日産 フーガ

日産自動車

フーガ

平成16年10月14日

《フーガ発表速報》

●新制日産のフラッグシップセダンは“躍動するラグジュアリー”

会場は六本木ヒルズアリーナ。たまたま現場に居合わせた人からの注目も高かったです。

 日産の高級スポーティセダン『フーガ』が発表になった。“SHIFT_performance”(高級車のパフォーマンスをシフトする)という日産流のキャッチコピーが与えられたこのクルマは、長期に渡り日産のLクラスセダンを担ってきたセドリック・グロリアの後継車に位置付けられており、ゴーン社長も発表会で「日産の持つ技術がすべて詰まったクルマであるとともに、高級車に求める期待値を大きく上回っている」と、その完成度の高さを強調した。

○外観デザインのテーマは「優美さ」と「力強さ」の調和」

350GTスポーツパッケージ。19インチが違和感ない筋肉質なスタイリング。

 フーガにはスポーティさを強調したGTシリーズと、GTよりはやや落ち着いた雰囲気を持つXVシリーズがラインアップされている。GT系がグロリア、XV系がセドリックという見方もできるかもしれないが、日産の方によれば「セド・グロとはまったく違うクルマです」。では、クラウンで言うところのアスリートとロイヤルか? と伺うと、「アスリートとロイヤルはクルマの性格が大分違いますが、フーガはGTもXVも走行性能(サスペンションのセッティングも)は同じです。あえて言うならXVシリーズには19インチタイヤが設定されないことくらいですかね」。フーガには一貫した走りの情熱が宿っているのだ。

コチラは250GT(17インチタイヤ)。ボディカラーによってかなりイメージが変わる。

 エクステリアの特徴は、トランクに向けてなだらかに弧を描く伸びやかなルーフラインと、ウエストより下の部分のラインを強調させたことによるどっしりとした安定感にある。特に19インチタイヤを装着する350GTスポーツパッケージ(他はすべて17インチ)は、1510mmの全高(4WDの全高は1525mm)を意識させない塊感のあるプロポーションを実現しており、社外品を履いたようなツライチ具合に収まる(何と全車フェンダーの“ミミ”がしっかり折り曲げてあるのだ!)超大径タイヤがむしろ自然に見えてしまう。ただ少し残念なのは、GT・XV共リヤコンビランプの構成がスカイラインと酷似しているところ(日産の方も認めていました)。スポーティさの演出には貢献していると思うが、できることならリアビューからも“フーガ”を脳裏に焼き付けさせるくらいのオリジナル性を出してもいいと思う。

○ドライバーズセダンとしてのインテリア

操作性の良い機能的なコックピット。アナログ式時計も雰囲気アップに一役買ってます。

 運転席に座ってみると、フーガはまさしくドライビングを楽しむクルマだということが分かる。ゆったりとしながらも、サイドサポート性の高いシート形状を採用し、ステアリングを握った状態で視認性の良い位置にメーター類を配置。ナビ画面も含め前後方向に奥行きのあるレイアウトは機能性の高さを思わせる。そしてなにより、ドライバーズカーとしてのワクワク感を高める演出が上手い。「運転が好きな人の理性に訴えるクルマだ」とゴーン社長も語っていた通り、眺めているだけで積極的に走らせたくなる気持ちになってくる。
 一方、リヤシートの居住性も、セド・グロより前後長が約100mm拡大され、輸入車も含めた同クラスのセダンモデルにおいてトップレベルの数値を達成。傾斜したルーフラインがヘッドクリアランスに影響を与えるかなとも思ったけれど、意外なほど圧迫感を感じない。後で具体的な数値を確認すると、なんとセルシオより広いのだ。

○熟成の域に達したFMプラットフォーム

ウエストラインより下を強調することで、安定感のあるフォルムを実現。

 フーガの目指す走りの理想は「運転が好きな人が毎日乗っても常に楽しくドライビングできる」ことだという。その根本部分を支えるシャーシには、スカイラインやフェアレディZの流れを汲むFMプラットフォームが採用されている。デビュー当初こそ走りが楽しくないと評価されがちだったFMプラットフォームも、幾多の改良により、現行ステージアなどはスポーツカー顔負けのハンドリングを実現するほどまでに進化した。そして遂に、フーガではフロントサスペンションの形式変更にまで着手。これまでのマルチリンクから、よりリニアな走行性が出せるとの判断により、新開発のダブルウイッシュボーン式(リヤはマルチリンクを継続)が採用されている。
 さらに、スペンション関係でのトピックスとなるのが、世界初となる『新構造デュアルフローパスショックアブソーバー』。これは、ピストンスピードに応じて減衰力を可変することができるダンパーで、2つのオリフィス(オイルの通るバルブ)を持ったピストンが走行状況に合わせて開いたり閉じたりすることにより、低速から高速、コーナーリングGの大小まで、オールマイティな乗り心地を実現しているとのこと。
 減衰力特性を表したグラフを見てみると、本来ピストンスピードに比例して直線的に上昇していく減衰力が、初期では低く抑えられ、状況によって段階を経るように高まったり、通常とは逆に高速域でマイルド傾向になったりと、今までにない特性を示す。開発は日産とトキコ(日立製作所及び(株)日立ユニシアオートモティブと合併)による共同で行われ、これまでに実績を積んできたリップルコントロールとリバウンドスプリングも組み込まれている。19インチタイヤには専用セッティングで対応しているとのことなので、カナリ期待できる仕上がりだと思っていいだろう。もちろん、ボディ全体には245/40R19サイズのポテンザありきの補強が各所に施されている。

