実は「デザインがいい!」と思った日本車って、初めてである。もちろん見慣れれば好きになった、というクルマは多い。こらもうニンゲンでも同じコトだ。初めて見て「う〜ん!」とマイッてしまう美形など、そう居ないです。クルマの場合もそう。ここ最近だとプジョー206とフェラーリF355くらいのもの。最も気に入ったのはヘッドライトからAピラーに掛けて。今までの日本車になかった大胆かつ個性的な面構成を持つ。全体のバランスも素晴らしい。他に似ているクルマがない、というあたりで一段と評価高まる。
 ボディカラーが多いのも日本車に無かった魅力。どちらかといえば「コストアップ要因なのでカラーバリエーションを少なくしました」みたいなハナシばかり聞く。でもコンパクトカーって、やっぱり色は大切。アイリスレッド(イチヂクの果肉みたいな微妙な色合いのメタリック)など、とってもオシャレ。デザインとカラーだけでフィット買ってもいいな、と思いつつドライバーズシートに座ったら、これまた大いに驚く。イメージ的には2000ccクラスの乗用車に近いのだ。ディサイズほぼ同じデミオと比べれば、圧倒的な差。



 コンパクトカーで最も大切なのは室内空間だと思う。ボディサイズが大きければ多少空間の使い方ヘタでもキチンと4人乗れるけれど、コンパクトなクルマの場合、狭ければダイレクトに実用性を落とす。フィットのドライバーズシートに座ると、とうていコンパクトカーに感じない。「狭く感じない」でなく、積極的に「広い」のだ。フロントガラスの面積や、助手側のピラーまでの距離もしっかり確保されているから、決して「広く見える」んじゃない。シート自体もユッタリしてるな、と思ったら、オデッセイと同じフレームを使っているそうな。贅沢だぞ!
 さらに驚くのがリアシート。これまた広いのだ。運転席を身長183cmのワタシに合わせたまま、キチンとリアシートに座れるじゃないの! ヴィッツなど全く相手にしない(ヴィッツはシートの座面が小さくチョンと腰掛けるみたいな感じ)。シビックの4ドアよりユッタリしており、アコードに迫る。この広さあれば、大人4人でロングドライブしたって何の不満もないだろう。どうしてこんなに広いの? と不思議になるほど。決して豪華でないけれど、インテリアのセンスも良く、イタリア車のような明るさ。

 トドメ刺されたのは「どれどれ」とリアシートから振り返って見たラゲッジスペース。「ほんとかようぅぅぅ!」であります。4人座っても1500ccクラスのセダンと同等のトランクスペースまで残ってるのだ。泊まりで旅行に行く家族4人分の荷物なども楽々飲み込む。ボディサイズを見ると全長3830mm×全幅1675mm。ヴィッツが全長3610mmで、ファンカーゴ3860mmだから、おおよそのサイズは解ってもらえると思う。最も近いのは全長3800mm×全幅1670mmのデミオ。
 これで走りが良ければカンペキだぞ、とハンドル握る。Dレンジをセレクトし、アクセル踏む。フィットのATは金属ベルト使う無断変速CVTだけれど、これまでホンダ車のCVTは走り出す時に違和感あった。なぜか? あまり知られていないけれど、CVTというのはあくまで『変速機』本体のこと。マニュアル車ならスタート用にクラッチを使い、普通のAT車だとトルクコンバーターで走り出す。他のメーカーはCVTとトルコンを組み合わせて使うため、スタートが普通のATと同じでスムース。ホンダのみ油圧クラッチを採用しており、これが違和感の原因になっていたのだ。

 ただ効率から言えば「滑らせながら走り出す」トルコンよりマニュアル車と同じシステムの油圧クラッチの方が有利。だからこそホンダはトルコン使わないワケ。その副作用として「違和感ある走り出し」が出てしまっている。フィットに乗ると違和感ナシ。滑らかにスタートし、そのままスクーターのようなスムースな加速をしていく。ここまで滑らかなら油圧クラッチだっていいと思う。絶対的な動力性能も十分満足出来るレベル。聞けば最高速は170km少々まで届くという。ヴィッツの1000ccで155km程度。1300ccが170kmだから、むしろフィット優速。
 それ以上に気に入ったのはハンドリングである。写真を見て欲しい。もうどんな姿勢に持ち込むことも可能。日本製コンパクトカーと言えば「ハンドリングより乗り心地」を重視したモデル多いのだが(ヴィッツもリアサスの横剛性低く、おまけにグニャグニャ。コーナー楽しくない)、フィットは楽しいのなんの! 標準仕様の14インチタイヤでヴィッツのRSと同等のシャキリさを持っており、しっかりコーナー曲がってしまう。タックイン仕掛ければ、狙い通りテールスライド。どんなに横向いても適当なカウンターステアあててやればすぐスタビリティを回復する。

