スポーティなSWと言えば、やっぱりレガシィGT−Bである。「インプレッサの方がサーキットを走ったら速いぞ!」と思うヒトもいるだろうけど、インプレッサってSWとしちゃ小さい。「速くて当然だろ」になっちゃうのだな。レグナム280馬力もパワフルながら、全般的に穏やかな乗り味。ガッシリ感がないのだ。トヨタはカルディナでスポーティSWに挑戦してきた。これまたGT−Bのレベルにゃほど遠かったりする。レグナムもカルディナも、レガシィGTくらいの仕上がりだと思う。
日産はどうか? ステージアに、2、5リッターのターボエンジンを搭載するモデルをラインナップ。走りの良さで知られるスカイラインと同じシャシを使っていることもあり「これで十分速い」と思っていたらしい。ところがどっこい、評判は芳しくなかった。ワタシも「2、5リッターにターボ付けたのに、何で235馬力しかないの?」とか「重くてどうしようもない」などと書いた。av読者ならこの手のレポートを覚えてるでしょ? 確かに遅くはないけど、パワフルとはいいがたい。
そういった意見は多かったとか。ここんチにも走りに関しちゃ意地があり、もはやガマン出来なくなったんだろう。ステージアがデビューした数ヶ月後に、260RSの開発をスタートしたそうだ。といっても235馬力の2、5リッターエンジンをパワーアップさせるのは不可能。そう簡単にゃエンジンを作れない。そこで同じシャシを使うスカイラインGT−Rのユニットをごっそり頂きましょう、となったワケ。つまり外見はステージアなんだけど、皮を剥がせばGT−Rが出て来るということね。
乗った感じはまんまGT−Rである。車重は190sも重いが、RB26DETTと呼ばれる2、6リッターツインターボエンジンにゃ重さをハネかえすだけのパワーがある! 高回転をキープしつつクラッチをリリースすると、ドカンというイキオイで加速。エンジンフィールは徹底的にスムースなのに、凄くパワフルなのだ。2速にシフトしてもイキオイは全く衰えない。普通のドライバーであれば、ワインディングロードで2速全開のままレッドゾーンに飛び込ませるような走りなど出来ないと思うぞ! その前に怖くなる。
0〜400mの加速タイムを聞いてみたところ「13秒台の真ん中くらいが谷田部を使ったテストで出てるみたいですよ」だって。このタイム、GT−Rより0、5秒遅いだけ。おそらく”当たり”の260RSでそのくらいなんだろう。パワーウェイトレシオからすると、真の実力は14秒前後だと思うな。とは言えSWとしちゃムチャクチャ速い!
世界最速のSWと言われるBMW5シリーズのMモデル(*、*リッターの6気筒****)や、*、*リッター***馬力のアウディRS*を持ってしても、260RSを凌ぐことなど出来ない。
しかも260RSのエンジン、レースで使うことを前提に設計されているため、いくらでもパワーを出せるのだ。もしノーマルで気に入らなければ、マフラーとコンピューターを交換するだけで軽く300馬力をオーバーする。もっと頑張れば400馬力だって軽い! このくらいのパワーになってくると、もうライバルなど居ない。BMWにしろアウディにしろ、エンジンパワーは限界に近い。GT−Bもそうだ。一方、260RSの標準エンジンは小学生レベル。その気になれば倍の560馬力だって出せる。このあたりが、タダのスポーティSWと違うところでしょうな。
コーナリングはどうか? 260RSでイチバン印象的だったのが「ドライ路面とウエット路面は全然違うのね」というもの。ウエットで攻めると怖いのだ。今回はウエットだったため攻めきれず、派手な走りのシーンが撮れなかったくらい。なぜか? リアが簡単に滑るからである。260RSの前後駆動力配分は、キホン的に前輪0%/後輪100%。なんのこたぁない。後輪駆動ということ。この状態でパワーを掛けると、簡単にリアがズルリと滑る。雪の日に後輪駆動車を乗るようなモン。狭いワインディングロード風テストコースで攻めると、ワタシでさえ怖い。
でもドライ路面なら自由自在。リアを思い通りに流して走れるのだ。コーナーでアクセルを踏むと、スムースにテールは流れ出す。流れた後のコントール性も素晴らしい。ただ注意して欲しい点がある。そいつはタイヤが冷えている時。リアタイヤのサイズのためか(GT−Rより車重があるのにタイヤは細い)、基本的なグリップ力が不足気味。暖まっていないとウエット路面のような挙動が出てしまう。GT−Rと同じサイズのタイヤも履けるそうなので、買ったヒトは試してみたらいい。この場合、雪道用チェーンを装着できなくなる(フェンダーに当たるため)。
ブレーキは標準で高価なブレンボ製の高性能タイプを装着しており、乗る前はけっこう期待した。しかもタッチときたら抜群! ペダルを踏んだ分だけキチンと減速してくれる。ところが全開でワインディングロード風テストコースを走っているうちフェード(ブレーキがオーバーヒートして利きが悪化する現象)しちゃったじゃないの! 190s軽いGT−Rならフェード知らずのブレンボも、これだけ重いと厳しいのだろう。
