読者諸兄はこのクルマを見てどう感じるだろう? おそらくカリブやシビック・シャトルのライバルだと思うに違いない。確かに車名からして『レクレーショナル・ビークル』だから、この2車を相当意識しているのではないかと思う。ボクの第一印象もそういった類のものだ。ところが実車を見ると少しイメージが変わった。何が違うかというと、スペースユーティリティーに関するアプローチなのである。
 例えば最上級グレードであるXのリアシートは、従来の国産車にまったくなかったコンセプトだ。ちょいと詳しく紹介しよう。カリブにしてもシャトルにしても、後席はごく普通のシートが付く。ということは、室内についていえば2BOXカーの延長にあると判断する。これはパンダは「……に……という特徴が見られるので、熊とは違う種族に分類出来る」という分析に似ているが、ようするに使う方からすれば、2BOXカーと何等変わらないワケだ。



 RVRはどうか? 写真を見ていただければ解るように、こいつはヘンである。まずシートを最後まで下げた状態にすると、信じられないくらい広いリアシートが登場。足を組んだくらいでは前席に届かないし、フロアは完璧にフラット。こいつは世界で最も機能的といわれるロンドンタクシーによく似ている。座る部分の幅が狭いのは少し減点だけど、これなら後席に乗っての長距離ドライブも楽しかろう。
 もう一つの特徴はスライドドアであること。これもライバルとは違う点だ。スライドドアは開けたときに車体からはみ出さないため、壁やガードレールに寄せて停車させても乗降が可能。バイクに対する安全性も向上する。後席はクルマに対する知識の低い人が乗ることが多い。そういった意味でもスライドドアはメリットが大きそうだ。こういった特徴を分析してみると、RVRの使い勝手は1BOXカーに近い。よくカリブやシャトルを1,5BOXカーというけれど、それはあくまでスタイルだけ。RVRは本物の1,5BOXカーといえる。

 驚くのはインテリアに対する気配り。いままでは三菱車というと、コストを重視するあまり、冷たさが感じられた。RVRは風向きが違うようで、リアハッチを開けただけでもそれは解る。少し紹介してみよう(きっとこのあたりは岩貞クンが詳しく書くと思うけど)。この手のクルマはリアシート後部に小さい荷物を置くのが難しいものだが(コーナーを曲がる度に転がってしまう)、RVRはバイク用のゴムネットを標準装備。左の壁を見るとなんかボタンみたいなのがある。引き抜いてみるとこれが常時電気が来ている12Vのソケット。夜間にライトを付けたり、キャンプの時にクルマから電源を取るのに重宝する。その他、カップホルダーの位置やシートの操作性といった実用度は、これまでにないくらいよく考えられている。

 説明はこのあたりにして試乗だ。用意されたクルマは最上級グレードのX。エンジンは2リッターツインカムで、センターデフを使ったフルタイム4WDシステムを持つ。ではエンジンからチェックだ。RVRに搭載されるのは、ギャランに搭載されているのと同じ4G63型と呼ばれる4バルブツインカムの4気筒(140馬力)。三菱によると「走りに対する余裕が欲しかったため」というが、その考え方は悪くないと思う。というのもライバル達はシンプルな4WDシステムのため軽い1100s程度のボディを、1600tの排気量で走らせている。
 一方RVRはセンターデフを持つフルタイム4WD。ボディも一回り大きいため、1600tではどう考えても辛い。結果としてアクセルを踏みすぎるため、燃費も悪化してしまうことになる。ランニングコストの面でも1600tと2000tは税金や任意保険は同じクラス。それなら余裕のあるエンジンを、ということになったのだろう。結果、走りは素晴らしい。最初に乗ったのはAT車だったが、驚いたのはスタートの力強さだ。低回転からトルクがあるため、アクセルを踏んだ瞬間からグイグイと出ていく。ややおとなしい外観には似合わない元気ぶりといってよかろう。



 RVRの販売はATがメインになるということでジックリと試乗してみたが、ライバルと比べても変速ショックも少ないほう。エンジンの回転フィールは非常にいい。バランサーのついたエンジンは、ほとんど全回転域で振動を発生させず、ひたすらスムース。三菱得意となりつつあるローラーベアリングを使用したロッカーアームの採用と合わせ、2リッター4気筒では最も滑らかなエンジンに仕上がっている。
 もちろんマニュアルにも試乗した。こちらは常識的なギアレシオ(5速100q走行時で3千回転を少し切る程度だった)を持つ。感心したのはシフトフィール。三菱がこれまで弱点として持っていたガキゴキのシフトフィールがほとんど解消しているのだ。まだ完璧とはいえないまでも、トヨタのFFよりはずっと自然。これならクルマにうるさい人でも不満を持つことはないと思う。

