新しいシャリオのコンセプトを一言で表すなら「使い勝手の良いオデッセイ」となろう。オデッセイの弱点は、アメリカ市場を意識して作った結果、長くなってしまったボディと、サードシートの居住性。元々アメリカで売ることをメインに考えていたため、アコードをベースに出来る限り大きなボディを作った。それが日本で裏目に出てしまったワケ。サードシートの居住性も決して良くない。大人だと長距離の移動は疲れる。
 そんならシャリオはオデッセイのパクリかとなれば、そんなこともない。オデッセイが出たときにマスコミから言われたことは「このクルマは大きなシャリオですね?」だったからだ。そう。オデッセイのコンセプトやスタイリングは、歴代シャリオにソックリなのである。ただ時代の流れで従来型シャリオのサイズだと商品力が弱い(カローラやサニーといった小型車は売れなくなったでしょ?)。そこで一回り大きくしたという寸法。
 車種のバリエーションは非常にシンプル。ボディスタイルは一つで、ハイルーフなどの設定もない。従来型だとディーゼルがラインナップされていたエンジンは、これまた2、4リッターGDI一本に。開発途中でディーゼルも考えたかという質問をしてみたところ、明確に「いいえ」だった。オデッセイがガソリンのみでキチンと売れているのを見て、ディーゼル無しでもイケると判断したんだろう。むしろディーゼルを加えると、クリーンでクレバーなイメージが薄れるか? RVも今やガソリンエンジンでなくちゃイケナイ。駆動システムはFFとセンターデフを使ったフルタイム4WD。このあたりは三菱の得意分野ながら、重量増が気になるところ。
 エクステリアはテーマは見ての通り。オデッセイよりカッチリしていて、大きなクルマに感じるんじゃなかろうか?これは説明するまでもなく解ると思う。デザインとしては大成功といってよろしい。四の五の説明してもらわないと狙いが解らないようなデザインは、オタンコとされるからね。といったことからすれば、デザイナーは良い仕事をした。デザインにウルサイ国沢光宏も「こりゃいいや!」。
 専門的なヒョ〜ロンを加えるなら、よくぞここまでいろんなキャラクターライン(ボディ面に入っている線のこと)を入れたなぁ、である。ボンネットからフェンダーのあたりや、ボディ後半は、線だらけといっていい。普通、ラインを入れすぎるとバランスが取れなくなって破綻するのに。オデッセイはカーブを主体とした女性的デザインだけれど、シャリオって見事に男っぽい造形。ドッチもレベルは高い。
 オデッセイと顕著に違うのが長さ。何と18cmも短いのだ! 18cmと言えばコロナとマークUの差ぐらいある。普通の家の駐車場は全長5mくらい。オデッセイを入れると後部をギリギリ壁に近づけても余地は23cmしかなくなってしまう。シャリオなら41cmも残るので、残ったスペースを通路として使うことが可能。私ごとで恐縮だが、ウチもオデッセイだとギリギリ。シャリオのサイズなら大いに助かる。
 幅はオデッセイと同等で、イプサムより8cm広い1775cm。クラウンやディアマンテなどと同じく、いわゆるLクラスセグメントに属す。もし使用環境で横方向に余裕が持てないなら、イプサムを選ぶしかないだろう。ただ今までの経験からすると、幅の8cmは案外とイケるもの。長さが短ければ、取り回しも問題ない。試乗した時に確認して欲しいポントだ。
 6人乗りのセカンドシートは、当然ながらセパレートされたキャプテンタイプ。車幅が1775mmある余裕をフルに使い、ユッタリとしたサイズのシートを作ったようだ。身長183mm、体重83kgのワタシが座っても、全ての点でゆとりがある。横綱の曙くらいデカいとドアから入れないかもしれないが(何と! RVRのスライドドアがギリギリだった)、相当大柄なヒトでもイケそう。前後のスライドは18cm。6cm刻みで4ステップするので、サードシートの使い方に合わせてセットすればよい。一番前にセットした状態だと、レッグスペースは無くなる。 6人乗りのサードシートは脱着式。後部からレバーを操作して取り外すが、今のところ脱着の容易性は日本車トップだと思う。やや重いという難点はあるも、畳んだ状態にするとちょうどいい場所に取っ手が取り付けられている。また、鋭い出っ張りがない設計になっているため、脱着時にインテリアを傷つける心配もなさそう。下部に床に置くことを想定したゴムが張ってあるため、取り外したシートはそのまま家の中でも使える(タタミはダメ)。サードシートを使わないというなら、リビングスペースにでも置く?
