発売が半年以上先の試作車と思えないほどキチンと走るティーノ・ハイブリッドのハンドルを握りつつ「日本もタイしたもんだなぁ!」と思った。今やハイブリッドの技術は、21世紀のジドウシャにとって最も大切なモノになろうとしてる。考えて欲しい。使われるパーツはモーター、バッテリー、複雑な制御を行うコンピューター等々。どれをとっても次世代のパワーユニットと言われる燃料電池車に欠かせない技術だ。
こうなってくると、ハイブリッド技術=21世紀への生き残りに向けての予約席みたいなモンかも。その数少ない”席”に、あまり元気でないとウワサされる日産がキッチリと予約を入れてきた。しかもハイブリッド技術そのものは、非常に高いレベルにある。具体的な説明は*以下で行うが(なぜTVが映るのか、と同じで簡単にゃ理解できないと思うけど……)、まずは概要を。
さてさて。今回ティーノのハイブリッドに乗って驚いたのは、新世代のクルマでもメーカーの個性がハッキリ出ることだった。すなわちトヨタのクルマ=ドライビングプレジャーが薄い。日産車=乗ってて楽しい、という点。ハンドル握った瞬間から、いっちょ攻めてみようか、という気になってしまう。2リッターエンジン踏査するティーノより速いし。
ハイブリッドシステムそのものは、先行してるプリウスとほぼ同じ。具体的に書けば、ティーノもプリウスも、信号待ちなどで停止してる時はエンジンが止まっている。アクセル開けるとモーターのチカラで発進し、すぐプルンとエンジン始動。そのままエンジンのチカラ+モーターのチカラで加速していく。巡航速度に達したら、ほぼエンジンのみのパワーで走り、アクセル戻せばエンジン停止。ブレーキングで回生制動掛ける、といった具合。
プリウスの楽しは、今まで味わえなかったモーター+エンジンの絶妙なハーモニーにある。クルマとして評価すると、高い点数を稼ぐのは静粛性と乗り心地くらいだ。このワタシでさえ、プリウスに乗ってテール流したいと思ったことないから凄い!そういや、まだ一度もプリウスでカウンター当てたこと無かった。もしかしたら凄いアンダーかもしれないけど、近いウチやってみよう。
ティーノは違った。試乗時間の関係で十分なテストコースの確保が出来ず(コーナリング限界高く、今回は助走距離不足で攻めきれず)、見事なカウンターこそ当てられなかったものの、思わずその気にさせられちゃう。プリウスを厚手のズボン履いたカタブツの異性だとすれば、ティーノちゃんは「触れれば落ちちゃうワよ」的な魅力を持つ。曲がって楽しいのだ。ホンダの宣伝でないけど、もはや走りの遺伝子/DNAのようなものかもしれない。
試乗したティーノは300万円前後という価格になると予想されているため、売れ行きからするとプリウスに勝てないと思う。芸能用語じゃ「キャラがかぶさってる」という。でもハイブリッドカーが完全に量産化されると予想される5年後になれば、やっぱり「乗って楽しい」ということがクルマ選びのポイントになること確実。その時、楽しいクルマを作れる日産の持ち味が生きてくるに違いない。これだったらGT−Rのハイブリッドだって作れるぞ。
*ということでクルマ通のためのティーノ講座など。正直なハナシ、システムの説明を聞くまでは日産式ハイブリッドをナメていたのだけど、ココの技術はそんな浅くなかった。一例がエンジンの制御方法。ハイブリッド車の最重要パートは、エネルギー源たるエンジンの熱効率。プリウスの場合、エンジン効率を高めるため、アトキンソンサイクルという特殊なタイプが採用されている。
ティーノのエンジンは直噴ですらない普通のレシプロ。しかし制御が凄い! 通常使用しているアクセルペダルの開度だと、スロットルは全開になっているのだ。つまりアトキンソンサイクルや直噴エンジンと同じく、ディーゼル並の熱効率が実現できると言うこと。スロットル全開でネンピいいの? と思うヒトも多いだろう。いいのだ。ディーゼルエンジンなんかスロットルそのものが無い。いつも全開状態です。
ティーノで90q巡航していると、アクセルペダルは2pくらい踏んだ状態。信じられないが、この時に回転数1400回転程度でスロットル全開になっている。普通のクルマでも同じコトやればネンピ良くなるが、そんなギア比高くしたらアクセル踏んでも加速しない。ハイブリッドシステムなら、アクセル踏んだ分だけ即座にモーターでアシスト。その後、やや遅れCVTでギアを落とし加速態勢に入る。
読んでも全くワカランでしょ?こいつぁティーノに使われてる技術の一部。専門家でも理解しがたいと思う。大体スロットル全開なのにネンピいい、というあたりのロジックは、最低でも自動車工学カジッたヒトでないと納得出来ないワな。コレ使えば、直噴エンジンいらないのだ。ハイブリッドシステムの制御というのは、今までの常識外にある。やっぱハイブリッドは面白過ぎるぞ!