 今回は試乗車がなかったものの、FFモデルはエンジンが同じで車重が100s以上軽い。そちらはさらに余裕のある走りが出来るのではなかろうか。しかもFFは価格も2BOXカーに近いくらいに押さえられているから(装備もそう悪くないのだ)、案外大穴のクルマ選びになるかもしれない。
 足回りはどうか。フロントはストロークを長く取ることが出来るストラット。リアは新開発のセミトレーリングアームを採用している。この頃いろいろなタイプのサスペンション形式が登場しているが、コストやスペース(車室内にはみ出してしまうタイプが多い)を考えるとRVRの足回りは説得力がある。
 例えばフロントのストラットだが、これの弱点は主としてコーナーを思いきり攻めた時にのみ現れる。したがってRVRのようなモデルだと、ストロークを長く取れるというメリットの方が大きいのだ。リアも攻めた時のコントロール性が弱点とされる形式だけど、これまたRVRだと「乗り心地がいい割にコンパクトに収まる」というメリッットの方が重視されるべきだったのだろう。

 さて。こうやって書くとハンドリングはあまりよくないための前置きかと先読みする読者諸兄もいるかもしれないが、乗ってみるとこれがまぁ、けっこう走ってしまうのだった。なかでも意外だったのは、コーナリング中アクセルを開けたときの反応。多くのフルタイム4WD車は、コーナーリング中にアクセルを開けるとFF車と似たような動きをする。つまりアンダーステアになるワケ。一度こういう状態になると後はアクセルを戻し、スピードを落とすしか対策はない。
 RVRはちょっと違う。アンダーステアはアンダーステアなのだけど、キチンと曲がっていこうとする。まるでグループNのレーシングカー的(もちろんレベルは全然違うけど)な味なのだ。足回りの設定自体もハード。背の高いクルマは普通程度のバネやダンパーを組み合わせると、初期ロール(ハンドルを切った瞬間のロール)が大きくなってしまう。結果ドライバーに心理的不安感を与える。RVRは思いきりロールバーセッティングをハード目にしているせいか、けっこうスポーティーな走行が可能。ま、ほとんど2BOXカーと同じレベルまで攻められると思ってもらってよかろう。

 じゃ、まったく文句がないかというと、そうでもない。上手にセッティングはしてあるが、やはり背の高いRV。限界を超えるようなドライブをすると、コントロールは難しくなって来る。あくまで「こういったRVのジャンル」において良くできているという評価だと思って欲しい。そうそう。肝心なのは乗り心地だが、こいつに関してはなかなかのレベルにあると思った。基本的に乗り心地は車重が重いほど質感が出るもの。そういったことを考えると、1370sというウエイトが、2リッター上級モデルと同等のテイストを出せる要因になっているのかもしれない。
 このクルマ、どう評価したらいいだろうか? ボクはクルマを判断するとき、真っ先に見るのが価格である。車格、装備を考え割安であれば誰にでも大いにすすめたいし、高ければそのクルマの個性が好きなユーザーが買えばいいと思う。RVRはどうかというと、けっこう判断が難しかったりする。例えば上級グレードであるXのAT。こいつにエアコンを付けると200万円コース。考えようによってはライバルのカリブやシャトルの上級グレードも同じ様な価格ということで、エンジンの違いを考えるとRVRの方が安いのかもしれない。

 でもボクは200万円という価格自体がそう安いとは思わないのだ。RVが欲しければ、もう少し出すとパジェロが買える(2500tディーゼルターボのXSで205万4千円)。全然カテゴリーは違うものの、ディアマンテの2リッターフル装備車だって手が届く。価値観やリセールバリューという基準で見ると、RVRよりパジェロやディアマンテの方がずっと上ではないだろうか。目標販売台数は月間千台。ということを考えると、三菱自身も大量販売を考えていないことが解る。よってRVRは誰にでもすすめられるクルマではないと思われる。
 じゃ、どんなユーザーがRVRに向くかというと、これはけっこう考えられる。筆頭は「車庫のスペースが決められていて、その中で最大限大きなスペースが欲しい」というような場合だ。RVRのスリーサイズは4360/1695/1680o。このサイズではぶっちぎりに室内スペースが広いと思う。中間グレードのRやFFのSは5人プラス大きな荷物スペースがあるため、スキーや海外旅行に行く時に重宝する。Rなら価格もそう高くない。カリブが月に3千台も売れていることを見ても、目標台数の千台は妥当な数値ではなかろうか。

 RVR最大の特徴である「リアのドアがスライドタイプで、フロアがフラット」ということも(リアシートは簡単に折り畳める)、使い方によっては便利であろう。前にも少し触れたが、価格の安いFFモデルは魅力的。同装備の2BOXカーと比べても価格はホンの少し高いだけ。2リッターということを考えると安いくらいだ。こいつを買ってトランスポーターにするのもカッコイイかもしれない。ミニカに対するトッポみたいな存在なので、使い方次第ではアウトドアスポーツの手頃なベースになる可能性を秘めている。