 6人のシートアレンジは、なかなかバリエーションに富む。ラゲッジ最大モードだと、サードシートを取り外し、セカンドシートも畳んで前に跳ね上げてやればいい。すると広大な空間がフルに使えるのだった。”ラゲッジやや重視”モードなら、サードシートを外しておくといい。これで日産のルネッサと同じような使い勝手のRVになる。家族4人で使うなら、大きな荷物が気軽に積めるサードシートを外したステーションワゴン状態が一番便利かもしれない。
 サードシートは左右一脚ずつ外せる。二つとも取ると5人乗れなくなっちゃうじゃないの、というなら一脚だけ外しておくのもいいのでは? 一脚外しモードでもラゲッジスペースは格段に広くなるし、長尺物も飲み込む。5人まででスキーなどに行くなら、この状態がベスト。フルフラットにもなる。この状態にして寝転がってみたら、ややデコボコが気になった。車内泊をするつもりなら、デコボコを埋めるマットやクッションを持ち込まないとアカン。オプションも用意されるそうな。
 7人乗りのセカンドシートはロングタイプ。4ドア乗用車のリアシートと同じ使い勝手&座り心地だと思えばよい。センター部分はやや盛り上がっており、少し快適度が落ちるのもセダンと一緒(中央席はヘッドレストも付かない)。乗降性は良好だ。6人掛けと同じく前後のスライドは18cm/4ノッチ。これまた最前のポシジョンだと、背の高いドライバーが座ったらレッグスペースはキツい。前から3番目の位置がセカンドシート乗員にとって最適なポジションであろう。その他、セカンドシートはフラットと折り畳んだ状態にコンバージョン可能。オデッセイにも言えることながら、シャリオも売れ筋は7人乗りシートだと思う。
 サイドシートの形状は6人乗りと近い。違うのは脱着出来ない代わり、前後に18cm/4ノッチスライドすること。ただ前から2ポジション目までだと大人はサードシートに座れない。もちろんセカンドシートを一番前に出せばレッグスペースは残るも、そしたらセカンドシートに座れなくなる。サードシートに大人を乗せようとすれば、最も後ろのポジションを選ぶしかなかろう。この状態にすれば、驚いたことにサードシートもキッチリ大人が座れる! オデッセイやイプサムより広く、背の高い1BOX後継型のミニバンにも迫るほど。ラゲッジスペースを気にしなければ大人6人が座れるのだ。シャリオの大きなセールポイントである。
 やたらレッグスペースの長いシートアレンジを売りにするRVが多い。シャリオもセカンドシートを畳めば、サードシートのレッグスペースは長くなります、と資料に書いてあった。レッグスペースの広さを自慢したいキモチは解るけど、この状態で乗ったらそりゃもう不安。前がガランと空いてるからブレーキでツンのめりそうになるし(急ブレーキならシートベルトが支えてくれるけど……)、ドライバーとの会話さえままならない。レネッサもそうだけど、広いからどうした、と言いたいぞ!
