長年ジドウシャヒョウロンカ稼業をしていると、スペックを見ただけで「おおお!」と思うクルマというのがある。新しいランエボって「おおおお!」と『お』を一つ多く付けたくなるくらいの内容だったりして。衝突安全性を向上させつつも重量増を抑え、一段と強力なエンジンを搭載し、WRCでも使われている電子制御トラクションコントロール機能(もちろんWRCとは全然違うシステム)まで投入されているのだ。さらに足周りときたら17インチの235/45タイヤ履きブレンボのブレーキで武装。キリッとしたスタイルもいいです! インテリアだってキッチリとレカロを2脚。トドメがプライス! 以上の装備に加え、フロントのヘリカルLSDなんぞまで標準で付いて299万8千円ときた。何の文句もあるものか。試乗して良ければ絶賛モノです。
 クラッチミートし、スタートした瞬間から「こらやっぱり凄いぞ!」である。ピットアウトした周はウォームアップのため抑えめのペースで走らねばならぬ。なのにクルマの方が「もっともっと!」と行きたがってしょうがないのだ。その要求に応えアクセルを少し大きめに踏み込めば瞬時に強大なトルク立ち上がり、暖まっていないタイヤを軽々とスピンさせてしまう。コーナーでハンドル切れば、いともたやすく向きを変え、これまた「もっともっと」状態。
 何とか理性で1周辛抱し「もはやこれまで!」とばかり最終コーナー立ち上がってアクセル全開! するとどうだ! 速いじゃないの! これまでのランエボより一段とスムースかつパワフル。こら凄い! と感心してたらレッドゾーンに飛び込む寸前だよおい。慌てて4速へ。目の前の1コーナーをクリアすべく強めにブレーキ踏むと、これまた予想以上のストッピングパワーを発揮。加速と減速感はレーシングカーに限りなく近いと思った。

 ハンドルを切り込めば、これまた素直。ロールのバランスや挙動もしっかりコントロールされており、クルマとの一体感を味わえる。で、アクセル踏むと、4輪パワースライドするくらいのトルク炸裂だ! こうなるとイケイケ全開モードに入ってしまう。WRCのTV解説などやらして頂いていたこともあり、マキネンが乗り移ってきたらしい。もうコーナーは全部横向きにしたくなって仕方ないです。走りのカットを見ていただければ解る通り、全てのコーナーで流しまくり状態だ。
 最終コーナーは4速180kmくらいで飛び込んでブレーキングしつつ3速にダウンするものの、立ち上がりは全開。こんな高速コーナーでさえテール流したまま走れてしまう。つまりクルマをバトルスーツ(そんなもの無いですが……)と同じような感覚で操れるということ。今までのランエボは例えて言えば普通のクルマを徹底的に鍛え、ハイパフォーマンスカーとして仕立てた感じだが、新型って最初からのスプリンターなのだ。こら面白い!
 感心するのは挙動の自然さ。というのも試乗したランエボってAYCだのACDだのといった電子デバイスの塊みたいなもの。本来なら違和感あって不思議じゃない。なのに全く普通のクルマみたいに走れるのだ。ただ冷静になって考えてみると、電子デバイスの効能だと思われる点、多かったりして。最も感心したのがAYC。このデバイス、コーナリング時のアンダーステアを消す役割をする。コーナーでアクセル踏むと、後輪外側の駆動力を増やす。
 すると外側のタイヤだけ大きくしたのと同じ効果があるから、クルマ自体曲がろうとするワケ。筑波サーキットで言えば、ダンロップゲートをくぐった高速左コーナーは、アクセル全開で抜けようとすれば普通の4WD車だと「いかにアンダーステアを出さないか」で苦労する。しかしAYC付きのランエボならアクセル踏んでるだけでガンガン曲がってしまうのだ。同じくアンダーステア出やすい最終コーナーも曲がる曲がる!

 ACDはやや消極的ながらキチンと利いているようだ。解るのは最終コーナーのブレーキング。ここ、180kmくらいからバキンとブレーキ踏むのだけれど、ブレーキング時にセンターデフをしっかりロックしているせいか、バランス崩れない。高速域から安心してブレーキ踏める。180kmからドカンとブレーキ踏むことを想像して欲しい。そんなケースも、ACD付きのランエボなら冷や冷やしないで済む。
 今回はGSRとRS両方に試乗できた。基本的に同じような楽しさだったのだけれど、やっぱりRSの方がピュアスポーツである。ローギアレシオ仕様だったこともあり、最終コーナー手前で5速まで入ってしまう。こらもうレーシングカーと同じギアレシオといってよろしいです。ただ競技に出るようなドライバーでない限り、GSRだって必要以上に速い! 筑波サーキットのラップタイムも0,5秒くらいしか違わないのだ。
 試乗車は235/45R17というサイズのヨコハマを履いていた。前述の通りコースインした直後からマキネン様が降臨してしまい、全コーナー真横状態。そのまま10周くらいしたから、もはやタイヤは完全にタレていたと思う。その状況で軽く流してラップ計ったら1分6秒45! ホントかね? ワタシでさえ真剣に走れば5秒台中盤のタイムが出ると思う。
 ちなみに唯一無二のライバルであるインプレッサSTiバージョンのRAがワタシのドライブで7秒5くらい。今回試乗したランエボは、ブレーキをラリーアート製に交換し、フロントのキャンバーを筑波用にしているとはいえ、楽に1秒以上のアドバンテージを持つ。さらに今までのランエボで気になった質感も大幅に向上。性能や乗り味まで完全にワンランク上になったと思う。
 弱点はたった二つ。低速コーナーでのアンダーステアと、3速と4速にシフトする時の引っ掛かり感のみ。しかし「そんなこたぁどうでもいいや!」と思えるくらいの魅力がある。どうしようかな、と迷っているなら、買ってしまうことをすすめる!クルマ好きなら一度くらい「世界に通用するホンモノのスポーツカー」に乗ってみるべき。ワタシが自信を持ってすすめます。この手のクルマはリセールバリューいいし。