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《パンダ 試乗レポート》
●ラテン系パンダは“軽快”“快活”
1980年の初代誕生以来、可愛いルックスと軽快な走りで世界中にファンの輪を広げているフィアット『パンダ』。日本でも1992年から輸入が始まり、その魅力に惚れ込んでいるオーナーは少なくない。そんなパンダの新型モデルが7月31日から日本で販売を開始。昨年9月に一足早くデビューしたヨーロッパでは、見事「2004年欧州カーオブザイヤー」を獲得したという期待度高いクルマだ。

試乗車は特別装備が加えられた“New Panda-Plus”
師匠国沢(以下 国) 気に入った!
弟子山崎(以下 山) えっ!? まだ500mも走ってないですよ。
国 イイよ〜この雰囲気。普通に乗ってるだけでどんどん楽しい気分になってくるよ。
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山 乗る前は「どうせマニュアルモード付きのシーケンシャル5速ATがオタンコなんだろうけど…」なんて言ってたじゃないですか。
国 許す! ツマランクルマだったらマイナス評価だけど、それも含めてキャラクターとして受け入れられる。
山 実際運転してみると想像したほどギクシャクしない感じすけど。
国 同じマニュアルミッションベースでも、スマートよりは変速が早いしスムーズだね。
山 クリープもないですけど発進も自然。それに、エルゴノミクス(人間工学)に基づいてデザインされたというシフトレバーも動かしやすい位置にあって手に馴染む。操作量もイイ感じだと思います。
国 急にアクセルを踏んだり離したりを繰り返すとちょっとガクガクッとするけど、まあこのあたりもご愛嬌って感じだよ。価格もカナリ安いんでしょ?
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エルゴノミクスデザイン
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山 そうなんですよ。今乗ってるプラスっていう豪華版でも161万9000円なんです。ノーマルのニューパンダなら149万9000円ですよ。
国 輸入車でその値段なら、国産コンパクトとを考えてる人だって十分射程圏内に入る。国産モデルもいいけど、パンダみたいなクルマ乗ってたら毎日楽しいんじゃないかな。絶対的な広さを求めたり、ミニバンみたいに人がたくさん乗れなきゃ困るって言うならムリだけど、自分の為のクルマ選びができる人なら是非乗って欲しい。
山 装備面だってしっかりしてます。特にこの値段でサイドエアバッグやイモビライザーが標準ってのはスゴイですよ。エアバッグは安全意識の高いヨーロッパじゃ当たり前かもしれませんが、国産コンパクトだと付けられてもオプションで軽く5万円以上しますし、第一最初から設定のないクルマだって多いんですから。
国 フィアットはイタリアの大衆車メーカーとしての責任をしっかり果たしてると言えるんじゃないかな。コストを抑えながらもヨーロッパ基準の衝突安全性を確保するコンパクトカを一貫して作り続けているという証拠だよ。ますます気に入っちゃうね。
山 安全装備はパンダもパンダプラスも同じなんですけど、買うならどっちがいいですか? ボク個人としてはプラスを推したいと思うんですけど。
国 プラスになると何が付くの?
山 “スカイドーム”と呼ばれる電動ダブルサンルーフ、ルーフレール、5:5分割可倒式リアシート、それからリアにISO
FIX式のチャイルドシートアンカーが追加されます。
国 で、価格が12万円高ねぇ。これなら、快適ドライブから日常での使い勝手までオールマイティに活躍できるし、車重が20kgしか増えないってのも立派。しかし! ワタシはノーマル派だな。
山 どうしてですか? 実際パンダだとタダの屋根ですけど、この屋根の長さに2つのグラスエリアを持つスカイドームの開放感はオープンカー並ですよ。
国 開放感とは言うけどさ、屋根が重くなるのは間違いないし、それがハンドリングに不利に働くのはわかってるんだから。やっぱり運転を楽しめるパンダが欲しい! それに、サンルーフに頼らなくても開放感あるし、絶対的な室内空間だって十分だよ。
山 ノーマルのパンダで全長3535mm×全幅1590mm×全高1535mm。ホイールベースは2300mmですから、スズキスイフトよりやや短くて細いくらいです。もしかしてイタリア人って小柄な人多いんですか?
国 日本人とおんなじくらいなんじゃないかな。それよりも、大きく違うところは、国産コンパクトと比べたら空間が“表情”を持ってるっていうこと。
山 どういうことですか?
