日産 ラフェスタ

日産自動車

ラフェスタ

平成16年12月11日

<ラフェスタ試乗レポート>

 リバティの後継モデルに当たるラフェスタ。日産のミニバンラインナップの中では、キューブキュービックとセレナの間に位置し、休日のファミリーユースはもちろん、日々の通勤や買い物にも優れた使い勝手を発揮する設計となっている。そして最大のセールスポイントとなるのが、1500mm×800mmという国産車最大の開口部を持つ「パノラミックルーフ」。車内に圧倒的な明るさとクラスを超えた開放感をもたらすこの装備により、競争激しいカテゴリーにおけるライバル他車との差別化を図ってきた。
 走行性能に直結する面での話題も多く、シャーシはメガーヌと基本骨格を同じとするCプラットフォームを採用し、エンジンとミッションは新開発のものを搭載。今後の5ナンバー3列シートクラス市場を占う上でも要注目の1台です。

アウトドア指向のPLAYFUL(プレイフル)。写真はオプションの16インチタイヤ装着車。

 今回「街中での運転しやすさを体感していただきたい」との日産側の意向により、試乗会場は市街地がメイン。残念ながら高速域でのステアリングインフォメーション等は確認できなかったので、ごく日常的な走りの印象を中心にレポートしたいと思います。

○ファミリーカーとしての素性は高い
山崎(以下:山) 激戦区に満を持して登場してきたという感じのラフェスタですけど、試乗してみての第一印象はどうですか?
国沢(以下:国) 状況としては「後出し」だから結構期待してた。でも、なんとなく“浅いなあ”って感じ。十分勝負できる価格だとは思うけど。
山 このクラスの両側スライドドア車として直接バッティングするアイシスの1.8リッター(L、4AT)が189万円で、ラフェスタの標準車となる20Sは185.85万円。2リッターモデルのみのラフェスタは、単純にプラス200ccのアドバンテージを持っていることになります。加えてミッションはCVT。魅力的なパノラミックルーフも標準装備してますから、お買い得感高いと思いますよ。
国 アイシスにはパノラミックルーフみたいなのないし、「レス仕様」を選べばラフェスタはさらに7万3500円安い。排気量を揃えたとしてアイシスの2リッター(L、CVT)は199.5万円でしょ。そうなるとラフェスタは20万円も安いんだから魅力的。
山 肝心なのは、その価格差と内容とのバランスだと思いますが、いろいろと確認してみてどうでしょう?

道路状況良ければ静かで乗り心地抜群。

国 正直比べちゃアカンですな。外観デザイン、インテリア、サードシート等々、どれをとってもアイシスの方がレベル高い。誰が見たってラフェスタのほうが安いクルマだと感じると思う。ただし、一般の人がファミリーカーとして選択する場合なら十分合格。総合的には80点以上を与えられる。それに、何と言ってもこのパノラミックルーフはスゴイよ! 子供ウケ間違いないし、大人だって感動モノ。コレを気に入っただけで買っちゃっても後悔しないんじゃないかな。
山 きっと開発者の方々もそれを理解してくれれば本望だと思いますよ。1番のウリですから。となると、マイナス点になっているところが冒頭の“浅い”と感じる理由になるってことですね。個人的に気になったのは、存在としての“深み”や、運転したときの“奥行き”みたいなところにあるような気がしますが……。

○ドライバビリティにやや難アリか
国 そう。ハッキリ言うと、セカンドシート以降に“お客さん”の立場で乗っていられるならとっても楽しいクルマだってこと。そう思わせてしまう要因としてまず挙げられるポイントは、アクセルとブレーキが敏感過ぎるところ。スムーズに走らせようとすると、意外に神経質だと思わなかった?

コンパクト設計が自慢の新型ユニット。凝った形状のインテークを採用してます。

山 確かにそう感じました。1人で乗るならともかく、同乗者がいたらいつも以上に緊張すると思います。ボクは性格的に周りに気を使うタイプですから。特にクルマ好きな人を乗せるような場合だったりすると妙に疲れるかもしれません。
国 ワタシのようなクルマにうるさい人間を乗せるイヤだってことね。まあ、その通りなんだよ。発進しようとそろっとアクセル踏むと、スロットルがガバッーっと大きめに開いて勢い良く出るし、ブレーキも初期からローターに噛みつくようにググッと効く。ブレーキに関しては“良く効くぞ”っていう安心感に繋がるかもしれないけれど、アクセル特性についちゃ要改良。ペダルを踏んだ感覚にきちんとリンクしてない。
山 みんながみんな同じように運転できるワケじゃないですからね。足先が器用な人もいれば、前を見るので精一杯の人もいます。クルマのキャラクターからしても、お母さんが近所に買い物に行くようなことも多いでしょうし、そこには他のお客さんのクルマでごった返す駐車場がある。ときには底の硬い靴やヒールの高い靴で運転しなければならないなど、いろいろな意味でもう少しマイルドな特性がいいと思います。普段も無意識に運転すると、気付かぬうちに乗員を不快な気分にしかねません。操作に必要以上の“慣れ”を要するのではファミリーカーとして使い勝手良くありません。