 オプション設定の15インチ仕様車に乗り換えてコースインすると、ガラリとキャラクター違う。ステアリングフィールが2ランクくらいシャープになり、コーナリングスピードもハッキリ解るほど高い。その代償として「適当な乗り心地」を失うことになるけれど、それ以上に得る楽しさの方が大きいと思う。タイヤサイズだけでこれほどキャラクター変わるクルマも珍しい。自分で買うなら少し迷って15インチ仕様を選ぶ。下りのワインディングロードなら下手なスポーツモデルも食えるぞこりゃ。ハンドリング、100点です。
 ちなみにシャシは新設計。次世代のコンパクトカークラス用に企画されたもので、早ければ年内にデビューすると言われている次期型キャパもこのシャシを使うそうな(公式コメントでないです)。サスペンション形式はフロントが新設計のストラット式。リアに小型で簡易な構造がら、アライメント変化少ない『H型トーションビーム』タイプを採用している。このリアサス、横剛性高く、なかなか優れている。ヴィッツと最も違う部分であろう。ちなみにヴィッツの兄弟であるファンカーゴ&bBのリアサスは横剛性あって良い。ヴィッツだけアカンのだ。

 また、最近はトヨタのGOA以上の評価を得ているホンダの衝突安全基準『G−CON』に完全対応しており、リッターカー級のコンパクトカーでありながら、高い評価を得ているシビックと同等の性能に達しているそうな。また、ホンダ独自の基準である「レジェンドクラスの大型車と衝突した時のサバイバル能力」もキチンと持たせており、50km同士の衝突(相対速度100km)までなら耐える実力。コンパクトカークラスの衝突安全性能じゃ間違いなく世界トップレベルだと思う。誰にでも安心してすすめたい。



 エンジンはさらっと行く。新開発となる『i−DSI』はエンジンにとって重要な3大要素(良い圧縮。良い混合気。良い火花)を徹底的に追及したもの。いわゆる「基本に帰った」設計。点火プラグを1気筒あたり2本持つのが特徴だ。アクセル開度などにより点火を別個に行うなどの高度な制御を行う。コンピューターの進化などで、やっと可能になった制御方法だという。撮影の時に排気音聞いていると、従来の日本車とひと味違っていた。圧縮比高い欧州車のエンジンみたいな音質。
 組み合わされるミッションはCVTのみ。マニュアルよりCVTの方が効率良くエンジンを使えるとのだという。カタログなどには書かれていないけれど、アクセル踏む速度によって三つのマップを持つ(燃費重視がD1。加速重視はD2。素早くアクセル踏めばRSマップとなる)。試してみたら、アクセルを素早く操作すると加速時に5800回転キープする「RSマップ」に入る。もちろん『S』レンジ選んでいれば、常に「性能最優先」のギア比を選ぶから、ワインディングロードなどで楽しむときは積極的に『S』レンジ使って下さい。

 そうそう。室内空間は「大人4人+人数分荷物」を乗せられるくらいのキャパシティと表現したけれど、もっと具体的に書けば「ヴィッツやデミオと比べればキャビンスペースで大幅に勝り、ラゲッジスペース圧勝。ファンカーゴと比べても居住性で優勢」となろう。ラゲッジスペースは天地方向でファンカーゴに負けるも、前後長があるため絶対的な積載量からすれば引き分け。ヴィッツ1000tの燃費でファンカーゴの使い勝手といった感じ。こんなクルマ、今までありませんでした。むろんヨーロッパにだって無い。
 また、リアシートはワンタッチで前に倒せる(6対4の分割)。その際、フロントシートの背もたれに引っかかることもあるが、ヘッドレスト横のレバーでも前後のスライド操作出来るのが凄い! 前に回ってフロントシート前に出して……なんてめんどくさいことしなくていい。おそらく世界初の装備だと思う。リアシート収納すれば、これまた予想もしない広大なスペースが出現。実測で1720mm! さらに助手席も倒せば全長2400mmの長尺物まで積載できてしまう。こらもうリッターカーというより、ミドルクラスのステーションワゴンに限りなく近い運搬能力。100点です!
 景気良い時はあまり気づかない「ムダ」も現在のような環境になるとハッキリ解る。腹一杯食べて飲む人生があまりカッコ良くないように、ムダもアタマ悪く感じてしまう。毎日の買い物に大型のセダン使うなんての、ナンセンスです。ただコダワリのないクルマにゃ乗りたくない。小さければいいというもんでもないのだ。自分の生活に合ったサイズで、しかも乗っていて豊かな気持ちになれるようなコンパクトカーが理想。ということでフィット一台あれば、近所の買い物からスキーまで全てこなせ、しかも燃費はリッター15km前後。排気ガスもクリーン。プライベートな移動手段として考えると、理想に近い存在だと思います。