<R32>
若いオジサンにとってスカイラインというクルマは特別の意味を持っている。学生の時、女の子に一番人気のクルマはスカイラインだったし、GT−Rは憧れのマトだったのだ。なかでも『箱スカ』と呼ばれる3代目の人気は絶大ともいえるものがあった。ところが最近のスカイライン(特に7thといわれる旧型)はデキの悪いマーク2のようになってしまい、個性ゼロ。人気は地に落ちてしまった。しかし現行モデルになって流れが変わった。開発者の”いれ込み”がビンビンに伝わってくるし、動力性能だってライバルを大幅に凌いでいる。
例えば2ドアGTS−tタイプM。0〜400m加速は14秒台中ごろ。最高速はリミッターを外すと220キロを軽くオーバーするという実力の持ち主だ。実力は2リッター最強といっていいと思う。このくらいの性能を持っていると、正直いって公道で全開にするのは恐い。少しクルマに詳しい人なら、このクルマの良さは、少し走っただけで充分わかると思う。日本車というと、ボディ剛性が低くドイツ車が持つような”一体感”がないものが多い。
スカイラインは違う。ボディがガッシリしていて、クルマ全体が一つの塊みたいなのだ。ハンドルにも常に路面からの感覚が伝わって来る。ポルシェ的な味わいといっていいだろう。これなら安心して飛ばせそう。コーナリング性能はこのクラスの国産車でライバルは存在しないのはもちろんのこと、BMW−M3などには完全に勝っているし、ポルシェ944だってここまで攻めきれない。荒れた路面をキッチリ食いつきながら、しかも3速全開で走れるクルマなどない(ベンツは素晴らしいが、残念なことにこんなにパワフルではない)。この道ならどんなクルマにも勝てる実力を持っているはずだ。
まずブレーキも16インチという大きなサイズのホイールを持つため、効きは文句無し。急な坂が連続し、何度となく100キロをオーバーするスピードからフルブレーキングをしたって平気なのだ。ただ乗り心地はかなりハード。少なくともソフトなのがお好きな人にはすすめない。ハンドリングを最優先すると、どうしてもこのくらいの硬さにはなる。おとなしくスカイラインを味わいたい人にすすめるのが同じノンターボのAT。動力性能の高さは2リッタでトップなのは間違いなし。燃費がいいのはもちろんのこと、最高速だって190キロは超える。
一番安い6気筒であるGTEも悪いチョイスではない。装備は充実していて、プロアコースティックのオーディオや、パワーウインドゥなどが標準。価格は、マニュアルミッションで169万7千円と、エアコンを付けても装備の豪華な6気筒では一番安い。たいして期待せずに乗ったのだが、このクルマは日本車で一番バランスが取れていると思う。考えてみれば当然かもしれない。215PSにも負けないボディを持ち、サスペンションも余裕タップリ。まるでベンツのような走りを見せるのだ。
乗り心地も良く、靜か。パワーを求めないなら、2リッターでベストチョイスである。以上、ザッと紹介したけれど、新しいスカイラインは走りの面では世界トップレベル。自信を持っておすすめする。ちなみに自分で買うなら2ドアGTS−tのタイプMマニュアルシフト。カラーは黒がいいと思う。
<R32後期>
税制や任意保険の排気量区分の変更等で、従来の2000cc車と同様のランニングコストで済むようになったのが2500cc車。すでにトヨタや三菱、マツダからはこの排気量を持つクルマが登場し、人気を集めている。日産もやっとこの排気量を持つエンジンが出来上り、スカイラインのマイナーチェンジに合わせて搭載してきた。RB25DEと呼ばれ基本的には従来の2000ccツインカムをベースに排気量をアップしたものと考えればいいと思う。
ポイントはエンジンの特性。スカイラインに搭載されたということで、スポーツ性を重視しているかと思うと、そうではない。180馬力という最高出力を見ても解るように(シビックのV−TECは1600ccで170馬力)、どちらかというと実用的な味付け。したがってグレードもターボに設定される「タイプM」といった過激なものはなく、ややおとなしい。4ドアにはXシリーズという豪華グレードも……。
ということで、ガンガン走るというイメージを持つとややガックリするかもしれない。どちらかというとATにマッチしているエンジン特性になっていて、実用回転域の太いトルクがこのエンジンの自慢である。本来ローレルやセフィーロに搭載されるのが似合うのかもしれない。じゃ、遅いのかというと、そうではない。スカイラインの車重は軽く、2ドアのパワーウイエイトレシオは7,3kg/psと、2000ccの8,3kg/psより大幅に向上している。ターボほどパンチはないが、実用上は充分なパワーといえるだろう。
メリットは燃費。ややハイペースで走るときは2000ccよりアクセルを踏む量が少なくて済み、結果燃費も悪化しない。もちろんターボとの比較では2500ccの方がいいのはもちろんである。ハンドリングに与える影響も非常に小さい。ターボエンジンはタービンやインタークーラーといったパーツが前に集中し、フロントが重くなる。ところが2500ccノンターボは軽く、軽快なハンドリングになった。
ここまで読んでいると「今までの2000ccとあまり変わらないのね」と思うかもしれない。ところが価格を見て評価は一気に高くなると思う。なにしろ2000ccのタイプSよりたった7万円高いだけなのだ(マニュアル車で244万3千円)。装備は超充実。オートエアコンを始め、アクティブサウンドシステム付きオーディオ、アルミホイール、スーパーハイキャスが標準となる。
4ドアのタイプXはスーパーハイキャスとアルミが落ちるものの、フル装備で237万5千円とさらに安い。しかもこの価格は5速AT車。5速ATはマニュアルより13万7千円高なので、実質的には大バーゲンセールといえる。4ドア最上級のX・Gはハイキャス、アルミ付きで249万3千円(5AT)とこれまた安い。
