GT−Rだけは全然違うな、と思った。元気の無さが目立つ昨今の日産なのに、まず強烈にお金掛かったカタログ作っている。いわゆるハードカバーと呼ばれる高級辞典みたいな装丁なんだもの。おそらくディーラー行っても、簡単にゃ貰えないと思う。試乗会だって気合い入りまくってたぞ。サーキットでの試乗会のバアイ、普通は用意した試乗車の全てをタイヤがダメになるまで走らせる。なのにGT−Rときたら、タイヤが少しでも減ったら惜しげもなく交換しちゃう。おいおい18インチタイヤ、高いのに。
R34のスペック等の説明は後回しにして試乗といく! とりあえず先代R33のGT−Rで3ラップ足慣らしする。改めて乗ると、R33も強烈に速い。ブレーキはコーナーのギリギリ奥まで突っ込めるほど強力だし、エンジンだってテール簡単に振り回せるくらいパワフル。ボディの剛性感など文句無し。これで十分でしょう、とさえ思う。シカシ、である! R34に乗り換えて走り出すと「ホントかよ!」状態に陥ってもうた。あれほど凄いR33が、普通のクルマに感じちゃうくらいシャープなのだ。
例えばブレーキ。R33だって市販車としちゃ「素晴らしい」と評価できる。なのにR34で同じポイントからブレーキ踏むと、コーナー手前で止まっちゃう。ほとんどレース用のクルマと同じ感覚でブレーキングしても間に合う感じ。スペックをチェックしてみたら強烈だ! 超軽量鍛造の18インチホイール+ポテンザRE040を採用。ブレーキは大型ローター、ブレンボのキャリパーと独ユーリッド社のスポーツパッドを使う。ほとんどレーシングカーのスペックだな。これだけのパーツを後付けすると、きっと100万円近いと思う。
ブレーキの効きにタマげつつコーナーに飛び込み、クリッピングポイントからアクセルを開けていく。するとパワーもR33以上ある。いや、絶対的な出力は280馬力で同じなのだが、より広い回転域で太いトルクを出している模様。排気量の大きなエンジン積んだみたい、と表現しておこう。車重はR33と同等なのに、全然速くなったような気がする。いや、実際に速いそうだ。エンジンの回り方もレーシングカーのような緊張感と楽しさを有しており、街中で乗ってもワクワクすると思う。
個人的に気に入ったのは、絶対的な速さでなく乗り味。単純に「ガッシリしてる」と表現するのが適切なのかワカランけど、とにかくシャープである。ハンドル切ったらドライバーの思う通りに車体の向きは変わるし、ブレーキのタッチやアクセルのレスポンスなども最高レベル。依然として好きになれないスタイルを除くと、世界で最も高い性能&楽しい乗り味を持つスポーツカーだと断言できる。ちなみにターボエンジン積んだポルシェ911が相手なら、コンピューター交換だけで360馬力くらいになるので、やっぱ楽勝でしょう。
そうそう。チェーニングを意識してるワケではあるまいが、高速域での性能も抑えている。Vスペックの床下を覗いてタマげた。前輪の前と後輪の後ろに、F−1みたいな『ディフューザー』(空気の流れをコントロールするカバー)が付いてる! このディフューザー、効果は相当なもので、250qくらいになると150s以上のダウンフォース(車体を路面に押しつけるチカラ)が発生するとか。さらにリアのスポイラーはウイングの角度を変えられるため、立ててやれば一段とダウンフォースが高まる。これだけの空力パーツ使うと、サーキットじゃセッティング次第で大いにタイムが変わるだろう。速度リミッター効く180q以内でも、明らかに違うらしい。ニホンだと気軽に試せる場所もなくて残念だけど……。
グレードはGT−RとVスペックの2つ設定されている。ウデのあるヒトだったら、おすすめは標準グレードの方。リアのLSDに機械式のトルセンを使っているので、全速度域で素直。思った通りの動きをしてくれる。自由自在に振り回せる、というヤツだ。Vスペックはノーマルのエンジンパワーだと、リアのグリップが強すぎる感じ。160qくらいまでの速度域だと、挙動も不自然なブブンが出ちゃう。120qくらいの速度だと、気軽にテールを流すことも難しい。そんなことするヒト、少ないか?
160q以上出すならVスペックがイイ。超高速域になると、さすがにテール流れたらコントロール難しい。それに高速域ってリアのグリップは高い方が乗ってて楽しいのだ。また400馬力以上のエンジンにしようとするなら、これまたリアのグリップ高いVスペックをプッシュしておく。ようするに「買った後どうするか」で決めればよかろう。コンピューター交換だけで360馬力までなら標準。もっと気合い入れるヒトは将来性を考えてVスペック、となりましょうか。自分で乗るなら標準にします。
普通のR34について。
「FR車としては」という前提を付けるなら、R34の280馬力ターボMT仕様は世界トップにランクしてもよかろう。ちなみになぜ前提付きかとなれば、今や4WD車の方が速いだけでなく楽しいからに他ならない。ランエボWのハンドルを握ると、パワードリフトってFR車だけの特権じゃないことがよ〜く解る。高性能FR車というのは、ノスタルジックな存在になりつつあると思うのだ。
閑話休題。R34最大の美点は「テールスライドを怖がっていない」という点であろう。トヨタ系高性能FR車の場合、基本的にテールが流さないようセッティングされる傾向。アクセルを踏んでいくとリアがスライドするより先にアンダーステアとなるワケ。さらにパワー掛けて限界を超えると、それまでガマンにガマンを重ねてきた後輪は、突如滑り始め性格のワルいヒトに変身してしまう。
テストコースやサーキットみたいな道幅のあるコースなら十分にコントロール出来るも、一般道を模したテストコースだとお手上げ。多少ウデに自信を持っている国沢光宏だってすっごく怖いのだ。トヨタだって解っているらしく、トラクションコントールやVSCなど付け、限界を超えないようにしてやっている。これを俗にマッチポンプなどと言う。マッチで火を付ける一方で、水を掛けて消そうという行動をするオロカな行動のことだな。
R34にもトラクションコントロールは付く。しかしカットしたって全く平気だ(さすがに雨の日は厳しいが……)。いや、カットすることを当然としてセッティングされているとさえ思う。ほとんど公道と変わらないような路面環境を持つテストコースでも、自由自在にテールのコントロールが可能。WRCの前走(競技車の前にゼッケン0番を付けたクルマが走る)を許されたなら、全部のコーナーで真横にしてやる!
エンジン特性までコーナーを曲がるためのセッティングかもしれない。ドカンとパワーの出るエンジンだと、やっぱしテールの流れ出しが急。R33みたいに高回転域でトルク不足すると、これまた長いドリフトは難しくなる。R34のターボなら、中回転域から高回転域まで適度のトルクを維持してくれるのだった。ま、こういったセッティングが出来るのはテストドライバーの感性か? いずれにして公道風のテストコースを走ってイチバン楽しいFR車は、R34であろう。