オデッセイ以来、シビック、CR−V、インテグラRと、次々にヒット商品を送り出してくるホンダだが(インスパイア/セイバーだけ外した)、どうやら好調ぶりはホンモノのようだ。クルマ好きの間では、これまで一度も話題に上がることのなかったレジェンドさえ、驚くくらい魅力的なモデルに仕上げてきたのである。詳細を紹介してみたい。
まずは写真を見て欲しい。おそらく「最初の印象を20字以内で述べよ」と言ったテスト問題であれば「インスパイア/セイバーにクリソツだね」となるだろう。確かにフロントグリルやリアコンビ回りのデザインテーマは、評判の良くないインスパイア/セイバーに似ている。ホンダに聞いたところ、これが今後のホンダ製高級車顔になるらしい。
ガックリしつつ写真を眺めていたら、少しずつ印象が変わってきた。非常にバランスがいいのだ。考えてみたらインスパイア/セイバーは、5ナンバーサアイズだった旧型インスパイアのボディ骨格をそのまま流用している。乗員スペースがコンパクトな割に、前後のボリュームは小さい。オタマジャクシみたいな感じ、と言えば解ってもらえるだろう。
対して新型レジェンドは、ボンネットとキャビン、トランクスペースのバランスが素晴らしく取れている。しかも痩せた感じの旧型と違い、ボディの”面”もパンッと張っているみたい。寸法は旧型とほとんど変わっていないのに、二回りは大きく見えると思う。やっぱりラグジュアリークラスのセダンは、大きく見えなくちゃダメ。なかなかカッコいいぞ!
そのサイズだが、全長****(4955/カッコ内は旧型)o×全幅****(1810)oと、4945o×1780oのシーマより大きく、4995o×1830oのセルシオに肉薄するという堂々としたもの。ホンダのスタッフは、3代目にしてやっとレジェンドを高級車と言えるクルマに仕上げられたと思う。アメリカでも売れそうだ。
エンジンも大幅にスペックアップしている。旧型に搭載されていた3、2リッターのV6は、スポーツカーみたいな高回転型。ストレートでアクセルを開ければ速かったものの、高級車的なゆとりという点からすると物足りなかった。そういった声を反映し、新型は3、5リッターに排気量アップ。しかもトップエンドのパワーを上げず、中低速トルクに余力を回している。
カタログデータは旧型と同じ215馬力でしかないが、2千回転〜4千回転の実用回転域でのトルクを見ると10%以上増えていた。ホンダによれば、4リッターエンジンを搭載するセルシオに匹敵するパンチ力らしい。さらにATもホンダお得意のプロスマチック制御(三菱のファジー制御みたいなもの)を取り入れ、ギクシャクしない走りになっているとのこと。
スタイルやエンジン以上に感心したのが足回りのセッティングだ。今までの日本製高級車は「乗り心地を考えるとアメリカ仕様だが、ハンドリングはヨーロッパ仕様に劣る。したがって両方のいい部分を取ったセッティングにする」という手法をとってきた。しかし、そう簡単やいかない。たいていの場合、どっちつかずの中途半端に終わっている。
新型レジェンドも途中までは「乗り心地とハンドリングのバランスを高い次元で融合させる」べく開発してきた。「でもやっぱり両立など出来ない!」となったそうで、なんと日本仕様の開発を中止。アメリカ仕様の乗り心地重視タイプとヨーロッパ仕様のハンドリング重視の両方を並売することに決めている。このあたりは元気のあるメーカーにしか出来ない決断であろう。
ヨーロッパ仕様の足回りを持つのは『ユーロ』というグレード。足回りのスペックを見せてもらったら、ホントにヨーロッパと同じ。おそらくBMWやベンツのように、ガッシリした乗り味を持っているのだろう。インテリアも豪華路線でなく「シンプル・イズ・ザ・ベスト」といった雰囲気。af読者向けのグレードだと思った(自分もこのグレードが気に入った)。
それ以外のグレードは、アメリカで売るレジェンドのスペックと同じ。乗り心地を重視、ほとんど路面からのハーシュネス(細かい振動)が無いそうな。どちらかといえばジャガー的な走りを狙ったようだ。ユッタリと走りたいヒトなら、コッチの足を選ぶとよかろう。インテリアもややリッチ指向で、これまた良い。ヨーロッパ足にアメリカのインテリアも選べる。
グレードは三つ。最も安い***でも装備は充実しており、運転席+助手席エアバックやエアコン、オーディオが標準となる。シビレるのはプライス。ヨーロッパサスの***なら、何と***万*千円! レジェンドはクラウンとマジェスタの中間くらいの車格を持つので、相場より50万円くらい安いワケ。こりゃクラウンやセドリックもウカウカしてられないな!
カートップの試乗記
クルマの紹介は先月号でタップリしたから、もうイキナリ試乗ときましょう。最初に乗ったのは、当然ながらヨーロッパ仕様そのまんまの足回りを持つ『ユーロ』。Dレンジをセレクトし、アクセル3分の1くらい踏み込んでみた。するとどうだ!
