お待たせしました! いよいよ試乗インプレッションである。やっぱり最初は売れ筋になってるローダウンバージョンから行きましょう!お約束通り動力性能からチェックしてみたい。Dレンジをセレクトし、アクセルを踏み込むと、あららららら! 予想外に元気ではないの。車重1340sに対しエンジンは130馬力の2リッターと、パワーウエイトレシオからすればイプサムやCR−Vと同じくらい。よってそれほど期待してなかったんだけど、ナカナカ速いのだ。おそらく1速のギアレシオが低いためだろう(自転車の軽いギアみたいなものでダッシュ力を高められる)。これだったら街中は十分キビキビ走れる。
ただワインディングロードに入り、キツい登りのワインディングロードに差し掛かると「も少しパワーが欲しいなぁ」と感じてしまうのも事実。スポーティでマッチョなスタイルのためパワフルな走りを期待しちゃうのだ。じゃ具体的にどのくらいの動力性能かと言えば、1500tのシビックくらいを想像してもらえばよろしい。試しにテストコースで全開にしてみたら、前面投影面積(正面から見たときの大きさ)が大きく、高速域になると急に空気抵抗も増えるため最高速は160q台後半といった感じ。でも140qくらいまなら加速力も良好。少なくとも高速道路でカッタルい思いをすることはなさそう。
つまりウンと期待するとガッカリするが、期待しなければ「こんなに走るの!」となる。ボクは全然期待してなかったので、速いと感じた。それにドライビングポジションは乗用車と比べて15pくらい目線が高い。それでいて後述するようにコーナリングスピードときたら普通のクルマと同じくらい高いのだ。助手席に編集者を乗せてワインディングロードを攻めてみたら、黙り込んでしまうほど。当面はこのくらいの動力性能で満足出来るだろう。この点についちゃ、ぜひともディーラーで試乗させてもらって欲しい。とは言え長く乗ってると飽きるだろうから、その時は後付けターボキット(おそらく30万円前後で発売されると思うぞ)でも装着してやればよろしい。
動力性能以上に意外だったのがハンドリング。テストコースでいつものように攻めまくったのだけど、ミニバンと思えないくらいシャープなのだ。これまでのクルマとイチバン違うのは、ロール感。背の高いモデルはハンドルを切った時に大きくロールするのだが、ローダウンバージョンときたら限りなくスポーティカーみたいなレスポンスを見せる。ハンドルを切った瞬間、ロールを伴わず(写真を見ても解るとおり実際はキチンとロールしている)、クリクリ曲がってしまうから面白い。しかもコーナリング速度は下手なセダン顔負け、というかスポーティモデルとしてもイケるほど。
こうなるとアカンのがシートだ。「オシリの部分を沈み込ませ、コーナーでの安定感を出しました」と説明されたのに、いざ限界まで攻めてみたらカンペキに役不足だということが判明。一生懸命足を踏んばって身体を動かないようにするんだけど、やっぱりズレてしまう。撮影した時みたいな速度域になると、ほとんどアクロバチックな体位をしなければならぬ。だからといってバケットシートにして欲しいとは思わない。ベンチシートだからS−MXは面白いのだ。単に「撮影するには苦労しましたよ」ということざんす。ローダウンバージョンは、ミニバンの皮をかぶったスポーティバージョンだと思ってよろしい。
読者の中には「ローダウンバージョンだと少し恥ずかしい。標準仕様を考えてる」というヒトもいるだろう。これを書いてるボクも、買うなら標準仕様にして好みのドレスアップしたい。もちろんコッチにも試乗してみた。走り出してすぐ感じたのが乗り心地の良さ。ローダウンバージョンと比べると2ランクくらいソフトな味付けになっており、路面からのツキ上げをほとんど感じなくなる(タイヤがソフトなSR規格というせいも大きいようだ)。だからといって普通のミニバンみたいにグニャグニャかというと、そうでもない。これでちょうどいい、といった程度だ。高速道路でのロングクルージングなら圧倒的に楽チン。
しかしワインディングロードに入ってペースアップすると、やや大きめのロールを感じるようになってくる。ローダウンバージョンなら軽いロールくらいでクリアするようなコーナーも、外側のサスペンションがほぼ沈み込んだ状態。恐怖感はないが限界時の挙動もトリッキーになるため、これ以上攻める気はしなくなってしまう。それでも普通のクルマと比べ、ソフト過ぎるワケじゃない。むしろローダウンバージョンがスポーティ志向なのだろう。その証拠に、シートの左右ホールド感も標準仕様ならガマン出来る範囲内。助手席の乗員がコロげまわることもなかった。
