燃料電池の実用化を10年遅らせ、大気汚染激しい街中では「お願いだからアイドリングストップしないで下さい」と言われるようなトボけたエンジンが、ついに実用化されてしまった。あまり報道されてないけど、クルマの歴史を変えてしまうような新技術、と表現しても良かろう。こんな凄い技術をオチャラケ写真で紹介しなくちゃならんとは悲しいけど、これまたワタシのキャラか? ぜひ最後まで原稿、読んでね!



 最初にアイドリングストップのネタから。今回試乗した『パーシャルZEV』なるエンジンから出る排気ガス、普通の大気と同じクリーン度だと思って良い。酸素が無いので排気ガスだけ吸うと酸欠になってしまうけど、いわゆる汚染物質は限りなくゼロと言える。例えばHCと呼ばれる物質の大気濃度は3ppmくらい。パーシャルZEVから出る排気ガス中のHC濃度も3ppm前後なのだ。ホントかね? と疑ったら「ウソなんかつきません」という。
 じゃ吸ったろかぃ! てんで冷えた状態にあるクルマのマフラーに大型ビニール袋を被せ、エンジン始動。その後、10秒間隔でビニール袋をチェンジしする。始動直後のビニール袋にハナを突っ込んで(シンナー遊びやってるように見える? やったことないけど)ニオイを激しく嗅ぐ。するとどうだ! 最初の袋でホンの少し臭うかな、といったレベル。始動後10〜20秒に採取した排気ガスになると、もはや全然臭わない。

 聞けば「始動して10秒くらいは触媒が活性化しないので、完全にHC除くのは難しいんです」そうな。でも10秒でカンペキにクリーンになるんだから驚く。しかも、だ! 交差点などの汚れた大気を吸入したとしても、マフラーから出てくるのは無害無臭のクリーンな排気ガス。つまり走れば走るほど空気がきれいになってしまう。大気汚染激しい地域だと、アイドリングさせたままの方が環境にやさしワケ。
 お次に「なぜ燃料電池に引導を渡すことになるのか」という点を説明したい。キーポイントはカリフォルニア州の『ZEV法案』だ。深刻な大気汚染で悩まされているカリフォルニアは「販売するクルマのウチ、10%を2003年までに排気ガス全く出さないタイプにしないとイケません」という法律作った。排気ガス出さないエンジンなんか無いので、電気自動車か純水素を燃料とするパワープラントで対応しなければならない、ということである。

 参考までに書いておくと、燃料電池は純粋な水素(純水素と呼ばれる)を燃料として使わない限り改質時に二酸化炭素出すし、エネルギー効率もディーゼルと同等の40%程度にしかならない。じゃなんで2003年までに燃料電池車を市販するぞ、などベンツが大騒ぎしてるか?ここキーポイント。試験に出ますよ。98年に法案の見直しがあった(2年に一度ずつ改訂することも決まっている)。ハナシは突如面白くなるのだ。
 改訂された内容を簡単に説明すると「電気自動車のエネルギーは火力発電所などで作る。したがって大気並みの排気ガスしか出さないのであればZEVのウチ、6割まで『パーシャルZEV』として認めましょう」になった。つまり純水素でなく、メタノールなど使う燃料電池もパーシャルZEVとして認めましょうということ。電気自動車は難しいけど、メタノールなど使う燃料電池なら実現可能。かくして燃料電池の開発合戦に突入するのだった。

 その努力をクリックし、ゴミ箱に持っていったのがガソリンエンジンのパーシャルZEVだったりして。冷静になって考えてみれば、燃料電池や電気自動車より大気浄化の効果大。だって燃料電池や電気自動車は大気を汚さないけど、浄化もしない。パーシャルZEVだと汚さないし、汚れた空気をクリーンにしてくれる。ドッチがいいと思いますか? そりゃパーシャルZEVでしょう! 
 おそらく次回の見直しで、一段とパーシャルZEVの割合は増えるだろう。もしかするとパーシャルZEVだけで良い、ということになるかもしれぬ。ワタシが環境の改善を担当する役人なら絶対そうする。するとメタノールなど使う燃料電池はどうなる? 二酸化炭素の排出量はエンジンとイーブン。よってガソリンがリッター500円くらいまで高騰するか、純水素を燃料として運べる技術を確立するまで、燃料電池の実用化は進まないということだ。