屋根が重いこともありロールは大きい。操作力小さめの味付けがされる電動パワステ。

国 で、そんなスロットル特性のわりに、巡航域からの加速の伸びは「う〜ん……」。低速トルクのあるエンジン(137馬力、20.4kgm、1410kg)と効率の良いCVTを組み合わせているハズなのに、絶対的な加速力は4速AT積むアイシスの1.8リッター(132馬力、17.3kgm、1400kg)モデルと大差ない。ラフェスタのフィーリングを一言で言ってしまうと「素人向け」なのよ。初速はドンッ! で「おッ!」と思わせるから、普通の人なら大抵その時点で「結構パワーあるね」と感じちゃう。現実的にはそれで一般路の流れに乗れるスピードまで加速するから、問題ないと言えばそれまで。でも、クルマの運転を楽しもうと思うと、あまりにも味気ない。何が何でも燃費を稼ごうとする(カタログデータ:ラフェスタ15.0km/L、2リッター直噴エンジン+CVTのアイシスは14.4km/L、1.8リッター+4ATも同数値)のか、CVTだということを差し引いてもアクセル操作に対する躍動感を感じられない。このあたりのツメが“浅い”と感じるところ。
山 そうなると一般ユーザーが実際に所有したときの燃費が気になりますね。特に最近のトヨタ車はカタログ燃費に近い数値を出すの難しくないですから。
国 そこで負けちゃうとラフェスタの新開発ユニットは厳しい。
山 もしそうなった場合、このエンジンは直噴化の可能性があると聞いてますから、最終的にはそこまでやってくると思います。
国 いずれにしても、泣く泣くファミリーカーに乗ってるクルマ好きのお父さんのためにも、この“性格”は改良の余地アリ。電子制御でやってるんだから、そんなに難しいテコ入れじゃない。

○大人を満足させる決定打が必要

定番になりつつあるサイドブラインドモニターも用意。ナビ&バックモニターとセットで装着可。

山 他に気になったところは?
国 やっぱり乗り心地。コーナーの手前にある波状舗装なんかを通過するときの振動が吸収しきれてない。
山 ラフェスタのダンパーはフロントが日立
(旧トキコ)でリヤがカヤバだと伺いました。ティーダなどに採用されたリップルコントロールなどの無い一般的な構造です。
国 リップルコントロールは超微少入力に対する装備だけど、ラフェスタはそういう舗装状態の良い道ならスバラシイ乗り心地を出せてる。でも、ちょっと路面が荒れるとダメ。相変わらず初期入力へのダンピングが立ち上がってない。こうなるともうダンパー本来の性能がイマイチでゴツゴツしてる以外に考えられない。

プレーンなイメージの20S。ルーフレールはPLAYFULのみの設定。

山 屋根に約20kgもあるガラスを載せてるのもサスペンションセッティングを難しくしている要因だと思います。
国 それもある。でもそれを解決するにもダンパーありき。せっかくフーガなどで技術力あることを証明した日立をフロントに使ってるんだから、リアも日立に統一してセッティングしてみたらいいと思う。
山 魅力的なパノラミックルーフを装備しているだけに、乗り心地にもう少しこだわれば、ライバルに対して商品力がグッと増すような気がしますね。
国 優等生のアイシス(カヤバ製ダンパーを使用)も乗り心地は決して良く無い。せっかく「開放感」という他車には無い大きな“武器”を身に付けているラフェスタなんだから、後出しの利を活かしてライバルを圧倒するような乗り心地を実現して欲しかったよ。現状だと、新メニューでお客さんを集めるファミリーレストランってとこ。何を食べてもリーズナブルでおいしいけれど、大人を長く惹き付けさせるようなモノは出てこないでしょ。

