「FR車としては」という前提を付けるなら、R34の280馬力ターボMT仕様は世界トップにランクしてもよかろう。ちなみになぜ前提付きかとなれば、今や4WD車の方が速いだけでなく楽しいからに他ならない。ランエボのハンドルを握ると、パワードリフトってFR車だけの特権じゃないことがよ〜く解る。高性能FR車というのは、ノスタルジックな存在になりつつあると思うのだ。
閑話休題。R34最大の美点は「テールスライドを怖がっていない」という点であろう。トヨタ系高性能FR車の場合、基本的にテールが流さないようセッティングされる傾向。アクセルを踏んでいくとリアがスライドするより先にアンダーステアとなるワケ。さらにパワー掛けて限界を超えると、それまでガマンにガマンを重ねてきた後輪は、突如滑り始め性格のワルいヒトに変身してしまう。
テストコースやサーキットみたいな道幅のあるコースなら十分にコントロール出来るも、一般道を模したテストコースだとお手上げ。多少ウデに自信を持っている国沢光宏だってすっごく怖いのだ。トヨタだって解っているらしく、トラクションコントールやVSCなど付け、限界を超えないようにしてやっている。これを俗にマッチポンプなどと言う。マッチで火を付ける一方で、水を掛けて消そうという行動をするオロカな行動のことだな。
R34にもトラクションコントロールは付く。しかしカットしたって全く平気だ(さすがに雨の日は厳しいが……)。いや、カットすることを当然としてセッティングされているとさえ思う。ほとんど公道と変わらないような路面環境を持つテストコースでも、自由自在にテールのコントロールが可能。WRCの前走(競技車の前にゼッケン0番を付けたクルマが走る)を許されたなら、全部のコーナーで真横にしてやる!
エンジン特性までコーナーを曲がるためのセッティングかもしれない。ドカンとパワーの出るエンジンだと、やっぱしテールの流れ出しが急。R33みたいに高回転域でトルク不足すると、これまた長いドリフトは難しくなる。R34のターボなら、中回転域から高回転域まで適度のトルクを維持してくれるのだった。ま、こういったセッティングが出来るのはテストドライバーの感性か? いずれにして公道風のテストコースを走ってイチバン楽しいFR車は、R34であろう。
機械工学的にR34をヒョウカするなら「素晴らしく良い」となろう。FR車としちゃ世界トップのハンドリングを持つのだから。しかし1998年のジドウシャとして考えると「世の中の流れとちょっとズレてるかな?」になる。なぜか? そいつぁ景気や環境問題といった世の中の流れから浮いちゃったからに他ならない。10年前ならハンドリングを追求した高性能スカイラインでも、拍手を持って迎えらたハズだ。
元来スカイラインの持ち味は「革新」だったと理解している。どのモデルも当時の日本車からすればトンデモナク新しかった。箱スカに採用された4輪独立懸架が、レーシングカーや一部の輸入車などに使われていただけだし、ツインカム4バブルエンジンなど今のハイブリッドに匹敵するインパクトを持つ。ケンメリが醸し出したのは「夢のように豊かな生活」だ。カタログを見ると、今より優雅な雰囲気の中にクルマがあった。
といった観点からR34を見るとどうか? 少なくとも新しさは無い。残念ながら新しい生活や、21世紀も感じさせてくれないのだ。ここがR34の評価を決める大きな分岐点になるような気がしてならない。つまりスカイラインのイメージを走りだけであると考えるなら、究極のハンドリングのR34大いにイケるでしょう。ドリフトのCFもけっこう。
ただ純粋に走りだけを重視するなら、もっと上がある。ワタシならWRCの活躍で世界的な人気の高まりを見せる、インプレッサWRXやランエボYを選ぶ。実際、ワインディングロードを走っても、R34よりはるかに楽しい。WRCラリーカーレプリカの走りを『格闘技』とするなら、R34はストリートファイト(日本語だとケンカ)みたいなもの。だってモータースポーツ生まれじゃないのだから。スカイラインには違う価値観を期待したいのだ。
具体的に言うと200万円少々で買え、オシャレで環境にやさしく、それでいて面白いクルマということになろう。奇しくも910Tと呼ばれるトヨタの新型FR車は、こういったクルマになるらしいが……。今の経済状況を考えると、総支払額330万円を軽く突破するようなR34のターボなど買えない。スカイラインはファンや作り手と一緒に年を取ってしまい、アタマが硬くなったのかもしれぬ。ワクワクするスカイラインが見たいです。