ラグレイトのハンドルを握った誰もが驚くのは、高い質感だと思う。そいつを決定的なモノとしているのはエンジンである。オデッセイのエクスクルーシブに搭載されているV6の3リッターをベースとし、3、5リッターまで排気量アップしたものだけれど、徹底的にスムース。アイドリングしている時から騒音や振動を出さない。アクセル踏んでスタートしても、静かな空間ごとスルスルと動き出す感じ。なんせこのエンジン、アメリカにあるホンダの研究所が日本に負けまいと気合いを入れて開発した最新のV6なのだった。
 パワー的にもモンク無い! カタログスペックでは205馬力とショボイものの、低回転からしっかりトルクを出す。ホンダくらいエンジン技術があれば、どういった味付けも可能。ラグレイトに搭載されているエンジンは「低速トルクは4、3リッターあるアストロに負けないようにしよう」がテーマだったに違いない。というのもラグレイトはアメリカ専用車。したがってライバルも4、3リッターのアストロや3、8リッターあるクライスラーのミニバンである。動力性能勝負でこういったモデルに勝てないとダメ。



 アクセル全開にするとベンツのSクラスと同じサイズの大柄なボディが軽快に走ってしまうのだから面白い。対するエルグランドはどうか? 搭載されているエンジンは、今やクラシカルになってしまったVG型。新鋭のV6と比べてしまうと基本設計の古さは隠せない。特に振動や騒音でキツくなってしまっている。6気筒なので「ウルサイ」と感じることこそないけれど、ラグレイトのウルトラスムースさを味わってしまうとアカン。また、絶対的なエンジンパワーは同じくらいだが、普通に使う回転域でのトルクはラグレイトに届かない。
 ハンドリングも全然違う。エルグランドを一言で表現するなら「非常に良くできたミニバン」となる。というのもベースはフロアの高い後輪駆動車。構造的に重心が高い。ハンドリングの良さを得意ワザとしている日産の技術使い上手にまとまっているけれど、基本的には不利なレイアウトだと思う。ラグレイトに乗ると、あまりに素直なので驚く。高さを抑えているのに加え、幅もある。高さと幅の割合からすると、ステーションワゴンであるアルデオくらいなのだ。ほとんど乗用車と同じような重心だと思ってよかろう。

 もう一度外観を見て欲しい。エルグランドの場合、乗員にとっての床、すなわちフロアは”車体の底”から一段高いトコロにある。昔ながらの1BOXカーと同じ構造。したがって腰高なのだ。ラグレイトは乗用車と同じ構造だから、圧倒的に低い。イプサムとノアの違い、と言えば解ってもらえるだろうか。したがって外観も全然雰囲気が違ってしまっている。乗用車的なラグレイトに対し、エルグランドは、やっぱり1BOXカー的だ。ドチラがいいか、というのは好みだろう。迫力ある方を好む、ならエルグランドだし……。
 ハンドルを握ってて「全然違うな」と思ったのが、クルマそのものの挙動。エルグランドは重心高いため、サスペンションをソフトにすると前後左右にグラグラ揺れてしまう。そいつを抑えるべく、サスペンションをハード目に設定している。ラグレイトはソフトなスプリングを使い、ダンパーでクルマの挙動を制御。だからギクシャクしない。速度を上げれば上げるほど、ラグレイトの素直さが目立つ感じ。エルグランドも相当頑張っていると思うが、乗用車的なラグレイトとと勝負したらツラいかもしれない。


 日本のメーカーって、少しでも室内スペースを稼ごうと必至に努力する。結果、セレナやステップワゴンに代表されるミドルクラスのミニバンでさえ、十分な居住スペースを持つ。エルグランドクラスになれば、もう新幹線のグリーン車のようなユッタリ度。一回り大きなボディのラグレイトはさらに広いのか、と期待して室内に入ると、意外や意外。メチャクチャ広いという感じがしない。そういえばアメリカ製のミニバンはみんなそう。アストロにしてもキャラバンにしても、それほど広いという感じじゃぁない。
 あれれ、と思いつつシートに座ってみたら、やっぱりユッタリしていた。シートそのものが大きいのだ。ソファやダイニングテーブルといったアメリカの家具を日本に輸入し、部屋に入れると、あまりに巨大さにタマげちゃう。家具がアメリカの家のサイズにあわせてあるワケ。それと同じで、広大な室内スペースに大きなシートをセットしてある。セカンドシートもサードシートも座面の面積がデカい! 座面そのものもソフトな素材を使っているため、非常に快適。このシートなら、一日中座ってても疲れないな。



 日本のミニバンの中には、やたら広いレッグスペース(リムジンモードなどと呼ばれる)を自慢するモデルもあるけど、必要以上に広くても意味無い。日本人特有のコンプレックスなんだろう。広ければイイ、と思っているのだ。シートの素材や、質感などは典型的なアメリカン。エルグランドのビシッとした仕上げと好対照だ。ドチラがいいか、好みが別れるところだと思う。布のインテリアなら、ワタシはエルグランドに軍配を上げる。本革シート同士の勝負だと、ラグレイト。革の使い方はアメリカの方がウマい。
 ラゲッジスペースはどうか? ラグレイトのリアドアを開けると、サードシート使った状態で巨大なスペースが残っている。前後方向もさることながら、天地方向の寸法だって強烈! オデッセイと同じようにサードシート後方には、サードシートがスッポリ入るような凹みを設けてある。その凹みたるや巨大。海外旅行用のトランクを横積みにすれば、ラゲッジスペースだけで6個くらい積めるかも。エルグランドのラゲッジスペースだって決して狭くないと思うが、ラグレイトと比べてしまうと、コンパクトに感じてしまう。

 さらにサードシートは簡単に折り畳める。アメリカで「マジックシート」と呼ばれているそうな。オデッセイと同じなのだが、いずれにしろカンペキに姿を消すというのは良いアイデアだ。サードシートを畳むと、素晴らしく広いラゲッジスペースになる。全長5mを越える巨大なステーションワゴンになるんだから。セカンドシートは脱着式。これまた外すと、もはやど〜にでもしてチョウダイ的なラゲッジスペースが出現する。ナニを運ぶべきなのか良いアイデアはないが、前後方向のスペースは*m*p。バイクだってスッポリ入ってしまう。
 装備類は万全。嬉しいのが標準装備されるオーディオ。けっこう良い音質なのに加え、MD+ラジオ。ワタシの知る限り、日本のクルマで1DINのMDを標準としたのはラグレイトが最初である。後席用のエアコンも万全。単についてるだけでなく、吹き出し口がいろんな場所に付く。直射日光の強いアメリカで使うことを想定すると、このくらいしっかり作らないとダメなのだ。そうそう。左右のスライドドアは自動開閉式。日本の感覚からすすると、やや開閉に時間が掛かるも、便利であることは間違いない。気に入った!


 迷うことなく「買い!」だ。ボディが大き過ぎる、という意見もあるようだけれど、このくらいのサイズになれば、もう毎日の足としては使う気にならない。休みの日に使うことを想定するなら、逆にこのくらい大きくてもかまわないだろう。気になるネンピだが、上級グレードに標準装備されるオートクルーズを使って90qで巡航すれば楽にリッター当たり10qまで届く。長距離走行なら、2リッタークラスのミニバンと比べても大差ない。おすすめグレードは******。多少高くても本革シートやオートクルーズが標準装備される。どうせ高い買い物なんだから、何でもアリを選んで吉だ。