3列目シートからの眺め。実際のサイズ以上に空間の余裕を感じます。

 晴れた日にラフェスタの2列目シートに座ると、まるでテラスがそのまま移動空間になってしまったかのような気持ち良さを感じることができる。試乗の際も優れた前方視界に加え、青空に浮かぶ雲や時折通り過ぎていく鳥などを眺めていると、自然と心が和みおおらかな気分になった。
 素材やその構成を追求したクルマが醸し出す品質感も良いけれど、“大開口の天窓”から空を見せるという、ある意味「直球勝負」的なワザがもたらす効果はやはり絶大。スペースや居住性はソコソコ(決して窮屈ではない)だが、不思議と懐の深さを感じられるのだ。きっと、ほとんどのミニバンにオプション設定されている一般的なサンルーフや、屋根その物がないオープンカーを経験していたとしても、実際に体感すれば誰もがその個性を認めることができるはず。
 クルマそのものを楽しもうとするとやや物足りないかもしれないが、「クルマを通して楽しい時間を過ごしたい」というのであれば、ラフェスタは良いチョイスだと思う。

Text:山崎 裕正   

平成16年12月2日

《ラフェスタ発表速報》

2001年度比100万台の増販を目指す“180プラン”は「順調に進んでいる」という。

 ラフェスタの最大の特徴は、乗る人全員が楽しく、開放的な気分を味わえること。ウェストラインを低く設定し、独特の“カド”を持たせたキャビン形状を採用することにより、どのシートに座っても窮屈さを感じさせない移動を可能としている。また、天井に1500mm×800mmという国産車最大の開口面積を誇る“パノラミックルーフ”を全車標準装備していることも大きなポイント。実際に3列目に座ってみると、なるほど周りが良く見える。しかも、本格的なミニバンではないこのサイズの3列シートモデルにありがちな、閉塞感が全くと言っていいほど無い。シート自体はアレンジの関係もあり、決して余裕があるとは言えないし、まっ平らで味気ない感じもあるが、ストリームやウイッシュの3列目と比べれば、誰もが視覚的な広がりを感じることができるだろう。ただし、大人が座るには足元スペースがやや物足りないような気がする。

ルーフレールや2トーンカラーのバンパーを装着するPLAYFUL。明るい色がよく似合う。

 このクラスで初めて両側スライドドアを取り入れ、「パパ・ママリバティ」とキャッチコピーを打つなど、徹底的にファミリーカーとしての商品性をアピールした、リバティの後継車でもあるラフェスタは、主なユーザー層を小さな子供のいる団塊ジュニア世代とし、家族全員との時間や、日々の生活をより豊かに楽しみたいという要望に応えるクルマ作りを追求したとのこと。
 全長4495mm(PLAYFULは4510mm)×全幅1695mm×全高1600mm(同1655mm)のボディサイズは、リバティ(4575×1695×1630:ルーフレール無車)よりも小さく、ウィッシュやストリームとほぼ同じ。しかも、取り回しのしやすさを追求した設計により、最小回転半径5.1m(15インチホール車)を達成。これは、ウィッシュやストリーム(標準車)の5.3mを凌ぎ、1クラス下のシエンタレベル。当然5.4mのアイシスとの差は、ラフェスタの大きなアドバンテージになるハズだ。運転席からの見晴らしも抜群だから、コンパクトカー感覚で取り回せると思う。

20Sの車内。明るい空間は清潔感と暖かい雰囲気を漂わせる。

 今や車両価格200万円前後のミニバン市場は、最も競争が激しいカテゴリーに挙げられる。そんな中、セダンと遜色のない走行性能でアピールするストリームやウィッシュのなどの新興勢力が登場しても、リバティは両側スライドドアを持つという一点で、その存在価値を保ってきた。しかし、アイシスがデビューするとそれも大きな特徴とならず、いよいよ古さが先に立つクルマになってしまった。となると、必然とラフェスタはアイシスの対抗馬なのか? ということになる。そのあたりをエンジニアの方に伺うと、「直接のライバルだとは考えていません」という。てっきり「そうお考え頂いて結構です」と返ってくるものだと思っていたので少々拍子抜けしながらも、その理由を具体的に伺ってみると、「アイシスはサイズそのものが大きいですよね」。確かにアイシスのスリーサイズは全長4610mm×全幅1695mm×全高1640mmと、同じ5ナンバーサイズとは言えラフェスタより一回り大きい(ホイールベース:ラフェスタ2700mm、アイシス2785mm)。「ラフェスタは、開放感あふれる居心地の良さを、リバティよりもダウンサイズして実現しました」。「頻繁に使わないサードシートの乗り心地を追求するよりも、ステーションワゴン感覚でキャビンからの眺めを楽しむ使い方がベストです」。つまり、開発側にしてみれば、開放感を求めてどんどん肥大化するミディアムクラスミニバンにあって、むやみにサイズを拡大することをせず、別のアプローチで広々感を追求したところを見て欲しいということ。

サードシートの居住性はウィッシュの方が上!