ギアレシオの違いもハッキリ体感出来る。コッチの方が平地での発進加速は穏やかで、おそらく停止状態から100qに達するまでのタイムを計れば標準仕様の方が無視できない差くらい遅いと思う。だからローダウンバージョン有利かとなれば、そうでもなかったりする。例えば2速が伸びきって3速に入るような登り坂だと、3速に入った途端スピードがジワジワ落ちてしまう。かといって2速だとフケ切ることに。標準仕様なら2速のまま一番オイシイ回転数を使える。このあたりは好みの問題か? ただ100qでの巡航燃費は標準仕様の方がいいだろう。両仕様の差は、主として乗り心地だと考えて欲しい。
三つ目の仕様である4WDにも試乗出来た。こちらは標準仕様がベース。スタートしてみると、意外にも4WD特有の弱点を感じさせない。最大のマイナス要因となるハズの動力性能でさえ、乗り比べないと解らないレベル。ノアやイプサムだと明らかにドタバタし、遅くなるのだが……。ホンダ式4WDは(滑った時だけ後輪にも駆動力を伝える)、わずか60s増で済むため影響が少ないのだろう。クルマに詳しいヒトでも乗り比べない限り判別することは難しいかも。少なくともボクは平地で走っている限り解らない。だって60sなら少し重い女性一人分くらいなのだ。
乗り心地やハンドリングはどうか? オデッセイでも感じたことだが、これまた上手にまとめてあるせいでFFと決定的な違いがない。一般的に4WDは余分で重い駆動系があるためドタバタしたり、ハンドリングに影響を与えるもの(良い時と悪いときがある)。これまた厳密に比較すると標準仕様より少しロールが大きいことに気付くけれど、やっぱり無視出来る範囲に収まっている。タイヤを変えただけで、このくらいの違いは出るというレベル。軽いことが良い結果になっているかもしれないな。でも技術レベルだって高いと思う。唯一の弱点は22万円高いこと。そしてホンの少し燃費が悪くなることくらいだ。もし「FFじゃ絶対ダメ」という地域に住んでいるなら、4WDでも性能が悪化しない貴重な車種である。
S−MXに乗ってて「こいつぁいいなぁ!」と感じるのがサイズ。長さはシビックより短い3950oしかなく、どこに乗っていくにも気にならない大きさなのだ。それでいて室内も信じられないくらい広い。こいつぁディーラーにでも行って実車確認して欲しいけど、大人4人がキッチリ乗れてしまう。RVRが最初に提言したリアシートのスライド機能(30p前後する)も非常に効果的。後ろにセットすると、レジェンドやセルシオよりユッタリしたレッグスペースが出現。お相撲サンのように大柄な男性が乗ってロングドライブをしてもストレスを感じない広さになる。前にセットした時のレッグスペースは、スポーツカーのリアシートくらいに減少しちゃうけれど、その分をラゲッジスペースとして使えるから嬉しい。
前後席の背もたれを倒すと、お待ちかねのフルフラット状態になる。サイズは全長2146o×全幅1180o。セミダブルベットくらいの広さを想像してもらえばよかろう。小学校4年生くらいまでのコドモが一人なら親子でも使える。ベットとして使うときのインテリアは凝りまくったようだ。中でも開かない側のドア部分に設けられた『リアシステムトレイ』と呼ばれるスペースは、使い途が多いと思う。例えばホンダの広報資料に出てた文を引用すると「ベットサイドテーブルとして大変便利です。ティッシュボックスが2個入る大型のボックスなどを組み込んだシステムとなっています」と、思い切り凄く恥ずかしいことが書いてあった。
健全(?)な使い方も可能。トレーの上にはファーストフードのランチボックスも置けるし、当然のことながらカップホルダーは人数分+1個の5つがある。最近安くなってきた大型の液晶TV+ビデオデッキでも設置すれば、車内をリビングルームみたいにして使えるだろう。ここで気になってくるのがシートの素材。写真で見る限り楽しくて明るいデザインなんだけど、触るとアカン! もの凄くゴワゴワなんだもの。丸く見える模様が少し盛り上がっており、けっこう硬い。素肌で座ったとしよう。その際、ゴワゴワな生地だと非常に不快なだけでなく、肌にシートと同じ模様のテンテンが付いてしまうに違いない。アメ車みたいに通気性がよく、ソフトでノメノメの素材だったらよかったのに。買ったなら、即座にシートカバーを装着するのも手かも。