国 例えばパネルひとつとっても、決して質感高いわけじゃないけど“温度”を感じるんだよ。日本のメーカーが頑張って質感を追求しても、なんとなく無機質なインテリアになりがち。パンダは国産コンパクトと比べたら決して広いとは言えないけど、内装のまとめ方の巧さが視覚的開放感を高めてる。インパネ周りだってしっかり個性を主張してるし、それでいてオモチャっぽくなってないでしょ。
山 確かにパンダを運転していると不思議とゴキゲンになって、なんとなくテンション上がります。
国 そういうものを総合すると、やっぱり日本人にはこういうクルマ作れないかもしれないなぁと思うワケ。ラテンの熱い魂とはよく言うけど、クルマ作りにも情熱を感じるよ。
山 だからですかね、なんとなく速く感じるんですよ。1.2リッター(1240cc)で60馬力っていうスペックは国産車と比べて明らかに劣ってるし、10.4kgmのトルクだって軽自動車のターボモデル並。これってヴィッツを軽自動車のエンジンで走られてるようなモンだと思うんですけど。
| 国 2500回転で最大トルクを出してるから、スペック以上に良く走るよ。マニュアルモードを使えばこれはこれで楽しめる。それに、ステアリングやシートを伝わってくる感覚が、五感と同調するから遅くてもムチ入れたくなるような気にならないし、坂道で唸っちゃっても愛しく思える。パンダみたいなクルマを相棒にすれば、いつもニコニコしてられるんじゃないかな。 |

こんな純正アーシング見たことない!
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山 なんだか乗り心地がイイと感じるのも、そのあたりに理由がありそうですね。
国 サスペンションが不快な入力だけを選別して吸収してるような気がする。軽い(プラスで960kg)けどパタパタしないし、うねりのあるところでもストローク量が十分確保されているからフラットな姿勢を維持できる。
山 ありきたりな表現ですけど、しなやかで柔軟性を感じます。柔らかめなのにしっかりコシがありますよ。
唯一の弱点はカオが地味なところか
国 想像以上にコーナーリング性能高いでしょ。ジンワリとロールしたところから体勢を保つ(減衰力が立ち上がる)から、かなりハイスピードでコーナーに飛び込んでも踏ん張りが利く。
山 柔らかいけどコシがあって砕けないなんて理想的ですね。
国 剛性も確保しつつ柔軟性も残す。まだまだ国産コンパクトモデルはヨーロッパの同クラスに水を空けられてる感じするよ。
山 ヨーロッパ車のこのクラスというと、日本で買えるのはVWルポ(1.4リッター、4AT)とルノートゥインゴのクイックシフト5(1.2リッター、5AT)あたりになりますね。価格的に見るとルポはノーマルのパンダと同じ149万9000円、トゥインゴは149万円と完全なるガチンコです。
国 とは言っても、ルポはVWが作ったとは思えないほど質感低いし、トゥインゴなんてもう輸入停止になってるから運良く販売店在庫があればって状態だよ。現状ではどちらも直接ライバルになるとは思えないねぇ。
山 今年(2004年)のヨーロッパカーオブザイヤーということです。
国 先進技術満載のクルマも多いヨーロッパだけど、きちんと総合評価してるってことの現れ。選考した人は確かな目を持ってるよ。
山 唯一気になったのが運転席から見て左側ドアミラーの一部が見難いところなんですけど。
国 内側のところでしょ。おそらく右ハンドル化したことの影響だと思うけど、普通に調節すればボディの側面が映るところだから問題ナシ。電動式だから微調整も簡単だしさ。ま、そんなことは気にせずおおらかな気持ちでラテンの魂を味わえばイイってことよ。
山 日本のフィアットファンを増やす“客寄せパンダ”になり得ますかね?
国 それだけの魅力は十分ある。PRさえうまくいけば、国産車をターゲットにしているお客さんだって引き付けることできると思う。無論、ありふれた国産車じゃ物足りないって思うオシャレな人にとっちゃ大納得のクルマだよ。
山 資料によれば、先代同様近い将来4輪駆動やオフロードモデルも追加されるとのことです。
国 こんな楽しいクルマでスキーに行けたら最高だね!
ヨーロッパ各国でのパンダの認知度はかなり高いようだ。統計によると、一般的に名前の知られたクルマであっても、実車を見てその名前を答えられる人は40%未満。しかし、それがパンダとなると正確に「パンダ」と答えられる人は一気に約90%にまで跳ね上がるとある。おそらく日本では、カローラという名前を知っていても、通りすがりのクルマを見てカローラだと判る人が90%にのぼることはないだろう。パンダがこれだけ高い認知度を得た背景について、フィアットは「パンダという名前が心情的なニュアンスに満ちた真のブランドネームとして愛されているから」だと言う。
では、日本でのパンダの認知度はどうか? ボクの周りの10人(特にクルマ好きではない)に聞いたとことろ、見たことあると回答したのはたったの1人(女性)。しかも「渋滞中の先行車のうしろにPandaと書いてあったから」とのこと。彼女はずっと「(動物の)パンダを好きな人がクルマにPandaと書いただけ」だと思ってたようだが、パンダというクルマが実在するとは思ってなかった様子。日本にはこんな人も少なくないのかもしれない。
おそらく、新型パンダも日本の街中で注目を集めるようなクルマにはならないだろう。むしろ外観だけを見れば先代の方がずっと個性的で可愛かった。しかし、安全性を初め現代のコンパクトカーとしての必要条件を全て満たした新型に乗ってみると、その心地良い空間と不思議と心弾む走りにすっかり魅了されてしまった。オーナーとなった人の日常が、今まで以上に彩りあるものに変わること間違いなしです。
平成16年8月6日
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