<R32オーテック>
ヨーロッパには昔から数多くの『コンプリートチューナー』と呼ばれるものが存在した。代表的なのはベンツAMGやBMWアルピナで、これらが作るクルマはすべてはメーカー自身が公認したチューンドカーなのである。
例えばAMGの場合、ベンツの生産ラインからホワイトボディ(部品が何も組み付けていない状態)に近い状態でクルマを引き取り、ボディ各部を大幅に補強。エンジンは標準で設定される排気量より一回り大きいものがさらにチューニングされ、搭載される。
なぜそういったクルマを作るチューナーが存在するのかというと、答えは非常に簡単。自動車メーカーというのは、ある程度販売台数が期待できるようなモデルしか作らないからである。反対にいえば「乗って楽しいかもしれないけどマニアにしか売れないクルマは作らない」のであった。
そこで自動車好きを相手に、少しくらい高くても楽しいクルマを作ろうというチューナーが生まれた。メーカーにとってもそういった顧客は大切。そこで精一杯チューナーに協力し、公認しているのだ。
前置きが長くなったが、今回のオーテックスカイラインはまさしくメーカー公認のスペシャルマシンといってよい。しっかり紹介するので理解するように。ちなみにこのクルマが成功すれば、いろいろなバリエーションのモデルが登場してくる可能性だってあるのだよ。
<エンジン>
オーテックスカイライン最大の注目点がここ。なんとこのエンジン、完全なるスペシャルなのである! 排気量は2600ccということで、ベースになったのはGT−RのRB26DETTだということが解る。でもこっちはターボ無し。資料をチェックすると圧縮比は10、5対1もあるから、当然ながらピストン等はオリジナルだということが解る。最高出力は220馬力と、2リッターのターボ仕様よりパワフル。ミッションはATだけ。
<足回り>
基本的にはGTS−4と同じシステム。通常はFRで、リアが滑った時には前輪にも駆動力を配分するというものだ。この部分はそのまま使われるが、その他は相当手が加えられている。サスペンションはググッとハードなものに変更され、GTS−4ではやや容量の少なかったブレーキもGT−R用の大径穴あきディスクローター+アルミキャリパーを流用。それだけではない。コンプリートチューナーらしく、ブレーキのマスターバックまでGT−R用に変更してあるという細かいモディファイも忘れていないのは偉い!
<外観>
ボディの外板部品はボンネットとフロントグリル(GT−Rと共通部品だという)を除き、GTS−4と同じ。フロントから見るとさすがに迫力を感じるものの、横から見れば大きなホイールを履いた4ドアだ。試乗車はオプションで選べるリアウイングも付いておらず、少々迫力不足。これはオーテックがワザと狙った路線なのだろうが「もう少し派手だといいのにね」と思った。そうそう。フロントバンパーの模様はプレスではなく、単なる塗装。インテリアはシート地が異なる他は、あまり変更無し。ペダルやハンドルも普通のGTS−4と同じものが付いていた。このあたりも派手な演出を避けたのかもしれない。
<乗った感じ>
では試乗だ! 走りだしてまず最初に感じるのがエンジンフィールの良さ。さすがにNAだけあってアクセルを踏み込むと瞬時にパワーが立ち上がり、強烈な加速が始まる。加速感はターボエンジンのように爆発的なもんじゃなく、どこまでも続くような感じ。ちょうど飛行機が離陸するときのような感覚だ。また、ターボではあまり感じない「コーン!」というエンジン音も車内に飛び込んでくる。
面白いのはエンジン特性。普通なら大排気量というのは太いトルクに頼り、中速域が一番おいしいもの。ところが高速型のRB26DEは、まるで1600ccツインカム車のようなのだ。少々うるさいものの、高回転をキープしてもまったく心理的なストレスがないのだ。
足回りはどうだろう? 当然かもしれないがけっこうハード。ハンドルに伝わってくる手ごたえも、GT−R的といってよろしい。でも高速道路を走っている分にはごく普通のクルマであった。
それでは、ということでワインディングロードに突入。すると予想に反して”大人の味”ではないか。確かにGT−Rより重い14**sの車重に、220馬力ではリアをグイグイ流すほどの余裕はない。どちらかというと、オンザレールのコーナリングを得意とする。
もちろんターボエンジンを搭載するGTS−4と違い、細かいアクセルワークにも敏感に反応するからコントロールはとっても楽。「キチッとコーナーの手前でスピードをコントロールし、微妙なアクセルワークでコーナーを立ち上がる」といったフォミュラーカーのような走りが好きな人にはピッタリのセティングだと思う。
<乗った印象>
NAエンジンはやっぱりレスポンスが良くて気持ちがよかった。でも残念ながら個人的には優等生みたいで、ちょっとばかりもの足りなかったのも事実。理由は簡単。この程度のパワーなら4WDの必要はないと思うからだ。
なんでGT−Rは4WDにしたかというと、FRでは280馬力というパワーを吸収出来ないため。だから100kgも車重が増えるのを承知で、前輪にも駆動力を伝えている。でもオーテックスカイラインの220馬力ならFRでも充分であろう。
もしFRだったらどうだろう?車重は100kg以上軽くなるから、動力性能は大幅にアップ。しかもブレーキを強化してあるので、ストッピングパワーもGT−R以上になるハズ。もしかするとGT−Rより楽しいクルマになったかもしれない。
現状のオーテックスカイラインは、GT−Rの4ドア&ATバージョンといった感じで、新しい価値観を生み出しているとは思えない。せっかくノンターボのいいエンジンを作ったのだから、次はFR&NAのGT−Rを作って欲しいと思う。そしたらどんなに楽しいクルマになるだろう!