 閑話休題。ラゲッジ最大モードは、セカンド/サードシートを折り畳み、前にスライドさせればよい。6人乗りより狭いが、引っ越しをするんじゃなければ大丈夫。長いモノを積むなら、セカンド/サードシートの背もたれだけ倒してフラット状態にすればいいのだ。6人乗りもそうだけれど、サードシートを前に倒すことも出来る。5人までの乗車で荷物を積むときは、このポジションを選ぶ。フルフラットはセカンド/サードシートのコンビの他、運転席/セカンドシートの組み合わせもチョイス可能。
 搭載されるエンジンは三菱御自慢の最新型GDI。2、4リッター/165馬力と、排気量アップされたオデッセイの2、3リッター/150馬力を軽く凌ぐ。10・15モード燃費も11、6Hで、2リッタークラスのステーションワゴンとイーブン。100qくらいまで希薄燃焼を行うのというから、それ以下で走ると良好な燃費を記録出来ると思う。100H以上や、アクセルを深く踏み込んだ時は、165馬力のパワフルなエンジンとして元気のいい走りをしてくれる。
 4WDシステムはセンターデフ+滑った時に空転を防止するビスカスLSDタイプ。イプサムと同じ本格的なフルタイム4WDだ(オデッセイは滑った時だけ後輪に駆動力が伝わるスタンバイ4WD)。スタンバイ4WDより凄く優れているかとなれば「少しいいかな」程度と思って欲しい。感心したのが燃費。フルタイム式は重くなるため(シャリオは100kg増)、一般的に燃費は1H/リッター以上悪化するもの。シャリオはわずか0、4H/リッターの低下に抑えている。フルタイム式でこんなに燃費低下を抑えたクルマは世界にも例が少ない。
 ミッションは4速ATのみの設定だが、キチンとツボを抑えている。三菱ならではのスポーツシフトに加え、セレクトレバーの位置をインパネ中央に設置。ミニバンと言えばコラムシフトという常識(コラムでないとウォークスルーにならない)を破り、新開地に出てきた。操作してみるとフィーリングは抜群! とても新鮮なだけでなく、手も届きやすい。スポーティに走ろうした歳、コラムじゃシラケルけど、シャリオのセレクトレバーならイケる。インパネ部分のATセレクトレバーを採用する車種は、今後ドンドン増えていくと思う。
 サスペンション形式を見ると、フロントがストラット。リアにセミトレーリングアームというオーソドックスな四輪独立懸架を使う。スポーツカーだと限界時のハンドリングを極めにくいけれど、ミニバンなら乗り心地がいいというメリットだけ活かせる。サスペンション形式以上に大切な味付けは、まだチェックしていない。試乗レポートは来月か?
 三菱らしさを感じさせるのがタイヤサイズ。省燃費車って走行抵抗の少ない=グリップの悪いタイヤを履かせる傾向。確かに燃費は良くなる反面、高速走行時のブレーキや安定性、コーナリング性能に悪い影響を与える。そいつを良しのしなかったのだろう。シャリオのサイズにキチンとマッチする215/65R15タイヤをセットしてきた。これなら気持ちよく走れる。
 シャリオを作ったエンジニアの皆さんにインタビューしたのだけれど、そのなかでひときわ自信を持っていそうに感じたのが衝突安全性関係のスタッフ。もうミニバンじゃ世界イチと言いたそうなイキオイであった。どんなコンセプトで作られているか? 御存知の通り日本の運輸省はオタンコなので、未だ車体前面を50Hコンクリートのカベにぶつけるという非常にマレな事故形態にこだわるも、世界の流れは、オフセットクラッシュ(前半分が潰れる)。実際の事故も大半はこのタイプなのだ。
 そこでヨーロッパは98年から、56Hでのオフセットクラッシュ基準を設けた。コレを先取りしたのがトヨタのGOA。GOAは60Hからのオフセットクラッシュでも乗員に深刻なダメージを与えないように出来ている。凄いと思う。しかぁし! イギリスはさらに高い64Hでのオフセットクラシュの公開試験を行い始めたのである。56qでの衝突エネルギーと比べ、約40%増しという専門家から見ても凄い内容。現在街中を走っている大半のクルマは、56Hでのオフセットクラッシュ試験でも危ないのに!
 シャリオはどうかと聞いたら「60Hでのオフセットクラッシュは全く問題なくクリアします。64Hでのオフセットクラッシュでも、十分高い評価が得られると思っています」そうだ。こらもうミニバンだけでなく、乗用車より安全ということだ。事故を未然に防ぐ効果の高いABSは、全グレードに標準装備される。