おそらく「バイクなんて簡単に乗れるやんか!」と思う読者は多いことだろう。だったら110kgしかないボディに200馬力以上のエンジン積んだバイクならどうよ! TVで放映してる世界GPの500ccクラス見てると、200km近く出てると思われる直線でフロント浮く。つまりムヤミにアクセル開けようもんなら、どこでもおっ立つということ。シートベルト無しの乗り物としちゃ、モンク無く世界最速だろう。もはやワタシら知ってるバイクと全然違う乗り物のように感じる。
 ジツはムカシから機会あったらぜひとも乗りたい、と思っていた。ある日、福井さんというホンダの常務(副社長の次にエラい)に一度乗ってみたいと思ってるんです、と言ったところ「シーズン終わったらバイクのジャーナリスト向けの試乗会があるんだけど、どう?」だって。そんな魅惑的な誘いを断れるワケない。しかし期日迫ったのに連絡なかったりして。「いつ試乗会あるんですか?」とホンダに聞いたならば「えっ? ホントに乗りますか?」。普通、乗らんワな。

 実際、さすがのワタシも正直ビビる。試乗会当日「帰ろうかな」と思ったほど。だってメチャクチャ速いんだぜ! 見てると。ホンダは今年もGP500クラスでチャンピオン獲ったから、世界でイチバン速いバイクということ。加えて当日集まっていたバイク乗り達のメンバー見ると、バリバリ伝説の取材行ってた頃にGP500走っていた八代選手や、現役レーサーがズラリと並ぶ。ま、F−1の試乗会の中に、そこらのオッサン混ざるようなモンだ。いや、オリンピックのジャンプ競技やってたOBの中に、ワタシ混ざるのと同じ。いずれにしろ胃が痛い。
 順番になってしまった。さすがにホンダ側もイキナリGP500じゃキツいと思ったのか、鈴鹿8時間耐久レースで優勝したRC45(これもワークスマシン)から。しかし普通じゃないのよね、これまた。150kgほどの車体に、180馬力以上のエンジン積む(いずれも公表値でなく勝手な推測。間違ってたらゴメンなさい)。大きなジャンプ台でなく、小さい方から飛んでね、というようなモンだ。これだって十分スゴいよ! 唯一の救いはセル付いてて、クラッチスタート出来る点。

 コースインして走り出すと、速いとか速くないの世界でない! いわゆる「ワープ」が最も近い表現か? ワープしたことないっすけど。レース用バイクのシフトペダルは、1速が上。2速からは踏み込んでいく。どのギアもほとんど瞬時に回りきる。こりゃイイ、と思ったのがミッション。耐久レース仕様ということで、半自動になっていた。クラッチ切らずアクセルも戻さず、シフトペダル踏むだけでOK。意地で全開して(直線番長だが)ピットインすると「アクセル開けてたじゃない」と感心された。皆さん「あらら。ホントにジャンプしちゃったよ」と思ったんだろう。
 いよいよGP500だ。スペックを紹介しておくと、エンジンは2サイクル4気筒の500cc。毎回転爆発する2サイクルなので、500ccから200馬力以上を引き出す。コレで3000ccのF−1エンジン作ったら1200馬力じゃないの、と思うだろうけど、残念ながらF−1じゃ2サイクル禁止されてます。車体はカーボンやチタンに代表される最先端材料を惜しげもなく使い、わずか110kg程度まで軽量化されている。大ゲサに表現すると、スクーターみたいな軽快さ。

 エンジン始動は押し掛け。掛からんかったらどうしよ、とも思ったけど、無事スタート。ま、これでも20年前はレースやってたのだ。チェックを兼ねて1ラップ流す。少しアクセル開けただけで速い! コーナーは太いスリックタイヤ履くので、全然限界がワカラン。レース見てるとヒザ擦ってるけど、ワタシのスピードじゃタイヤ暖まらないので、きっとイッキに滑ると思う。1億円以上するだろうレーサー壊すワケにいかんから、耐久レース用RC45と同じく直線番長に徹する。
 1ラップし、いよいよ全開試す。果たしてフェラーリのエンブレムのごとく、おっ立つのか? 慎重にアクセル開けてくと、けっこうイケるじゃない! もちろんメチャクチャ速い。サーキットのストレートも、あっという間に終わる。ここで待ってるのがブレーキ! これまたバイクのブレーキとしちゃ宇宙人のように効く。4ラップほど全開とフルブレーキを繰り返してたら、カンペキにウデにチカラ入らなくなってる。

 考えてみれば猛烈な加速や、急減速は全て筋力で押さえ込まねばならない。ワタシのバアイ、極度の緊張から通常以上のチカラを出していたようで、ピットインしたら両腕とも虚脱状態。ちゃんと乗ろうとしたら、鍛え直さないとアカン。信じらえないかもしれないが、乗り心地は「高級」と表現すべきモノだった。きっと部品の精度や回転バランスのレベルが全然違うのだろう。フェラーリやロールスロイスより高級な印象。3日後、15年ぶりにバイクを買ってしまいました(ホーネット)。