レグナムも負けずにパワフルだ! 残念ながら今回はAT車だったが、トルクの太さは強烈!1***sの車重を感じさせないほどグイグイ走ってしまう。AYC(左右輪の駆動力を変え、曲がりやすくする機能)もウエット路面でキチンと仕事をしている様子。コーナー立ち上がりでアクセルを踏み込むと、ハンドルを切った方向に曲がってくれる。弱点はステアリングフィール。車体の剛性感が足りないためか、どうにも締まらない。速いけど楽しくないのだ。スポーティカーというより、長距離を走るGTカーみたいなSWである。
レガシィGT−Bは相変わらずの優等生ぶりを発揮した。意外なことにウエット路面でGT−Bに試乗するのは初めて。慎重にペースを上げていくと、フルタイム4WDのメリットがしっかり出ており予想外に乗りやすい。急激な挙動変化がなく、アクセルを開けてもジワジワとアンダーステアになるだけ。ブレーキだって強力。GT−Bは大型の強化ブレーキを装備する。さらにウエット路面でペースが遅かったためか、フェードの傾向すら出ていない。しかも260RSやレグナムと比べ車体が小さく軽く感じ、非常にシャープ。思い通りに走れ、圧倒的に楽しかった。
3車それぞれ乗り味が違う。260RSは徹底的にスパルタン。硬いのだ。路面のデコボコは全て拾ってくれるし、大きな継ぎ目などを通ると車体全体が揺れる。ボディ剛性は高いのかもしれないけど”剛性感”はあまりない。乗っていて不快になるレベルじゃないが、間違っても「乗り心地がいい」とは言えないレベル。このクルマはステージアの皮を被ったGT−Rなので、ユーザーの大半はこの乗り心地でもモンク無いだろう。
レグナムは比較的ソフトな味付け。というより普通のクルマと表現すべきか? AT車だったこともあって、スポーツモデルに乗っている感覚が薄い。アクセルを踏めば「おお、やっぱし速いや!」なんだけど……。この点を長所とするか、不満とするかでレグナムの評価は決まってくる。個人的にはハンドルを握っているだけで楽しい方が好み。レグナムってビッグマックみたいだな。ボリュームがあってソコソコ美味しい反面、なんか物足りない感じ。
GT−Bは走り出した瞬間「こらスポーティでしょう!」と解るくらいの個性を持っている。ドライバーとクルマのコミニュケーションがいいようで、ユックリ走っていても楽しい。その割に乗り心地を犠牲にしていないからたいしたモンだ。高価なビルシュタインを奢ったおかげで、硬い割に乗り心地は良好。ワインディングロードから街中まで、どんな場所で乗っていてもカドがない感じ。スポーティモデルって、このくらいの個性を持ってなくちゃダメだ。
260RSを見て「もう少し頑張って欲しかったぞ!」と思ったブブンは四つある。それぞれ書いてみたい。イチバン簡単に対策出来そうなのが、シートに座った時のイメージアップ。260RSって、あまりに普通。例えばシート。ノーマルのターボモデルに装着されているシートよりは左右のホールド性が高いものの、やっぱり満足できない。聞いてみたらスカイラインの2、5リッターターボと同じタイプを使っているそうな。ここまで頑張ったんなら、GT−Rと同じバケットタイプが欲しかった。少し窮屈に感じるかもしれないけれど、GT−Rのシートって体にフィットしてくれる。同時にペダル類もGT−Rと同じタイプに変えてくれれば一段と気分。
二つ目がセンターコンソール。標準グレードのシルバーも趣味は良くないが、260RSの黒はさらにひどい。テカテカと光って安っぽいだけでなく、手垢などですぐに汚れてしまう。しかもワタシが裏庭でスプレーを吹いたような塗りときた。何でこんな色で塗ったんだろうか?聞いてみたら「メーターがしっかり視認できるよう、反対を押し切ってこの色にしました」そうな。その意気込みは大いに評価するも、ちょっとね〜。100歩譲ってカーボン調。ゼイタクを言わせてもらえば、新しい素材にチャレンジして欲しい。三つ目はエクステリア。エアロキットのデザインが古すぎる! 基本的にステージアのスタイルはクラシカル。エアロキットを付けることによって増幅されてしまったようだ。どうせエアロキットを作るなら、もっと新しいコンセプトを入れて欲しかった。最後がタイヤサイズ。これまた細くて寂しい。
レグナムも普通。ハンドルはナルディに変えるなどして頑張っているのに、形状そのものが常識的である。シートも”ややホールド性は高いかな?”と感じる程度で、スポーティなクルマというイメージが薄い。第一、シートのクッションが厚すぎ。こういった内容からしても、クルマ自体の狙いは「SWのGTカー」なんだなぁと思う。高性能SWにナニを求めるかはヒトによって異なるが、レグナムの開発陣って普通さを狙ったんじゃなかろうか? そう割り切ってみると、快適性は高いし室内は広いしで、使い勝もよさそう。マニュアルミッション車のシフトフィールも、大味。
GT−Bはレグナムと対照的だ。コクピットに座っただけでヤル気を起こさせるほど。具体的に表現すると、シートは堅め。ペダル類が細く、さらにシフトタッチときたらスポーツカーそのもの、といった雰囲気(先日の改良でシフトタッチを変えた。ストロークは短くなりカッチリ感も大幅に上がった)。ここまでこだわってくると、独特の雰囲気を醸し出すようになる。同じレガシィのGTと比べても明らかにスポーティ。GT−Bに匹敵するスポーティ感を持つSWは、インプレッサを除くとアウディRS*くらいか? 個人的にはリミテッドにのみ装着される、ウッドと革のコンビになったハンドルも気に入っている。