イチバン気になるのは、ティーノとプリウス、どこが違うのか?」という点だと思う。このギモンに対し、ハイブリッド親方である国沢光宏は明解に答えたい。そいつぁ「ヒラメとカレイの差である!」と。全然ワカランて? つまり、だ。ヒラメとカレイは興味ないヒトが見ると、片側に目寄った同じようなスタイルのサカナであるけど、興味あるヒトにとっちゃけっこう違う、ということだ。
サシミで食すならヒラメであろう。プリプリした縁側がウマ過ぎる! ミの部分も奥行きある味わいを持つ。空揚げだったらカレイっきゃない。手頃なサイズのカレイをカリカリに揚げ、ポン酢モミジおろしでかぶり付くと、これまた絶妙な味わい。プリウスとティーノも正しくそう。試乗すると、詳しいヒトでない限りおそらくプリウスのハイブリッドシステムとの違いは解らないと思う。
システム上の違いから言えば、バッテリーに超最先端のリチウムイオン使うのがティーノで、プリウスは最先端のニッケル水素。も一つは変速機にCTV使うのがティーノ、といったあたりだろうか。おそらく他のヒトが書いたティーノのレポート読むと、そのあたりを説明していると思う。コレをヒラメとカレイにあてはめると、上から見て左にアタマ向いてるのがカレイ。右向いてるのヒラメ、みたいなモンだ。
これ、確かに違うブブンなのだが、ジツは”違いの始まり”に過ぎない。プリウスのシステムだと、カラーページで説明した「スロットル全開制御でネンピを稼ぐ」という方法を使えないのである。CVTのような変速機を持たないため、自由度が少ないのだ。したがってエンジンは直噴かアトキンソンサイクルを使わねばならず、簡単にバリエーション増やせない。ティーノ式だと、いろんなエンジンをベースにハイブリッド作れるワケ。
また、CVT使うと、モーターも小さくて済む。プリウスのモーター41馬力に対し、ティーノ27馬力。この数字だけ見ればティーノ非力に感じるだろう。しかしティーノはCVT使ってトルクを増強させているから、スタート時のチカラ強さじゃプリウスより元気。さらに極低速のノロノロ走行になると、エンジンと駆動系を完全に切り離して使える。完全な電気自動車にもなるということ。
いよいよ解らなくなってきたって? 簡単に言えば、より効率的なエンジンとモーターの使い方が出来る、ということだ。乱暴に表現すれば、大量生産すると大幅にコストが下がるプリウス式vs少し複雑だけれど性能を追求出来るティーノ式、といった具合。ドッチが勝っているかは、今のところ不明。可能性からすれば、両方とも面白い。やっぱしヒラメとカレイの違い、であろう。
最後にプリウス式とティーノ式のドチラが勝っているか判定をしてみたい。と言ってもティーノは試作車なので本当の実力じゃないと思うけど……。「クルマそのもの性能はどうか」となれば、こらもう圧倒的にティーノである。プリウスって、クルマそのものの魅力度が薄いのだ。も少し硬い足回りにしたなら、直進性なんか改善出来たろう。このあたり、最近のトヨタ車に見られる現象で、テストドライバーの「クルマ好き度不足」を強く感じる。
ハイブリッドシステムの優劣で言えば、やっぱりトヨタ式がシンプルで低コスト。ハイブリッド専用のエンジンを開発し、大量生産する余裕あるなら、普通のエンジン車よりホンの少し上乗せするだけで作れるのだ。ティーノ式だと、大量生産しても一定のコストから下げられない。ただ10万円高くでも面白いクルマを選ぶ、というヒトが出てくれば、このあたりの優位性もすっ飛ぶ。最終的には楽しいクルマを作れるかどうかの勝負となるでしょうな。