こいつぁ速いでないの! 従来型レジェンドだって決して遅いクルマじゃなかったけど「高回転までブン回した時だけに限る」であった。そう。スポーツカーのエンジンみたいだったのよね。
新しいレジェンドはチョイト違う。エンジンの性能曲線を見たら、1500回転で28smというブットいトルクを出してるのだ。何で凄いのかって? 考えてもみなさい。NSXの最大トルクは30smである。しかも*千回転まで引っ張らなくちゃならない。レジェンドの3、5リッターは、そいつと同じくらいのトルクをアクセルチョイ状態で引き出してるだぞ。セルシオに搭載されている4リッターと同じくらいの力持ちぶりだと思えばよろしい。
試乗コースはけっこうアップダウンの多いワインディングロード+高速道路だったけど、どちらのセクションでも存分に実力を発揮。1580sという軽いボディにも助けられ、予想以上の速さを見せてくれた。速度制限の無いアウトバーンなら、気軽に180q巡航出来ると思う。ただ最高出力は215馬力と抑え目なので(従来型と同じ数値)、高回転まで引っ張っても速くはない。念のため。
エンジン以上に気に入ったのがハンドリングだ。コレまでの大型セダンというのは「悪くなかったけどソコソコね」みたいな感じ。理由は簡単。ベンツやBMWのように安定性志向にすると「乗り心地が悪い」と文句が付き、かといってアメリカ仕様的なフワフワ仕上げだと「ハンドリングがアカ〜ン!」になるためである。結局、どっちつかずになっちゃうワケ。セルシオのヨーロッパ仕様なんて、すっごくシャープで良いのに!
ユーロの足は基本的にヨーロッパ仕様のまんま。このクラスのセダンとしては、圧倒的にスポーティであった。高いグリップを発生する215/55R16サイズのタイヤにも助けられ、ハンドルを切るとドライバーの思ったラインにピッタシ乗れる。テストコースで思いきり攻め込んでみたら、ホントにヨーロッパ車のような限界性能を持っていることが判明した。いや〜楽しいぞ。ハンドルを握ってると、でっかいボディの4ドアだとは思えないね。
ホメてばかりいると国沢光宏らしくないので弱点を上げておく。一つはブレーキ。すぐにフェード気味になっちゃうのだ。ブレーキの容量にゃ問題なさそうだけど、パットがダメ。寿命を考えたパットにしたと言うことなので、買ったらサックリとスポーツパットに交換しよう。も一つはパワステの容量。素早く操作すると重くなるのだ。雪道で滑った時なんかに感じると思う。もう少し大きめのパワステポンプが欲しいところ。
ユーロ以外のレジェンドは「乗り心地を重視したアメリカ仕様と全く同じ足回りにしてみました」というので乗ってみた。走り出してみると確かに楽チン楽チン。細かい振動は、ほぼカンペキにシャットアウトされ、セルシオに匹敵する乗り心地。リアシートにもフンぞり返ってみたが、これならロングドライブだって苦にならない。それでいてフワフワって雰囲気でもなく、その気になって飛ばせばキッチリスポーティとくる。
ま、アメリカも最近じゃ全般的にアベレージスピードが上がってきた。フリーウェイは130qくらいで流れてる感じ。モンナタ州なんか、日の出から日没までの明るい時間に限り制限速度を無くしちゃったのだ。もはや単に柔らかいだけの足回りじゃダメだったりする。ラインのトレース性に不満を感じたものの(微少舵角時のレスポンスがイマイチ。狭い日本の道だと、もう少し正確にラインをトレースしたい)、高い総合評価点を付けときましょう。
そうそう。ATは全グレードが新しいコンセプトでセッティングされたプロスマティックとなる。交差点を曲がってアクセルを踏んだような時も、簡単にシフトダウンしないような味付け。スピードより快適性を大切にしたのだな。タウンスピードで走っていると、ホントに4リッターくらいのエンジンみたいだった(ハイスピード領域になると馬力の低さが顔を出す)。ぜひともディーラーで試乗して欲しい。
個人的に気に入ったのがインテリア。アッサリしたユーロも悪くないけど、木目調パネル面積の増える普通のレジェンドは一段と気に入った。天童細工の楠(ホンモノ)を使うエクスクルーシヴなら文句ナシ。ユーロの足にレジェンドのインテリアを組み合わせが選べたらいいのに。また、今回の試乗車は、全て15万円高(エクスクルーシヴは16万円)の本革シート仕様。このクラスとしてはリーズナブルな価格設定だと思う。
といった具合で、新型レジェンドは「相当に良いクルマである」と言い切ってしまいたい。「クラウンやセドリックは保守的。かといってセルシオは高いし、ベンツやBMWだと小さいヤツしか買えないよなぁ」みたいに思っているヒトにゃ、ズバリ最高でしょう。なかでも338万円のユーロは、絶対にお値打ちモン。マークUやディアマンテといったアッパーミドルクラスから乗り換えるなら、もうコレっきゃないな。
気を付けて欲しいのがオプション。調子に乗ってアレコレ付けると、すぐに400万円を突破するお金持ちなら止めないけど、普通のヒトであれば一切無くてもよろしい。もしかするとラックスマンのオーディオなんか魅力を感じるかね? クラッシックを聴くと素晴らしいのだが、ポップス系は並み。高尚な音楽趣味を持ってるヒトだけにプッシュしとこう。その他、本革シートも不要。ノーマルで十分な質を持つ。3−Dのナビはお好みによって決めてちょ!