 ただ、開発者がいくら「アイシスはライバルではない」と言っても、市場ではアイシスのライバルだと捉えられることが分かっている以上、アイシスに絶対に負けないというポイントを挙げて頂く。すると、大きなグラスエリアによる明るい車内と、小回りの利く運転しやすいサイズだという。このほか、乗り心地や静粛性の高さ、どっしりと粘りのあるハンドリングも自信があるとのこと。リバティが両側スライドドアで(クラス内の)オンリーワンを狙ったように、ラフェスタは他を圧倒する開放感と取り回しの良さを武器に勝負をかけているのだ。

新開発のMR20DEエンジンとエクストニックCVT。SR時代に比べると80mmも短縮!

 パフォーマンス関係でのトピックスが多いのもラフェスタの特徴。まず、エンジンは新開発となる「MR20DE」を搭載している。アルミブロックを採用するこのエンジンの特徴は、2000回転で最大トルク(20.4kgm)の90%を発生するところ。最高出力137馬力とスペックを一見するとおとなしい印象だが、動力性能には「かなり自信がある」とのこと。その自信の根拠にあるのが、高効率なミッションを組み合わせているということだろう。やはり新開発となるエクストロニックCVT(ジャトコ製)は、油圧制御の最適化とロックアップ領域をこれまでのものより拡大。クラストップレベルの低燃費を支える大きな役割を担っている。動力伝達ベルトをムラーノなどの3.5リッターエンジン用と同じ幅のものにするなど、絶対的な耐久性も大きく向上させた。レスポンスの良さも自慢で、20MにはF1を思わせるパドルシフトの6速マニュアルモードを設定。このあたり、家族のことを考えて泣く泣くミニバンをチョイスしたお父さんにも、ささやかではあるが運転の楽しみを味わって欲しいという日産からのメッセージが聞こえてきそうだ。

「軽快」な変速レスポンスとのことなので、気になるお父さんは是非お試しを!

 なお、このエンジンはショートストローク化することにより1.8リッターにも対応。ティーダ(ラティオ)の1.8リッターモデルにはこのエンジンが搭載されることが決まっている。また、セレナやエクストレイルなど、2リッタークラスのエンジンは今後随時MR型へスイッチしていくとのことだ(直噴化は検討されているが、2.5リッターの予定はない)。一方、CVTも2.5リッタークラスに対応できるため、現在4速ATを採用しているプレサージュ(2.5)などに、今後CVTを搭載モデルが追加される可能性が高い。
 エンジンとミッションを新開発した背景には、ルノー・メガーヌと共通のCプラットフォームを使っているという理由もある。剛性面に優れるこの骨格をベースに、世界最高水準の安全性を持たせたるべく作り込んだため、エンジンとミッションの入るべきスペースが狭まり、それまでのQR型エンジンのユニットは使用不可になってしまったという。そして、それらの問題をクリアした新ユニットは、旧型に比べ全長で60mmもコンパクトになっている。
 ボディで気になる点が、屋根に大開口のグラスエリアを持つことによる剛性の確保。一般的にサンルーフを装備するクルマはボディ剛性が厳しいと言われますが・・・・・・? と伺うと「ラフェスタのパノラミックルーフは合わせガラスを接着してあるんです。つまり、ボディの構造体の一部なので、剛性を著しく落とす要因にはなりません」。「パノラミックルーフレス仕様(7万円安)にすると約20kg軽くなりますが、一般の方が感じ取れるほど走りに変化は無いと思います」とのことなので、リセールバリューのことも含め標準装備のパノラミックルーフをわざわざハズす理由は無いだろう。

日産が完全復活するためには、このクラスでのヒット車を持つことが絶対条件だ。

 価格を見るとベースグレードの20Sが185.85万円。パドルシフトを装備する20Mは199.5万円だが、オーディオがオプションとなることを考えると、200万円超え。参考までに、ウィッシュの1.8リッターのXは177.24万円で、2リッターのGは198.24万円。アイシスのLは1.8リッターが189万円で、2リッターは199.5万円。そして、ボクシーのXが207.9万円で、ステップワゴンのB(2リッター)は198.45万円というあたり。2リッターエンジン+CVTや特徴的なパノラミックルーフを考えると、ラフェスタは十分競争力のある価格設定だと思う。ところで、なぜラフェスタは1.8リッターモデルをラインアップしないのか? と伺ったところ、「1.8リッターの実用燃費が2リッターに及ばず、メリットが無いと判断しました」。「仮に販売したとしても価格差は10万円以下だと思います」とのこと。月間販売目標は5000台。プレーリーから始まり、リバティで確立したシェアをどこまで成長させることができるか。競争の激しいこの分野で生き残らなければ、本当の意味での“日産復活”とはならない。ラフェスタの担う役割は大きいのだ。

Report:山崎 裕正