 このほかシャーシ面での注目ポイントは、あの“ハイキャス”の復活だ。フーガに搭載するにあたって『リヤアクティブステア(350GTスポーツパッケージに19インチタイヤとセット採用)』とネーミングが変わってしまったが、モーターで後輪を操舵させるシステムはハイキャスで培った技術を発展させたもの。開発者をして「(仕組みこそ同じですが)ハイキャスとは比べ物にならないほど進化している」という新型は、ワインディンロードなどでの機敏なハンドリングと高速域で操舵した際の安定性を高める効果が大きく「総合的に見てアクティブセーフティ面で大きなアドバンテージになっている」とのこと。参考までに、以前はシルビアクラスでも採用していたのに何故しばらくの間お蔵入りしていたのか? と伺ってみたところ「コスト的な問題が大きかった」そうだ。

○実はV8モデルがスタンバイ!

エンジンは・・・見えません。V8搭載が非常に楽しみです。

 搭載エンジンは3.5リッター(280ps、37.0kgm)と2.5リッター(210ps、27.0kgm)の2種類。スカイラインなどと同じVQ型エンジンは中枢にこそ改良は加えられていないが、加速時の音にこだわったチューニングを受けており、ダイナミックな走りをさらに盛り上げる効果を持たせたという。そして、この音を楽しむためのシステムとして、ATをマニュアルモードでシフトダウンさせた際に的確なブリッピング(アクセルをあおってギアを同調させる)を行う、シンクロレブコントロールを新開発して装備(フェアレディZに先行採用)。従来比最大40パーセントも変速時間を短縮し、ヒール・アンド・トゥのような感覚も味わえる仕組みになっている。
 また、エンジン関係のビッグニュースが「来年にはV8モデルを出す」という発表会の冒頭でのゴーン社長の発言。発表時期などまでは聞くことができなかったが、現段階での情報によるとベースエンジンは北米モデル(FX45など)に搭載している340馬力の4.5リッターV8でほぼ間違いなし。ただ、日本の排ガス規制に合わせた改良が施される関係で、若干パワーダウンし330馬力台になると思う。「V8を搭載することを前提にシャーシを開発した」とのことなので、パワーアップが全体のバランスを崩すということもないだろう。そして、あくまで予想の範囲ではあるけれど、フーガにV8モデルが設定され、より高級志向を強調した後、このプラットフォームを流用した次期型スカイライン(V36か?)がデビューする可能性は高い。

○戦略的な価格設定

GTよりやや落ち着いた感じの350XV。ただし、性能面の違いはなし。

 フーガが発表になる前から注目されていた装備の一つに、インテリジェントクルーズコントロールがある。これは、従来の車間自動制御システムに加え、約40km/h以下(マジェスタは30km/h以下)の低速走行時でも自車線上の先行車に対し車速に応じた車間距離を一定に保つという“低速追従機能”を持つ。と、これだけなら世界初採用となったマジェスタのレーダークルーズコントロールと同様だけれど、フーガのシステムはクルコンと低速追従モードをクルマが自動で切り替えてくれるのだ。つまり、「快適な高速巡航から急にノロノロ状態」などという条件変化にもドライバーが設定を変える必要がない。利便性ではクルコンと低速追従モードをヒトが切り替えなくてはならないマジェスタを一歩引き離していると言っていいだろう。このインテリジェントクルーズコントロールは3.5リッター全車にオプション設定。17万8500円という価格設定は単体でこそやや高く感じるかもしれないが、前席緊急ブレーキ感応式プリクラッシュシートベルトとインテリジェントブレーキアシストがセットとなることを考えると妥当なところではないだろうか。

国産セダントップクラスの室内スペース。本革シートはオプション。

 さて、国内の高級車市場に少なからず影響を及ぼすであろうフーガの価格について見てみると、350GTスポーツパッケージが441万円となっている。これは500ccの排気量と19インチタイヤを含めても直接のライバルと目されるクラウンアスリートの3リッターモデル(標準車、Gパッケージは514.5万円)と全くの同額。19インチはランニングコストが高いと考えるなら、17インチの350GTなら21万円安の420万円。さらに、2.5リッターエンジンを搭載する250GTはナビを標準装備して、ナビの付かないアスリートの2.5リッターと同じ367.5万円。さらにさらに、350XVがクラウンの最上級グレードとなるロイヤルサルーンGと同様の装備で価格はロイヤルサルーンと同じ420万円。そして、豪華仕様の350XV VIPとロイヤルサルーンGが共に493.5万円ときた。このあたり、500ccの排気量の差と、17インチ(クラウンは16インチ)タイヤを考えればフーガ有利かもしれない。フーガの価格設定がかなり戦略的だということがお分かりいただけるだろう。
 まだ乗っていないので走りの違いは分からないけれど、加速性能的にはトルクフルな280馬力+5速ATのフーガと軽快感の高い256馬力+6速ATのクラウンに決定的なほどの差はないと考えられる。残るシャーシ性能面において、日産車らしいダイナミックなハンドリングを実現できていれば(FMプラットフォームの進化の度合いを考えると相当期待できる)、フーガは予想以上に幅広い支持を集められる可能性を持っていると思う。
                                 Report:山崎 裕正