約束のハンドリング。当たり前のことながら、限界内で走ってもハンドルを切ればソッチに曲がるだけ。クルマの安全性を見るためには、イヤでもテールを流してみなければならない。イキオイ、写真のような走りになっちゃうのだ。好きでやってるんじゃないぞ! さ〜て、シビッククーペはどうざんしょ? ジツはこのクルマ、燃費志向ということで全然期待していなかった。
 ところが、である。テストコースを攻めてみたら素晴らしいじゃないの! 後で解ったんだけど、足回りのスペックはVTEC−EもVTECも同じ。むしろホイールのリム幅が広いため、Eの方がシャープですらある。100km以上出てる高速コーナーで思いきりタックインをカマせてみても、トッ散らかる気配は皆無。めちゃコントローラブルなので、写真みたいな走りなら自由自在に出来てしまう。
 今度のシビックはカーオブザイヤーの最有力候補らしい。何でも燃費の良さとマルチマチックが評価されているとのこと。ボクも燃費に魅力を感じスキーの足として3ドアのVTiを買おうかと考えてるんだけど、クーペに乗って気が変わった。だってコッチの方がカッコいいしオシャレだもの。3月の日本発売が楽しみだ!

 日本だと「シビック=走り好きなヒトの御用達」的イメージがあるけど、アメリカはそうじゃない。どちらかと言えば、環境にやさしいクルマとして評価されているのだった。新しいシビックも、アメリカ仕様のエンジンは『LEV』という規制をクリア。こいつぁ普通のエンジンと比べ排気ガス濃度が半分以下しかない。只でさえクリーンな触媒付きガソリンエンジンの半分だぞ! 加えて今回試乗したリーンバーンは、燃費も抜群。んなワケでシビックに乗ってればアタマが良く見えるって寸法だ。ここまで説明すれば質問の答えも解るでしょ? シビックのイメージを壊すようなグレードは不要ということだな。インテグラとプレリュードにはVTECがある。