<FR車/シルビア>

 FRの”華”は「パワーオンでテール流すこと」であろう。しかし最近パワースライドを否定するFRが多くなってきた。一連のトヨタ車を見るとよく解る。アリストなどアクセル開け過ぎたバアイ、滑りを感知するや自動的にスロットル絞っちゃう。だったら280馬力もいらないやんか! さらにテールを滑らそうモノなら、即座に姿勢制御装置が作動。これまたドライバーの楽しみを許さない。警官と一緒にクルマに乗ってるみたいだ。ハンドリングがイイと巷間言い伝えられるアルテッツァもそう。確かに「間違ってテールが流れた時」のコントロール性は良好ながら、楽しむことを許してくれないのだった。つまり直線だけのFRなのだな。
 おそらくチーフテストドライバーの趣味なんだろう。こういった味付け、高級乗用車としてのFR車なら納得できる。ステアリングフィール向上のためFRレイアウトを採用するのだから。でも積極的にハンドリングを楽しむためのモデルだったら0点だ。ワタシはアリストが「プロスペックの金持ちド素人向けゴルフクラブ」に思えてならない。くどいようだけれど、アクセル開けてもパワーでテールを滑らせられないFRはFFと同じである。誤解無きよう書く加えておくと、トラクションコントロールを否定するのでない。ハンドリング自慢のハイパワーFRだったら、少なくともトラクションコントロールのカットスイッチを付けて欲しいのだ。



 さてシルビアだった。日産はパワーでテール滑らせることを否定していないという点で、世界的に数少ないメーカーである。これをもってして「幼稚である」と切り捨てるヒトがいてもいい。そのヒトにとってみれば、テールを滑らせることは楽しくないか、出来ないのだろう。こらもう趣味の違いみたいなモノ。ステアリングフィールフェチやってなさい、と言っておく。ハナシは平行線ね。ただ人間という動物にとって「スライドする」という挙動は余程楽しいことらしく、スキーやスノボ、ボートに至るまで、道具を使ったスポーツの基本となっているのはドリフト。スキーのショートターンなぞ、ドリフトの連続なのだから。
 日産の開発陣は、パワーオンでのテールスライドから逃げていない。むしろそいつをキチンと使いこなせるよう、真剣に考え対処している。後輪のグリップ限界を落とさず、しかもコントローラブルにテールが流れるように味付けするというのは非常に難しいノウハウを必要とするに違いない。少なくとも「タイヤの能力をフルに使えば誰が乗っても出るタイムは同じ」などと公道じゃ実現不可能なことを主張するトヨタのFR車テストチーム(FF車のテストチームは良いクルマを作っている)じゃ絶対出来ない味付けであろう。「楽しく走れるクルマがない」とお嘆きの読者諸兄には、シルビアかGT−Rをプッシュしておきたい。すっごく楽しいですよ。

  <FF車/シビック・タイプR>

 FRの”華”がパワースライドなら、FFの”粋”は「FRより速い走り」であろう。実際、良くできたFFなら、同じパワーのFRよりサーキットのラップタイムで勝る。インテグラ・タイプRに勝てる同クラスのFR車って、あるだろうか? 今のところ無い。イギリスのツーリングカーレース見ても、今やFFはFRより速いほど。ちょっと古いクルマ好きなら、FRのサニーと死闘を繰り返したFFシビックなど覚えていることと思う。絶対的なパフォーマンスからすれば、FFだってイケてるのだ。しかもFRより速く走るように作られたFFなら、ハンドリングもピュアで楽しい。ホンダのタイプRシリーズは世界的に評価されているほど。
 FFとマッチするエンジン特性は、一定のトルクを持ちながら高回転まで回るというタイプ。ターボに代表されるドカンとトルクの盛り上がるエンジンだと、その時点で貴重な前輪のグリップを失ってしまう。大排気量のノンターボもダメ。重いエンジン積めばアンダー地獄に陥る。ホンダが得意とする小型軽量高回転型エンジンは、ハンドリングを追求するスポーティなFFにピッタリと言ってよろしい。その上で、可能な限り高いグリップ能力を持たせたサスペンションと組み合わせなければならぬ。アライメント変化の少ないマルチリンクかWウッシュボーンが必須条件。ここまで絞り込んでくると、FFでも楽しいハンドリングが転がり込む。