 ちなみに日産の他、ホンダがガソリンエンジンのパーシャルZEVにリーチを掛け、トヨタはイーシャンテン(あと1〜2年、という意味)。GMはホンダからパーシャルZEVの供給を受けるらしい。世の中の流れも燃料電池からイッキにパーシャルZEVとなってきた。こうなるとフォードとダイムラーメルセデスに残された道は二つ。
 自社でパーシャルZEV開発するか、GMのように年間10万基規模でパーシャルZEVを買うか、だ。ただパーシャルZEVの特許は日産とホンダ、トヨタで押さえられてしまっている、という情報もある。メルセデスは意地で開発するかもしれないけど、フォードって他社からエンジン買うんだろうなぁ。その場合、日産が最有力候補。技術は身を助ける、か?

参考資料 日産がデトロイトショーで『ZEV』というカテゴリーのエンジンを発表した。ゼロ・エミッション・ヴィークルの略で、直訳すると「排気ガスを出さないクルマ」ということになる。驚いたことにカルフォルニア州では「2003年に販売台数の10%をZEVとしなければならない」という法律を定め、まだ撤回されていない。このままだと大手メーカーは、3年以内にこの法規を満たすクルマを販売しなければならないため、メーカーにとって大きなテーマとなっている。



 厳格に『ZEV』を守るなら、電気自動車や水素を燃料とするクルマを示でないとならない。しかし最近になって解釈が変わってきた。「電気を作るため発電所で排気ガスを出す。それと同じ程度にクリーンな排気ガスならZEVとしてもいいんじゃないか」と。確かに一理ある。そんなことから、10%のウチ、ピュアなZEV(電気自動車や燃料電池車、電池走行160q以上のハイブリッド)は4%でよい、となったのだ。今回日産が発表された技術は、6%を占める「排気ガスを出すZEV」(パーシャルZEVと呼ばれる)。

 排気ガスを出すとはいえ、そのレベルたるや極めて少ない。日産のデータによれば「大気よりクリーン」なのだ。考えてみれば絶対に実現不可能、と言われていた『ULEV』(ホンダが世界のトップを切って発売。レクサスLS430もこのカテゴリー)さえ、ロスに代表される都市部の大気より排気ガスはクリーン。走れば走るだけ大気を浄化してくれる。その上を行くのが『SULEV』で、このレベルになるとニオイさえしないほど。

 ZEVはそれより一段とクリーンな排気ガスしか出さない。当然ながら大気レベルを下回る。さらにラジエター部分には汚染された空気の指針になるオゾン(光化学スモッグの原因になる物質)を分解する触媒まで使われているのだ。文字通り夢のようなエンジンだと思って良かろう。システムについての紹介は本業の原稿が終わったらアップロードしたいと思う。この技術はライバルメーカーにとって驚異的。GMがホンダからエンジンを買うのも、本当はパーシャルZEVが欲しいためだと言われる。

 最も強烈な反応を示しているのはフォード。あれだけいろんな会社を買いまくったのに、パーシャルZEVを開発できる部門がない。日産はフォードとの付き合いもあるから、もしかするとパーシャルZEVエンジンをフォード向けに販売する可能性もあるだろう。ここでフト気付いた。かつて「絶対出来ない」と言われていたマスキー法を真っ先にクリアしたのは、ホンダ。主流となった電子制御システムを開発したのが日産。この2車、排気ガス制御技術についちゃ気合い入ってるのだ。