ラゲッジスペースはどうか? セカンドシートが前後にスライドするため、定員乗車時のラゲッジスペースは可変式。リアシートに大人が乗ればたいして広くないけれど、前にズラせば最大で30p分も奥行きが稼げる。VDO方式(ヨーロッパで使われる計測方法)によれば340リッターのラゲッジ容量となり、これはS−MXより50pも長いボディを持つアウディA4のSWとイーブン。大人4人分のスキーグッズくらいなら飲み込んでしまう。「もっと積みたい」という時は、寝袋のように軽い荷物ならリアシート背もたれから上に乗せてもいい。SWより高さ方向の余裕は大きいので、この分有利だ。初めて見たのはセカンドシートの背面にあるポケット。サードシートは無いのでナニを入れるのか不明ながら、けっこう大きくて丈夫。遊び道具のマニュアルやオートキャンプ&スキー場の地図といったモノを入れておくのに重宝しそう。
セカンドシートを畳めば、容量は920リッターに増える。前後長も122pあるので、積み方を工夫するとMTBだと2台まで入るとのこと。スノーボードなんかを運ぶときは畳んだシート下の下にスペースがあるので、122p以上の長さでも大丈夫。ボクの板は150pだが(ヘタクソなのがバレるな)、無理せず積めた。ステップワゴンみたいに片側だけ畳めればさらに使い勝手は向上すると思うけど、まぁ贅沢は言うまい。壊れ物を積むならリアシートの背もたれだけ後ろに倒す方がいい。つまりリアシートだけフラットにするワケ。上下方向の余裕は少なくなる反面、前後方向のスペースを最大限に取れる。
最後に気になる安全性に付いて触れておく。衝突時の安全基準は日本国内の規制値のみクリアしている。この基準、50qでフラットバリア(コンクリートのカベ)に当たったケースの安全性を確保していればよいというもの。ノアやイプサムだと、実際の事故に多い車体の前半分だけ衝突させるオフセットクラッシュや、側面からクルマを50q程度で衝突させる側面衝突モードまでクリアしているので、ややランクは下がる。凹凸のないカベに衝突するような事故って、ほとんど無いのだ。ちなみにシビックはイプサム並の衝撃に耐える。この点も乗用車基準にして欲しかった。トヨタはノアみたいなミニバンスタイルでGOAのボディを作れたのだ。ホンダの技術をもってすればS−MXも優れた衝突安全性を有するクルマに仕上げれるハズ。頑張って欲しい。エアバックは運転席だけでなく助手席も標準。このところ助手席エアバックが原因によりコドモの重大事故も数多く報告されているので、くれぐれも注意して欲しい(99年にマイナーチェンジし、世界最高水準の衝突基準をクリア。今や衝突安全性能についちゃ優等生となった)。
そんなワケでS−MXは絶対的なお買い得車である。買おうと決めた後に問題となってくるのが「どのグレードにすべきか?」だろう。特に「標準仕様か30万円高いローダウンバージョンか?」で激しく迷うに違いない。こんなバアイは装備差を挙げてみると解りやすくなる。ローダウンバージョンを選ぶと1)標準仕様では各々5万円ナリのオプションになる電動格納式ミラー、キーレスエントリー、カラードガラスのセットと、2)アルミホイールが標準で付く。どちらも欲しければ、これで実質的な金額差は20万円。逆に考えれば、以上の装備だけ欲しいなら標準仕様を選ぶのがトクである。
残りの20万円分は3)車高が15o低い。4)サスペンションはハードタイプ。5)純正エアロキット付き。7)メッキ風低音重視エキゾースト。8)加速性能を考えたより低いギアレシオ。9)専用オレンジシート。といったところ。もしドレスアップしたいのなら、とりあえず欲しいアイテムがズラリと並ぶ。金額を考えると、考えるまでもなくお買い得。キホン的にゃコチラでしょうな。ここまでの記事を読んで3)〜8)が必要だと思えば、迷うことなくローダウンバージョンにすべきだ。
ただお仕着せのドレスアップアイテムなんぞじゃ満足出来ない、となれば浮いた30万円分をパーツ代につぎ込める標準仕様が魅力的だ。車高は15oダウンでなく最も似合うところで決めたいし、エアロキットやホイールも純正はイマイチ頑張りが足りないもの。乗り心地も標準仕様の方がソフト。コーナーをギンギン攻めるのでなければ問題ナシ。また、少数派になりそうな4WDについちゃ「必要なヒトだけどうぞ」だ。年間数回スノボやスキーしに行く、くらいのヒトでも22万円安く、燃費の良いFFで平気だろう。