 アルファ156はどうか? この際、セレスピードは忘れよう。大ムカシにイスズが世に問うた『NAVI5』と同じだからだ。中ブカシ入れるなど多少エレキのチカラによって賢くなっているも、シフトアップしていくときのカッタルさはそのまんま。荒っぽいがワクワクする味を残すF355のF1たぁチト違う。エンジンは大いに気に入る。フェラーリのV8を半分にしたようなフィールで、イタリア製高級エンジン独特の管楽器風サウンドを味わえるのだった。アクセルワークに対しての反応も敏感なので、FF乗りこなしに必要とされる微妙なアクセルワークにもカンペキに答えてくれる。乗る度に「ひぃひぃ歌わしたるでぇ!」と思う。
 ハンドリング恐ろしく個性的です。ホンダがサーキット育ちの正統派だとすれば、156は「インチキだが帳尻を合わせている」というあたりになろうか。正しいアンダーステアさえ出せない中級クラスなら「キビキビしてる」となるが、常時アンダー出せる上級者になると「いつ飛び出すか怖い」に変わる。156のハンドリングを「怖い」と表現できれば、相当の腕前だと自信を持って良い。しかし平気でテールを流せる手練手管のドライバーだと、これまた自由にコントロール出来てしまうのだ。デザインと同じく絶妙なバランスで成り立っている芸術家肌のハンドリングなのかも。ぜひマニュアルで楽しんでいただきたい。

  <4WD車/ランサーエボリューション>

 ハンドリングにおける4WDのテーマはジツに簡単。「いかにアンダアーステアをコントロールするか」だ。スポーツ4WDの歴史=センターデフのコントロールシステムといってもよかろう。最初のスポーツ4WDはWRCで大活躍したアウディクワトロだったが、こいつぁコーナーの手前で大減速し、ひたすら4WDの駆動力に頼った立ち上がり加速をするという走り方。その後、前後の駆動力配分を前後で変える『トルクスプリット』タイプが登場。最近は前後の駆動力配分を走行状況によって変化させる『可変トルクスプリット』タイプが主流になってきた。最前線の技術が投入されるWRCは、アクティブに前後の駆動力配分を変えている。
 も一つが『ロールセンター』というシャシの特性で対応するというもの。ロールセンターと重心を混同しているのか「とにかく低い方がいい」、と思いこんでいるヒトも多いようだけれど、大間違いである。4WD車の場合、むしろリアのロールセンターは高めに取り、挙動変化によってアンダーのコントロールを行う。アンダーオーバーは、ダンパーやスタビだけで決まるんじゃないことを知っておいて欲しい。これらの技術解析が大幅に進んだ結果、もはやFFのごとくコーナー入り口でタックインし、FRのようにパワーオンでテールを流せる4WD車が出現するに至った。ランサーエボリューションとインプレッサWRXはその横綱的存在。



 今回試乗したランサーなど、タマゲることにコーナリング中アクセル全開にするとテール流れる! 4WDだからパワースライドしている最中は前輪もスライドしてるので、FRのようなステアリングフィールが無いものの(具体的に説明すると、前輪はドッチを向いてるか手応えない)、そこはうまくしたもの。コッチだろう、と適当にカウンターを当てておけば、やがてグリップが回復した時に対応出来る。このあたりで昨日や今日に仕上げたハンドリングじゃないことが解るというもの。万一、真横を向いてしまっても、カウンター当てつつアクセルさえ開けていれば、前輪が姿勢を修正する方向で駆動するので、これまた事なきを得る。
 いずれにしろ上限パワー300馬力(実際は360馬力以上出てるそうな)というレギュレーションの中で戦われるWRCを見て推察されるように、様々な路面状況の中で最良の駆動力とハンドリングを実現できるのは4WDであることに異論あるまい。動物もアクティブ制御トルクスプリット4輪駆動だから素晴らしい運動能力を持つのだ。しかし4WDのスポーツーモデルを仕上げるのには優れた技術が必要らしく、今のところ深く満足出来る市販車作ってるのって、三菱とスバル、日産、ポルシェしかない。それにしても世界最先端のハンドリングを持つクルマが300万円で買える日本は、クルマ好きにとって恵まれた国だと思う。