《シビック・タイプR》
●インテRと同格になった弾丸ハッチバックは意外にも大人な乗り味!
今までの『タイプR』は、シビックよりインテグラの方が多くの点で勝っていた。例えば走り。200ccの排気量差は絶対的で、シビックだと気軽に全開を楽しめるようなコースでもインテのバアイ、シビアなアクセルワークが必要だったりする。コーナリングスピードもインテ優位。さらに言えば、車格感からしてインテの方が上級だからして(シビックとインテグラを比べたら1クラス上)、バイヤーズガイド頼まれると「予算に余裕あればインテを買うべきでしょう!」をワタシの結論としてきたワケです。
ところが、であります! 新しいタイプRを比べると、今までと雰囲気違うのだ。「インテグラの方が上」という感じしない。なぜか? いろいろ考えてみた。いくつか思い当たることあったのでツラツラと書き出したいと思う。まず「新しいシビック・タイプRのコンセプト」にカギがありそう。従来のタイプRは、言うまでもなくシビックのスポーツモデルとして企画された。3代目シビックで登場した『Si』の流れ、と言い換えてもよかろう。あくまで日本のユーザーが狙い。
新型シビック・タイプRは、御存知の通りヨーロッパで生産され、ヨーロッパをメインマーケットとする。すなわちヨーロッパのライバル車とガチンコ勝負しようということです。ライバル車をザッとチェックしてみると、これが強豪揃い! VWゴルフGTiを筆頭に、アウディA3 1,8T、プジョー30616V、フィアット・ブラボーHGT、オペル・アストラ16Vなどズラリと並ぶ。いずれも実績あるモデルばかり。オーバー200km/hの巡航性能持つ。A3なんか最高速228km/hも出ちゃう!
今までの日本車は正面からライバルと当たらず、逃げてきた。トヨタや日産も未だこのクラスのスポーツモデルを持っていない。しかしホンダのみ先代シビックから意地を見せることにしたようだ。当時ヨーロッパの開発セクション(HRE)に駐在してた上層部の中に、負けず嫌いが居たんだと思う。シビックに169馬力の1800cc積んで発売! これ、ヨーロッパのメーカーを驚かせたそうな。だって最高速223km/hをカタログデータとしたのだから。NAの1,8リッターとしちゃダントツに速いです!
結果、イヤでもこのジャンルから逃げられなくなってしまう。そりゃそうだ。モデルチェンジしたからと廃止しちゃえば、負けたようなもの。加えてホンダの悪いクセ(やるなら徹底的にやっちゃう)が出た。日本に主導権を渡さず、ヨーロッパで開発したのである。もちろんエンジンなどは日本が基本設計したけれど、チューニングや味付けは全てヨーロッパサイドで行っているし、足回りの設定だって現地。そんなこんなで同じエンジン積むインテRと、随分違うクルマになってしまったということです。
も少し具体的に説明しよう。日本の場合、インテRといえども高速道路の巡航速度は制限速度が基本。それ以上出すケースもあると思うけれど、そんなに長い時間でない。ヨーロッパは違う。向こうでハンドル握れば解るが、高性能車なら200km/h巡航だって普通。イタリアやイギリスのように最高速を定めている国ですら、皆さん200km/h近い速度で走っておられる。この速度域になると、日本車の常識が通用しなくなってしまう。短距離の速さより、体力を必要とするのだ。
ハンドルの手応えを例に挙げてみよう。短距離用なら、ある程度カッチリしてれば問題ない。でも長距離を高速で移動しようとすると、カッチリしてるだけじゃダメ。肩のチカラを抜いた状態で、狙ったラインをピシッとキープ出来なければならぬ。だからこそドイツ車は鬼のような安定感持つ。シビックのステアリングギアボックスは、おそらくヨーロッパで調達しているんだと思うが、インテ用より高い工作精度を持っているように感じた。今までの日本車と明らかに違う、と表現してもよろしかろう。
同じことがサスペンションにも言える。絶対的なコーナリング限界で選ぶならインテRだ。ピュアスポーツカーのようなハンドリングに仕上がっており、サーキットで真価を発揮することだろう。シビック・タイプRに乗ると、予想外にしなやか。キチンとストロークする。インテRが「硬いダンパーに硬いバネ」だとすると、シビック・タイプRは「硬いダンパーと、標準より少し硬いバネ」といった雰囲気。伸び側のストロークもキチンと確保してあって、アンジュレーション(ウネり)のある道だってバタつかない。
ここまで読んでいただければ両モデルのキャラの違いが何となく解っていただけるんじゃなかろうか。つまり今まではインテRの下にシビックのタイプRが位置した。でも新型は同格になったと思う。インテRは「スポーツカー」であるのに対し、シビックのタイプRが狙っているのは、ヨーロッパのスポーツハッチと同じく「毎日の足としても使えるコンパクトGT」なのだ。ワタシみたいな”若いオヂサン”にゃ、往年のゴルフGTiみたいなシビックのタイプRにココロ惹かれます。
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