面度臭い前置きは後回しにして、とにかく試乗だ! ノーマルのGT−R同様重たいクラッチを踏み、ギアを1速に放り込む。ウワサでは低回転のトルクが弱いということだったけど、3千回転弱でクラッチミートしたときの感覚はノーマルとまったく同じ。やや気抜けしつつスタートだ。エンジン音やフィールはまったく変わらない。
 しばらくミッションやデフの暖気を兼ね、3千回転前後で走ってみるが、やっぱりパワー感はノーマルと似ている。考えてみればノーマルでもアクセルをフルに開けない限り、3千回転ではブーストが全開にならない。したがって、街中を流すなら特に乗りにくいということはないと思う。
 水温、油温が上がってきたところで、まずはご挨拶変わりのフィーリングチェック! 2速にシフトし、2千回転からアクセルを床まで踏み込む! 排気音が変わり、タコメーターが反応、加速体勢に入った。低回転のレスポンスは、元々排気量が2、6リッターもあることから、案外良好。「速い」という程じゃないけど、ドライバーの期待を裏切らない。タコの針が4千回転を通過するあたりでチラッとブーストメーターを見ると、驚くことに0をホンの少し上まったところで遊んでいるではないか! 加速も「ドーン!」というパンチが来ない。

 ノーマルなら、ここまで回せばすでにブーストメーターは規定値に近いくらいまで上がっていて、GT−R独特の「コォーン!」というエンジンサウンドが聞こえてこなくてはならない。「やっぱりブーストの立ち上がりが遅いな……」と自動車評論家ぶっていると、次の瞬間イキナリ強力な加速が始まった! こいつは面白い。
 もう一度、2千回転まで落として、今度はしっかりタコメーターをチェックしてみると5500回転、であった。ここを境にトルクがもりもりを出てきて、1400キロのボディをあっという間に加速させるのである。しかもこのパワー、7500回転のレッドゼブラゾーン(レッドゾーンは8千回転だが、新車ということでそこまでは試さなかった)まで一気に持っていくくらい強力。ノーマルだと7500回転当りで明確なパワーのドロップがあるから、ニスモ仕様は確かに凄い。
 ちなみに今回試乗したクルマは個人オーナーが買った完璧な一般市販車。あまり市販車に乗ったことはないのだが、こいつのエンジンは非常にバランスがよかった(ニスモ仕様もエンジン本体はノーマル。違うのはターボだけだという)。試乗したクルマが”当り”なのか、GT−Rはすべて念入りに作ってあるのかわからないが、前の日まで乗っていた日産の広報車以上に気分がいい。

 次は峠道でよく使用する、5千回転前後の回転域をチェックしてみる。2速5千回転からアクセル・オン! ここからのレスポンスはまぁまぁ良い。ところが試しに3速5千回転からのフルスロットルをかましてみると、やっぱりノーマルの方が数段優れているようだ。そう、タービンが重く、大きい分レスポンスが悪いのである。
 ハンドリングはどうだろう?足回りはABSが付かなくなるくらいで、ノーマル。ところがエンジン特性が変わったせいか、ノーマルとはやや違う。一番差が大きいのは2速のコーナー。GT−Rのオーナーなら知っていると思うけど、ノーマル車で唯一の弱点は、2速のコーナーでアンダーステアが出ること。峠道の回り込んだコーナーでアクセルをパーシャルにすると、踏み込んだ時にフロントが逃げるのだ。
 今回はあまりしっかりチェック出来なかったものの、もしかするとニスモ仕様はこのアンダーが出にくいかも知れない。というのも、パワーが「ドーン!」と出るため、最初にリアがズルッと流れてくれるからである。残念ながらこれは結論ではないけれど、ぜひともワインディングロードで試してみたいと思う。おそらく来月号あたりで黒沢師匠が結論をだしてくれるのではなかろうか?

 ブレーキはABSがなくなった。しかし不思議なことにブレーキフィールはABS付きとまったく同じ。もう少しかっちりした足ごたえを期待してたのだけれど、がっかりした。GT−RのABSは4チャンネル式で出来がいい。これならあった方がいいのではなかろうか。
 最後に外観について触れてみよう。外観の変更点は目的によって三つに別れる。一つは冷却関係。これはバンパーにあるエア取入れ口、ラジエターグリルの一番上にあるリップと、インタークーラーむき出しというセットになっている。ノーマル比べレース仕様のパワーは2倍。このくらいの空気量アップをさせないと追い付かないのだ。
 二つ目はリアの2段スポイラー。これは高速時のダウンフォースを稼ぐ役目をする。そして3番目は太いタイアをカバーするためのサイドスカートである。グループAレースではレギュレーションによって一切のボディ変更を認めていないため、こういった対策はすべてレースの為と思っていい。
 さて、このGT−Rニスモ、果してポテンシャルはどうだろうか? 短い試乗での予測ではあるけれど、公道での勝負を仮定すればレスポンスに優れるノーマルの方が速いかも知れない。でも高回転を主に使うサーキットでは、やっぱりニスモの方がよさそう。